第十四話 天秤の担ぎ手
鬼塚が退院した翌日。
本部からとある連絡が来た。
――――――――
「月城の討伐命令ですか?」
「あぁ。鬼塚を追い詰めたそいつを本部は警戒してるらしい」
俺と鷹宮は鬼塚に聞こえないように小声で話し合う。
「……それ、本当に鬼塚さんを連れて行かないとだめですか?」
「そうだ。俺たちだけだと、隊のバランスが崩れてしまう」
鷹宮は渋々納得したように頷く。
「鬼塚、次の任務は敵幹部の討伐だ。作戦会議をするぞ」
「お?やっと黄昏教団に一矢報いれるのか?で、どんなやつだ?」
その言葉に、俺は少し反応するが、すぐに昨日の会話だとわかり、落ち着いた。
「宵位五席、月城だ」
「あぁ、隊長が言ってたやつか。……変だよな。会ったこともねぇのに、名前を聞いただけで胸の奥がざわつきやがる。
俺、よっぽどそいつのことが嫌いみたいだぜ」
「月城は、相当な手練だ。本部からも生死は問わないとも言われている。初めての、殺し合いだ」
一瞬でこの部屋に緊張が走る。
それもそうだ。
今まで敵を捕らえることしかしてこなかった俺たちが、急に人殺しをやれと命令されているのだから。
「俺から言っておく。
殺し合いになる状況は、自分の命が危険になった時だけだ。それまでは今まで通りにすればいい」
少し緊張が解けたが、それでも身体は固まる。
俺は、誰かを殺すことで別の誰かを生かすような、そんな天秤の担ぎ手になりたいわけじゃない。甘いと言われようが、俺の視界から死人なんて一人も出したくないんだ。
……もう二度と、あのな喪失を繰り返したくない。
「隊長。今日は全員心の準備ができていないようです。作戦を考えたあと、もう休みましょう」
「……あぁ。そうだな。よし、作戦は――」
――――――――
翌日の昼。
「……で、あいつは遅刻したのか」
「おう」
「何してんの?あいつ」
「電話が繋がらないところを見るに、寝てるな」
今昼間ですが?
なんか、デジャヴを感じる……。
「もういい。俺たちで行くぞ。鷹宮を待ってるといつまで経っても進まないからな」
「それもそうだけどよ……。鷹宮いないと援護がないんだぞ?」
「わかってるそんなこと。でも今回の依頼は今日中に終わらせないといけない最重要命令だ。鷹宮の為に中断することはできない」
鬼塚は渋々俺の後を付いてくる。
「……鬼塚、感じるな?」
「……あぁ。これは……とんでもないな」
気配を感じてすぐ、一人の人影が見えた。
「どういうつもりだ!月城!」
「おや?零動の剣士。あなたとは初対面のはずですが……。その瞳、まるで私を深く恨んでいるかのようだ」
そこには、月城がいた。
それに、さっき感じた気配は一人だけだった。
どうやら、こいつは一人で俺たちを相手にするらしい。
「舐めやがって――!」
「待て」
鬼塚が突っ込んでいこうとするのを、制止する。
なぜあいつはあんなに余裕そうなんだ?
絶対に、何かを隠している。
神代がヘタレだったり、鷹宮がまた遅刻してたりしますけど、これ一応今後のための伏線なのでご理解ください。




