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暁のエーヴァルⅠ〜その手は、狂騒を鎮めるために。〜  作者: かとくら(かず)
第二章 鷹宮編

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第二十七話 最弱

第二十七話 最弱

銃口を突きつけられた瞬間、身体が硬直してしまう。


「……勝負ありですね。隊長」


「ど……どうやって……?」


 そんな情けない声しか出なかった。

 奥義さえも、鷹宮の掌の上で踊らされていたに過ぎなかった。

 持てる全てをぶつけても届かなかったという事実は、俺のプライドを粉々に打ち砕く。


 鷹宮は銃口を降ろし、語りかける。


「身体能力や技の冴えだけが戦いではありませんよ。隊長は、私が『いつ』からあなたを狙っていたか……その予測さえできていなかった」


 何も、反論できなかった。


「そういえば、随分と能力と刀技を多用していましたが、体調は大丈夫ですか?」


 言われてみれば、前ほどの痛みは感じなかったな。


「……いや。いつもなら心臓を鷲掴みにされるような激痛があるはずなのに、それがなかったんだ。代わりに、どこか懐かしい、暖かい気配が残るような頭痛があったくらいで……」


「なるほど……。能力に耐性でもついてきたのでしょうか?」


 能力の副作用に耐性なんてつくのか?

 にしても、謎だな。


 そこで、俺は美雨がこっちを睨んでいることに気づいた。


「あーあ。今日はもう疲れちゃった。お兄ちゃん、先に部屋に戻ってるね!」


「ん?……あぁ」


 ……美雨のやつ、いつもより少し顔色が白かった気がする。


 それに、あの目は失望なんかじゃない。

 俺を睨むその瞳には、隠しきれない疲弊と、静かな怒りが混ざっていた。


「なぁ。美雨、様子へんじゃなかったか?」


「さぁ?隊長が情けなく負けて失望したんじゃないですか?」


「おい。冗談でもそんな事言うんじゃねえ」


 二人でそんな話をしていると、美雨と遊んでいた鬼塚がこちらに走ってくる。


「おいおい、今のすげーな!俺にもやらせてくれよ!」


「そうですね。では、鬼塚さんには隊長の相手をしてもらいましょうか」


「なぁ、次は何をするんだ?というか、俺ばかり訓練していていいのか?」


 鷹宮からいつもの軽薄さが消え、冷徹な『秘匿情報部』としての眼光が俺を射抜いた。


「厳しい現実を言いましょう、隊長。今のあなたは、この黒鋼隊の足を引っ張る『最弱』です。鬼塚さんは昇華の領域に達し、私は今、あなたを完封しました」


 ……確かにそのとおりだ。

 今の俺は二人より弱い。


「なので隊長には、新しい技を覚えてもらいます」


「……そんな簡単に技を作れるわけがないだろ」


「作らないといけないのです。今の隊長には、一撃で戦況をひっくり返す、純粋な破壊の技がありません。……電光石火以上のです」


 そんなこと言ったって……。


「能力開花のきっかけは、命の危機――鬼塚さん、あとはよろしく頼みますよ」


「この状況……さっきもやったよな?」


 鬼塚は、俺の正面に立ち、宣言する。


「隊長ぉ……久しぶりに俺とタイマン張ろうぜ?能力を昇華させた俺と、今の隊長だったら、どっちが上なんだろうな?」


 鬼塚は一拍を置き、その言葉を告げる。


「もちろん、この俺だ。今の隊長には負ける想像ができねぇよ」


 鬼塚がさっき放った「すげーな」という称賛は、俺の奥義ではなく、それを完封した鷹宮に向けられたものだった。

 かつて背中を守っていたはずの部下に、ここまで背中を遠ざけられていたとはな。


「俺も、まだお前に負けるつもりはない」


 その言葉を聞いた鬼塚は、口元を歪ませ、不敵に笑う。


「そうこなくっちゃなぁ!いくぜ……」


 鬼塚は姿勢を低くし、拳を握りしめる。


「狂瀾――『衝拳』ッッ!!」


 それに応ずるように、刀に手を添え、抜き去る。


「抜刀術――『一閃』!!」


 迫りくる破壊の質量を前に、俺の生存本能が激しく警鐘を鳴らす――最弱に甘んじるつもりはない。

 己の限界を打ち破るための、泥臭い死闘が幕を開けた。

読んでいただきありがとうございます!

美雨の様子がおかしかったですね。もちろん伏線でございます。

次回をお楽しみに!です!

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