第二十四話 鷹宮邸
第二十四話 鷹宮邸
「お~い。着いたぜ、隊長。起きろよ」
俺は鬼塚に起こされて目を覚ます。
……暖かい夕食の夢を見ていた。こびりついていた過去の残像を振り払うように、俺は重い瞼を押し上げた。
「おはよう、鬼塚。……そう言えば、二人はどうした?」
「おはようさん。二人はもう先に行ったぞ。早く行こうぜ」
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目の前にそびえたつ鷹宮邸は、想像を絶する威容を誇っていた。
……単にデカいの一言では片づけられない、歴史と権威が凝縮されたような巨大な門構えだ。
「わぁ……おっきい!ねぇねぇお兄ちゃん!この家、おじいちゃんの家みたいだよ!」
美雨が俺のところまで報告に来る。
美雨がここにいる理由は、結局、九歳の妹を一人残していく不安に打ち勝てず、半ば強引に同行させたのだ。
……表向きには「放置できない」だが、本音は俺の目が届く場所に置いておきたかった。
俺は、美雨のメンタルが羨ましい。
そんなやりとりをしながら、俺たちは鷹宮に連れられて屋敷に向かった。
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「「「おかえりなさいませ」」」
数人のメイドさんらしき人と、執事っぽい人が俺たちを出迎えてくれた。
「三人とも。ようこそ我が家へ。歓迎しますよ」
鷹宮が前に出て、手を大きく広げる。
「お前ってさ、何者なんだよ。お坊ちゃんなのはわかるんだけどさ。なんでお前の家はこんなに金持ちなんだ?」
そんな質問をすると、鷹宮は心底不思議そうな顔で俺を見る。
「おや?もしかして聞いていないのですか?それは意外でしたね。神代家なら知っているものと思っていましたが……」
九歳の妹が、哀れみすら含んだ「正気を疑う目」で俺を見つめてくる。
……やめてくれ、その純粋な瞳が俺のメンタルを無慈悲に削っていく。
てか美雨は知ってるのかよ。
なんで俺は知らないんだよ。
「お兄ちゃん忘れたの?
ほら、昔お母さんが四家について話してくれたじゃん」
「それは覚えているけど、あまり詳しくは覚えてないな」
美雨が呆れている。
「もういいよ。お兄ちゃんは別に知らなくても大丈夫だし」
「それ、母さんにも言われた気がする」
俺が昔の記憶をなんとか辿ろうとしていると、鷹宮が話し出す。
「……四家は政治・裏・神事・霊の各分野でこの地を支配しています。私たちが担当するのは『裏』……すなわち、表に出せない汚れ仕事。だからこの屋敷も、地図上では空白扱いなんですよ」
「お兄ちゃんは知ってるはずだけどね」
初耳どころか、寝耳に水だ。……母さん、俺にだけ情報を制限しすぎてやしないか?
というか、俺でもわからないのなら、鬼塚ももちろんわからないわけで……
「うおっ!この庭、すげー広いな!遊び放題じゃねぇか!」
鬼塚は遠くの方で庭を見てはしゃいでいた。
流石は未成年男子。行動力が半端じゃねぇ。
「さ。四家の話なんてどうでもいいんです。私たちがここに来た理由、忘れてませんよね?」
「もちろん。バカンスに来たんだから楽しまないといけないよな!」
「隊長、冗談はいい加減にしてください」
「はい、すんません」
冷え切った笑顔を向けられて、俺は謝ることしかできなかった。
「もちろん。訓練だろ?それくらい分かってるさ。
……鬼塚は知らないが」
遠くで蝶でも追いかけていそうな鬼塚の後ろ姿に、俺は深いため息とともに「……あいつ、絶対バカンスだと思ってるぞ」と確信を込めてつぶやいた。
「……と、とりあえず!部屋まで案内しますのでついてきてください」
ちょっと説明寄りになっちゃったけど、大丈夫かな?




