第二十六話 手のひらの上
第二十六話 手のひらの上
刀を抜き去った時、一つ一つの花びらに集中する。
能力、「抑界」で俺の周りの時の流れが遅くなる。
ただ技を発動したから勝手に斬撃が飛ばされた?
いや、違う。
必刀奥義、桜花爛漫の正体は、自動追尾の斬撃などではない。
遅延した時間の中で、俺自身が狂気的な速度を持って、全ての標的に刃を叩き込んでいるに過ぎない。
――――――――
弾丸が、止まって見える。
すべての花びらをきり裂く最適ルートを構築す。
「……ここか」
人間の目ではとても追えない速度で、花びらを一枚ずつきり裂く。
予備動作なんて一切ない、無駄のない動き。
一つ一つ丁寧に切れるわけではない。
そりゃそうだ。
自分の動体視力すら追いついていない速度で動いているのだから。
手加減だって、できるはずがない。
「……やっぱ、父さんは化け物だったよ」
刀を鞘に納め、能力を解除する。
途端、無数の斬撃が花びらを散らしていく。
――ドクッ。
「ぁ……グッ!」
クソっ、桜花爛漫で思いっきり精神力を削られたか……。
鷹宮が俺が崩れたチャンスを逃すはずがなかった。
一切動じずに、再び重機関銃を構える。
どうやら、俺がこの危機を乗り越えるのは想定済みだったらしい。
俺は、もう鷹宮に弾丸を撃たせる気はない。
「刀技――『一閃』」
はるか遠くにいた鷹宮めがけて、一直線に距離を詰める。
鷹宮の目前まで一瞬でたどり着く。
それでも、鷹宮は一切動じなかった。
重機関銃を真っ二つに切り、そのまま鷹宮を追撃しようしたが、鷹宮はすでにそこにはいなかった。
「は?」
ありえない。
網膜に焼き付いた残像すら消えぬ刹那、鷹宮の存在は陽炎のように霧散していた。
鷹宮が高速で動けるような能力を持っているとも考えられない。
あいつの能力は、止水と寂影…………。
思考が結論に達するよりも早く、本能が叫んだ方角へ、俺は全力の回し蹴りを叩き込んでいた。
何も見えない、誰もいないその空間。
だけど、確かな手応えがあった。
俺の蹴りは、鷹宮の腹部に直撃した。
さっきの斬撃がギリかわせるラインまで体を反り、反撃するつもりだったようだ。
そのまま、鷹宮を後方に飛ばす。
それに伴って、寂影が解除された。
俺は、仕留めるまで油断するつもりはない。
「これで終わりだ……刀技――」
再び刀に手を添え、最後の一撃を放つ。
『電光石火』
辺りに火花が飛び散り、鷹宮に振り下ろす。
もちろん、寸止めするつもりだ。
勝ちを確信したその時――
「全く……隊長もまだまだのようです」
勝利の確信が冷たい汗に変わる。
背後から響いたその声とともに、首筋に押し当てられた硬い鉄の感触が、俺の敗北を告げていた。




