第十五話 激突
第十五話 激突
「相手が一人だからって警戒を怠るな。奴はあれでも幹部だ」
「どうせなら油断してくれたほうが助かったのですが……さすがは零動の剣士。精鋭部隊の隊長にふさわしいお方のようだ」
やっぱりおかしい。
コイツの、異様な余裕。二対一なのに全く油断ができない。
いや、待て。
俺は大事なことを失念していた。
そういやコイツ――
「一人で相手をする?いえいえ。私は指揮官ですよ?」
その瞬間、嫌な予感が的中する。
「まんまとこの廃工場にあなたたちは来てしまったのです。私たちのテリトリーに入ったのですから、それなりの覚悟をしてもらわないと」
月城が、不敵に笑って指を鳴らした。
直後、軋むような金属音と共に、頭上から巨大な鉄骨が直下してくる。
質量による超高速の落下。
「くっ……鬼塚ッ!」
俺は隣にいた鬼塚を突き飛ばし、自ら前へ踏み込んだ。
鞘から白刃が閃く。超高速の抜刀が、重力に従って落ちる鉄塊を真っ二つに両断した。
左右に分かれた鉄骨が、轟音を立てて地面を砕く。
もうもうと巻き上がる土煙。
その視界不良を切り裂くように、俺は一歩、月城へと間合いを詰めた。
「舐めるなよ、月城……ッ!」
「いいですねぇ、その怒り。さぁ、楽しい殺し合いを始めましょうか!」
――――――――
複数の人影が、廃工場のあらゆるところから飛び出す。
「なっ……!気配なんて感じなかったぞ!?」
「鬼塚、頼む!そいつ等の相手は任せた」
「お、おう!」
俺の周りは鬼塚が守ってくれる。
そう思っただけでこいつだけに集中できる。
「困りましたねぇ。今回は別にあなたに用はないのですが」
「そんなの関係ないだろ。俺は今、殺してでもお前を止めないといけない!」
煙の中から、月城の影がブレる。
コイツ、速い……!
俺は反射的に刀を構えるが、死角から音もなく放たれた複数のナイフが視界を埋めた。
――くそっ!体術だけで躱しきれない!
「おやおや」
月城が踊るようなステップで、俺の完全な死角へと回り込む。
その手には、不気味に輝くナイフが握られていた。
「……しまっ――!」
俺は能力を発動させた。
強制的な世界への干渉。
だが、完全に不意を突かれ、集中が乱れた状態での発動だ。
――世界が、一瞬だけ止まる。
だが、その静寂は文字通り「一瞬」で限界を迎えた。
弾けるように時間が動き出す。
それでも、今の俺にはその刹那で十分だった。
無理やり体を反らし、向かってくる月城に向けて刀の切っ先を突き出す。
しかし、月城はコマのように身を翻し、俺の刺突を紙一重で見切ってのけた。
(……浅い!すぐに追撃を――)
踏み込もうとした矢先、脳髄を直接かき回されるような激痛が走った。
小規模とはいえ、無理な状況で能力を使った代償。
視界が真っ白に染まる。
そして、その致命的な隙を、月城が見逃すはずがなかった。
「無茶をしますねぇ。……ですが、これでチェックメイトです」
冷徹な声とともに、月城のナイフが、俺の肩へと深々と突き刺さった。




