第二十八話 天断の覚悟
第二十八話 天断の覚悟
凄まじい質量の拳と、一閃が激突した。
普通であれば、鬼塚の素手の拳などはじき飛ばせた。
だが、その拳から放たれた衝撃波は、俺が構えていた木刀を容赦なく木っ端微塵に粉砕した。
もう片方の拳が目の前にまで迫る。
「の……能力発動!『抑界』!!」
慌てて発動したせいで、出力は弱く、拳の速度を緩和した程度だった。
それでも、その場から離れることは容易だった。
「どうした?隊長。武器がないんだったら拳で戦ったらどうだ?」
「お前相手に拳でタイマン張れるわけがないだろうがっ!!それにお前、マシンガンはどうした?!」
「この力がある以上、マシンガンが俺にとって枷なんだよ。俺、今からこの拳で戦うことにするわ」
「嘘だろ……?」
ほんの一瞬。まばたきをした隙に、鬼塚はその場から消えていた。
「狂瀾――『猛進轟烈』『衝拳』!!」
目に追える速さではなかった。
マジかよ……これで、能力を発動していないのか?
身体能力が前と比べて圧倒的に跳ね上がっている。
「能力発動――『抑界』!!」
まずいまずいまずい!!
また抑界を使わされた。
このままだったら、体の負担がとんでもないことに……。
なぜか肉体の限界は訪れないが、この異常なタフさがいつまで持つかわかったもんじゃない!
「……まぁ。隊長も一筋縄じゃいかないわな」
考えろ。策がないわけじゃない。
早く、鬼塚をどうにかしないと、本当に殺されてしまいかねない。
途端、腹部に強烈な痛みが走る。
「……ガハッ!」
大量の血を吐き、はるか後方へ吹き飛ばされる。
蹴りを……入れられたか。
鷹宮なんて比じゃない。
こいつは本当にやばい。
身体が、動かな……。
その時、俺の身体は浮遊感に包まれる。
いや、鬼塚に胸ぐらを掴まれているのだ。
「……なぁ、なんで刀を抜かねぇんだよ。俺が……手加減されてるみたいで嫌なんだよ」
「そ、んなの……守るための道具で仲間を傷つけるわけには行かないだろ?」
その言葉を聞いた鬼塚は、俺の首を絞め上げる。
「だからいつまで経っても隊長は成長しないんだよ!綺麗事ばっか言いやがって……」
息が、しづらい。苦しい……。
「いいか?腹を括れ。いつかは覚悟を決めないといけないんだ。だから今、それを実感させてやる」
鬼塚は、俺を軽々と放り投げる。
俺は、まだ覚悟が決まっていなかった。
仲間や家族を守るために敵へ向けてきた真剣を、今、目の前の『仲間』に向けるのか?
それは、俺の信念に背く行為だ。
だけど、守る為に、使わないといけないのも事実だ。
何を葛藤している?
俺は、大切なものを守る為に強くならないといけない。
最弱のレッテルを貼られたままじゃいけないんだよ!!
「狂瀾――『狂嵐衝拳』!!」
見たことのない技だ。
早く、重い一撃。
これを喰らえば、再起不能のレベルの重傷を負うだろう。
ただ――
「俺と一緒で単調な技だ」
腰に刺さっている刀の鞘を持ち、柄に手を添える。
「抜刀術――『一閃』」
その瞬間、俺の刀は正確に鬼塚の拳を弾いていた。
「――いいんだな?本当に、俺が『相棒』を使っても。こいつは、特別だぞ?」
「……ハッ、やっとかよ。月城との戦いぶりじゃねえか」
鬼塚は、俺の手に握られた刀を凝視する。
不気味に青白く発光し、神気を纏っているその刀に、俺は語りかける。
「さぁ『天断』。速度だけで届かないなら、すべてを叩き潰す圧倒的な『一撃』をくれてやろう」




