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第十六話 狂王の理

第十六話 狂王の理

隊長が刺された。

 隊長の肩にナイフが深く刺さり、鮮血が舞う。

 

 俺が雑魚どもを引きつけている間に、隊長は絶体絶命の窮地に立たされていた。


 助けないと。


 その一心で俺の中でバラバラだったパズルが一つに噛み合う。


「なんで俺が、あの月城って野郎を嫌っていたのかは知らねぇ。……だけどな」


俺は月城を見据え、決して弱くない、静かな声で呟く。


「俺の隊長(ダチ)の血を流させた。それだけで、ぶっ殺す理由は十分だろッ!!」


 胸の奥から湧き上がる黒い衝動。使いたくはなかった能力を、俺は力任せに引きずり出した。


「能力発動――『狂戦士(バーサーカー)』!!!」



 ――――――――



 俺は肩を刺された痛みに耐えながら、月城の追撃を無理やり刀で受ける。


 月城が俺の姿を見て、小馬鹿にするように嘲笑った。


「もう限界でしょう?ほら、あなたの可愛い部下も、恐怖で使い物にならない」


「……あいつを、舐めるなよ」


 血を吐きながら俺が不敵に笑ったその直後、背後から大気を震わせる狂気が膨れ上がった。

 かつて何度も対峙し、そのたびに俺が強引に抑え込んできた、理性を失う破壊の獣。


 鬼塚が、能力を暴走させた。


「なるほど!解放させましたか。そうですか、 そうですか!」


 月城が狂喜して笑う。


 鬼塚は獣のような雄叫びを上げ、周囲に群がっていた敵兵ごと、月城を力任せに吹き飛ばした。

 そのまま赤いオーラを撒き散らしながら突進し、月城へと拳を振るう。


 だが、怒りに任せた大振りの一撃は、月城の優雅な身のこなしに容易く躱されてしまう。


 ――この状況は何としても避けなければいけなかった。

 あの日、あいつに記憶という代償まで背負わせてまで守ろうとした日常。

 

それをここで、無下にさせるわけにはいかない!


 俺は傷ついた身体を引きずり、暴走する鬼塚の前に、フラフラと立ち塞がった。


「待て……鬼塚……。そんな戦い方をすれば、お前の身体が壊れる。それに、周りの建物ごと、お前自身を滅ぼす気か……!」


 俺は血を流しながら、俺は必死に鬼塚へと語りかける。

 かつては、俺の能力で無理やり鎮めるしかなかった。

 言葉なんて、届くはずがないと思っていたから。


 だが、鬼塚の様子が、ほんの少しだけ変わった。

 赤黒いオーラの揺らぎが、ピタリと止まる。

 

 ハハッ……なんだよ。届くじゃねぇか……。

 こんなに、簡単だったのかよ……!



 ――――――――



 俺は、奈落の底に沈んでいくような感覚の中にいた。

 理性と意識が濁っていく中、不意に、温かくて優しい感情が俺の心を繋ぎ止める。


 目の前にいる隊長から、必死な思いが伝わってきた。


 俺は、何をしている?なにがしたい?


 暴れたいのか?殺したいのか?

 違う。


 気持ちよくなりたいのか?自己満足か?

 違う……断じて違う!


 じゃあなんだ?俺の、戦う理由は。


 そうだ。

 俺がここで理性を無くして暴れたら、月城を倒せても、隊長を巻き込んじまう。

 俺は――隊長を助けたいんだ……!



 ――――――――



 目の前で、鬼塚の空気が一変した。

 ドロドロを広がっていた赤黒いオーラが、鬼塚の胸の奥へと吸い込まれるように収束していく。


 大爆発の予兆ではない。

 圧倒的な『無音』。

 立ち込める静寂。

 鬼塚の髪が静かに逆立ち、瞳から無駄な光が消えて、研ぎ澄まされたオーラが身体の表面を薄く覆う。


「おや……暴走が止まりましたね?恐怖に屈しましたか」


「いや。……無駄吠えをやめただけだ」


 鬼塚がそう呟いた瞬間、爆音と共に月城の身体が後方へと吹き飛び、工場の分厚いコンクリート壁に激突した。

 不可視の、あまりにも速すぎる一撃。


 そこに立っているのは、間違いなく鬼塚だ。だが、根本的に何かが、完全に生まれ変わっている。


「能力昇華――『狂王の(バーサーカー)(ロジック)』」


 鬼塚は、俺を見て静かに笑った。


「隊長。あとは俺に任せとけ!」


 そこには、俺が絶大な信頼を置く、本物の『相棒』の姿があった。

 

読んでいただきありがとうございます。

なぜここで鬼塚は覚醒したのでしょうか。前にも似たようなことがあったのになぜその時は覚醒しなかったのか。

まず、第七話あたりの鬼塚は、怒り、混乱、『快楽』によって構成された能力が発動していました。

ですが今回鬼塚は、恐怖の克服、守るという意思、を自覚し、『能力の意味』を理解した。

だから鬼塚は覚醒したのです。


次に神代についてです。急に言葉で説得しようとした理由です。

一度目の暴走の時、黒鋼隊結成当初でチームの仲は今ほど深くありませんでした。(だから言葉をかけても届きません)

その時は失敗しましたが、今は神代が鬼塚に対して相棒と認識するくらいまで仲は深まっています。

それにまた能力でねじ伏せることを嫌ったのでしょう。

また、鬼塚の暴走動機が『快楽』でもありました。

ですが今回の動機は、『隊長を助けたい』。

そう、かつて弟を守りたいと思い、立ち上がった事を鬼塚が思い出し、『快楽』ではない別の理由で、能力を覚醒させたということです。(これ本文に書けばよかったな)


長々と書きましたが、要するに能力発動条件が変わったからということです。

鬼塚編はおそらく次話か、その次の話で終わると思います。

次の章は謎の多い鷹宮編です。

今までの伏線を回収します。ぜひ最後までお付き合いください。

感想など、とても励みになります。

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