第二十三話 家族を守るということ(後編)
第二十三話 家族を守るということ(後編)
舞台裏、そこにはさっきの男含めて、数人の男たちが屯していた。
手には……なぜかナイフを持っている。
すごく嫌な予感がした。
そう思った時には、俺は男たちの前に飛び出していた。
「な……なぁ、こんなところで何やってるんだ?」
「は?なんだ?ガキ。お前こそこんなところで何やってるんだよ」
一人の男が俺を訝しむ目で見てくる。
「俺はこの神社の関係者だからな。なんだっていいだろ」
「……まぁいい。俺らは忙しいんだ、そこをどけ」
「嫌だって言ったら?」
「じゃあ……力づくで――」
男が殴りかかる体勢を見せた瞬間、俺は足元にあった木の棒を拾い――
「『抜刀術――電光石火!!』」
カウンターで拳を弾き、そのまま連撃を繰り出して片手のナイフを遠くに飛ばした。
「なっ!?」
男たちの目から、侮りの色が消えた。
それは紛れもなく、命を奪うための『殺気』に対する本能的な反応だった。
「『一閃』」
一人、崩れ落ちる。
「テメェ!!」
男がナイフを振り下ろすが、木の棒で受け流す。
そのまま持ち替えて、突きを繰り出す。
「『閃牙』!!」
硬質な音と共に、男の意識がぷつりと途切れる。
俺の心臓が高鳴っていた。
父さんに止められた『これ』を振るう背徳感と、家族を守る高揚感が混ざり合っていた。
「最後だ」
そいつは困惑と恐怖が入り混じった顔を俺に向けて、言った。
「な、何者だよ……お前……」
「俺?俺はな……」
息を整え、その男に言い放つ。
「俺は、神代空和。俺の家族に害をなす輩を……断つ者だ」
――――――――
暴れる男たちを無造作に縛り上げ、俺は警察に通報する段取りをつけてから、何食わぬ顔で祭りの喧騒へと戻っていった。
そして、俺が戻った頃には、既に舞は終わっていた。
あいつら……まじで許さんぞ。
ほかの儀式も終わって、二人が出てくる。
「お疲れー!すげー良かった!」
俺はタオルを持って美雨に駆け寄った。
「わっ!」
そして美雨を高く抱き上げる。
美雨は驚いた顔をしていたが、途中から笑っていた。
「でもお兄ちゃん、途中からいなかったじゃん!」
美雨に核心を突かれる。
「えっ!?あ〜いや、あっそうそう。トイレだよ。トイレ」
「あら?境内にはトイレはなかったはず……」
母さんの妙に鋭い視線にヒヤリとしつつ、俺は笑って強引に話題を切り替えた。
「まあまあまあ、細かいことはいいじゃん」
相手が悪かったとしても、暴力沙汰を起こしたことを二人に知られたくなかった。
警察には襲われたから反撃したって言うことにした。
自分に言い聞かせるように、俺は何度も心のなかで『これは正当防衛だ』と繰り返していた。
「ふーん」
二人が疑いの目を向けてくる。
「そっそうだ!今日の夕飯は俺と父さんで作るよ!」
「え!楽しみだな〜」
「それは楽できていいわね〜」
疑う二人をなんとかやり過ごし、俺は安堵と罪悪感を抱えたまま、父さんと二人で食卓へと料理を運んだ。




