第二十話 残念なエリートスナイパー
第二十話 残念なエリートスナイパー
「――と、こんな感じで遅刻をしたというわけです」
俺たちは、呆然としながら鷹宮の話を聞いていた。
「……つまり、お前はあのポンコツ情報部の所属だったというわけか」
俺がそう尋ねると、
「私をあのポンコツ情報部と一緒にしないでください。私は匿秘情報部です」
どっちも同じようなもんだろと思ったが、黙っておく。
「とりあえず、お前の状況は分かった」
俺は包帯が巻かれた腕を擦りながら言う。
そして、一つ気になっていることがあった。
「……なぁ、月城が最後に言ってた『実験は終わった』ってなんのことだ?匿秘情報部のお前なら知ってるんじゃないのか?」
「知りませんよそんなこと」
即答だった。
……こいつ、所属部署名は立派だが、中身はやっぱりいつもの残念エリート鷹宮だな。
「で、これからどうするんだ?月城は宵位第五席……もっと上がいるのにかなり苦戦しちまったぞ」
今まで寝ていた鬼塚が会話に入ってくる。
確かにそのとおりだ。
第五席クラスでさえ、俺達は全滅の危機にあった。
……最も、鷹宮が面白がって加勢しなかったっていうのもあるが。
「俺は未だに加勢してくれなかったこと恨んでるからな」
「それは、事情があったって言ったじゃないですか。それに、最後には加勢しましたし」
上司からの命令だと言ってたが、こいつの性格上、面白がってたとしか思えない。
ピンチになったから助けてくれたんだろうが。
「隊長、話を脱線させないでくれ。結果的に鷹宮が助けてくれたんだからいいじゃねえか」
脳筋の代名詞だったあの鬼塚に怒られるとは。
俺は開いた口が塞がらないまま、驚愕のまなざしを鬼塚に向けた。
それを見て、鷹宮は笑っていやがる。
覚えとけよ。
「よし、話を戻そうか。まぁ簡単に言うと、俺たちが強くなるにはどうすればいいか、だろ?」
「ああ。あと、俺みたいに能力を昇華させる方法だな」
「それが一番の難問ですね。昇華は未知の現象。鬼塚さんのも突然でしたし、何が起こったのか一瞬分かりませんでした」
「そもそも、昇華っていうのも、月城が言っただけだしな――なあ鬼塚。なんかコツとかないか?」
「あったらとっくに教えてるよ」
振り出しに戻ってしまった。
「じゃあ、合宿でもしませんか?」
「「は?」」
鷹宮の突拍子もない提案に、二人で顔を見合わせる。
「何もバカンスに行こうと言ってるわけではありませんよ。私の精密射撃を鍛えた広大な『裏庭』……あそこなら、だれにも邪魔されずに心置きなく暴れられますよ」
そう言えばこいつ、資産家階級の息子だったな。
「訓練場なら、天衡機関のを使えばいいんじゃねえか?」
「今天衡機関は、新人育成で訓練場貸してもらえないんだよ。……よし、鷹宮の提案に乗ろうか!」
話のまとまった俺たちは、早速鷹宮の屋敷へと向かった。
だがこの時俺たちは、強化合宿という名の目的地に、月城を上回る『地獄』が待ち構えているとは……夢にも思っていなかった。
読んでいただきありがとうございます!
鷹宮の素性について、予想はできていましたか?伏線は結構張っていた気がしますが、見つけていただけたら幸いです。今後ともよろしくお願いします。




