第二十七話 最弱
第二十七話 最弱
銃口を突きつけられた瞬間、身体が硬直してしまう。
「……勝負ありですね。隊長」
「ど……どうやって……?」
そんな情けない声しか出なかった。
奥義さえも、鷹宮の掌の上で踊らされていたに過ぎなかった。
持てる全てをぶつけても届かなかったという事実は、俺のプライドを粉々に打ち砕く。
鷹宮は銃口を降ろし、語りかける。
「身体能力や技の冴えだけが戦いではありませんよ。隊長は、私が『いつ』からあなたを狙っていたか……その予測さえできていなかった」
何も、反論できなかった。
「そういえば、随分と能力と刀技を多用していましたが、体調は大丈夫ですか?」
言われてみれば、前ほどの痛みは感じなかったな。
「……いや。いつもなら心臓を鷲掴みにされるような激痛があるはずなのに、それがなかったんだ。代わりに、どこか懐かしい、暖かい気配が残るような頭痛があったくらいで……」
「なるほど……。能力に耐性でもついてきたのでしょうか?」
能力の副作用に耐性なんてつくのか?
にしても、謎だな。
そこで、俺は美雨がこっちを睨んでいることに気づいた。
「あーあ。今日はもう疲れちゃった。お兄ちゃん、先に部屋に戻ってるね!」
「ん?……あぁ」
……美雨のやつ、いつもより少し顔色が白かった気がする。
それに、あの目は失望なんかじゃない。
俺を睨むその瞳には、隠しきれない疲弊と、静かな怒りが混ざっていた。
「なぁ。美雨、様子へんじゃなかったか?」
「さぁ?隊長が情けなく負けて失望したんじゃないですか?」
「おい。冗談でもそんな事言うんじゃねえ」
二人でそんな話をしていると、美雨と遊んでいた鬼塚がこちらに走ってくる。
「おいおい、今のすげーな!俺にもやらせてくれよ!」
「そうですね。では、鬼塚さんには隊長の相手をしてもらいましょうか」
「なぁ、次は何をするんだ?というか、俺ばかり訓練していていいのか?」
鷹宮からいつもの軽薄さが消え、冷徹な『秘匿情報部』としての眼光が俺を射抜いた。
「厳しい現実を言いましょう、隊長。今のあなたは、この黒鋼隊の足を引っ張る『最弱』です。鬼塚さんは昇華の領域に達し、私は今、あなたを完封しました」
……確かにそのとおりだ。
今の俺は二人より弱い。
「なので隊長には、新しい技を覚えてもらいます」
「……そんな簡単に技を作れるわけがないだろ」
「作らないといけないのです。今の隊長には、一撃で戦況をひっくり返す、純粋な破壊の技がありません。……電光石火以上のです」
そんなこと言ったって……。
「能力開花のきっかけは、命の危機――鬼塚さん、あとはよろしく頼みますよ」
「この状況……さっきもやったよな?」
鬼塚は、俺の正面に立ち、宣言する。
「隊長ぉ……久しぶりに俺とタイマン張ろうぜ?能力を昇華させた俺と、今の隊長だったら、どっちが上なんだろうな?」
鬼塚は一拍を置き、その言葉を告げる。
「もちろん、この俺だ。今の隊長には負ける想像ができねぇよ」
鬼塚がさっき放った「すげーな」という称賛は、俺の奥義ではなく、それを完封した鷹宮に向けられたものだった。
かつて背中を守っていたはずの部下に、ここまで背中を遠ざけられていたとはな。
「俺も、まだお前に負けるつもりはない」
その言葉を聞いた鬼塚は、口元を歪ませ、不敵に笑う。
「そうこなくっちゃなぁ!いくぜ……」
鬼塚は姿勢を低くし、拳を握りしめる。
「狂瀾――『衝拳』ッッ!!」
それに応ずるように、刀に手を添え、抜き去る。
「抜刀術――『一閃』!!」
迫りくる破壊の質量を前に、俺の生存本能が激しく警鐘を鳴らす――最弱に甘んじるつもりはない。
己の限界を打ち破るための、泥臭い死闘が幕を開けた。
読んでいただきありがとうございます!
美雨の様子がおかしかったですね。もちろん伏線でございます。
次回をお楽しみに!です!




