第三十話 限定された代償
第三十話 限定された代償
気づいた時にはすでに鷹宮邸の廊下を走っていた。
美雨が倒れた?
なんで、どうして。
そんな感情がずっと頭の中をぐるぐる回っている。
美雨がいるという部屋の扉の前に立ち、深呼吸をしてノックする。
「どうぞ」
中から年老いた男性の声が聞こえ、静かに扉を開けた。
――――――――
ベッドの上で荒い息で眠っている美雨を見た。
「あの、美雨はどうしたのですか?」
近くにあった椅子に座り、医者を名乗った男性に話しかける。
「原因はわかりませんが、症状は能力多使用の症状によく似ています」
その言葉を聞いて、俺は困惑した。
美雨は能力は使えないはずだ。
なのに、能力多使用の症状が出ている理由がわからない。
「なん、で……美雨は能力が使えないはず……」
「お兄さんが知らないうちに能力が芽生えていた。という可能性もあります」
俺は、どうやって美雨と向き合えばいい?
能力が発生しているかもしれない妹に、気づいてやれなかった……。
そして、こんな事態になってしまった俺は……。
「ひとまず、命に別状はないですし、安静にしていれば時期に目が覚めるでしょう」
その後の会話は、あまり記憶していない。
上の空で話を聞いているうちに、医者は帰ってしまった。
――――――――
美雨のひとまずのケアをした後、中庭に出た。
夜空の星が綺麗に光る夜、俺が何も考えられずにただそこにいると、突然背後から声をかけられる。
「やはりここにいましたか。隊長」
「……鷹宮か。お前はどうした?こんなところに来て」
「もちろん、隊長を探していたんですよ」
鷹宮は俺の隣に立ち、じっと俺を見つめる。
「なんだよ。そんなにじっと見て」
「隊長、神代家の能力について、ご存知ですか?」
「前にも言ったろ?俺は母さんから詳しいことは聞いていない。神代のことは全部美雨がし……って……」
そこまで言ったところで、俺はあることに気づいてしまった。
鷹宮が言った神代家の能力。
美雨の近くにいると、いつも心が安らぐこと。
そして今日、自分の能力の反動がなかったこと。
身体の芯から、じわじわと冷たい汗が吹き出してくる。
頼むから俺の思い違いであってくれ、ただの勘違いであってくれと、必死に心のなかで祈っていた。
だけど、そんな淡い希望は、鷹宮の言葉によって跡形もなく消え去った。
「神代家の神事の系譜……それは『等価交換』。美雨さんは今日、限界を迎えるあなたの命を救うために、初めてその力を引き絞った。つまり、あの衰弱は——あなた自身の代償の塊なんですよ」
その言葉を聞いて、俺は何も言えなくなった。
「これは、隊長が弱いまま能力を多用したことが原因です。それに気づいてもらうために、私は隊長を完封した。今の状態だと、まともに大切な人も守れませんよ」
自分が『最弱』のまま無茶をしたせいで、九歳の妹にそこまでの覚悟をさせてしまった。
俺は拳を、血が滲むほど強く握りしめる。
美雨のサポートという安全網はもう二度と使わない。
使わせてなるものか。
2週間ぶりです!ごめんなさい!
キリがいいので次からは暁のエーヴァルをフルリメイクしていきます!
文章、単語をわかりやすくして、伏線やキャラ描写も増やします。




