第十二話 信頼の弾道
第十二話 信頼の弾道
手榴弾の中の動線に火がつく。
爆発まで時間がない。
そいつは俺の足を決して離さない。
くそっ、離れろよっ!
いくら振り解こうとしても全く離さない。
このままだと、本当に自爆を喰らってしまう……!
俺が覚悟を決めたその瞬間、
鷹宮から無線機で連絡が入った。
『隊長!伏せてください!』
聞こえたと同時に反射的に体が動く。
伏せる直前に見たものは、対物ライフル用の弾丸だった。
――――――――
その弾丸は、俺の足を掴んでいる奴の手首に直撃した。
足が自由になり、後方へ飛び退く。
飛んだ瞬間、手榴弾が爆発。
爆風で後方に吹き飛ばされた。
体の至る所が軋む。
そのまま地面に投げ出され、受け身を取った。
「ゴホッ」
吐血した。
まさか、能力の反動か?
集中して気づかなかった。
今の状況を思い出す。
咄嗟に爆発地に目を向ける。
――葛城の片手が、わずかに動く。
嘘だろ?
あの爆発を諸に受けていたのに生きてるだって?
いくら能力で筋肉強化をしてたって、タフすぎる。
だが、そいつの右手はなかった。
おそらく鷹宮の狙撃で吹き飛んだのだろう。
流石にしばらくは動けないだろうが、早く拘束しておこう。
――――――――
「ありがとう鷹宮。おかげでさっきは助かったよ」
「いえいえ。私もさっき助けられましたしね」
鷹宮はライフルを背負い直し、いつもの顔で言った。
だが、その視線は俺の口元――拭いきれなかったわずかな血の跡に注がれている。
「……能力の、使いすぎじゃないですか」
「ただの衝撃だ。あの距離で爆発を食らえば、誰だってこうなる」
鷹宮はそれ以上追及しなかった。
だが、その瞳には納得のいかない色が滲んでいる。
俺は平静を装い、拘束した葛城を指差した。
片手を失い、血の海に沈んでいる葛城だが、その目にはまだ、消えない狂気の灯が宿っていた。
「……あ、あはは……。殺せよ、零動の剣士。俺を殺さなきゃ、お前は一生……『あの方』にたどり着けないぞ」
葛城の掠れた声が、俺の思考を一瞬停止させる。
「『あの方』だと……?」
前にも聞いた、『あの方』は一体誰だ?
黄昏教団の上の立場だということはわかるが、それ以外がまるでわからない謎の存在。
「あの方は、お前に固執している……」
葛城はそう言い残すと、激しく吐血して意識を失った。
命を燃やし尽くすような不吉な笑みを浮かべたまま。
「……まだ、息はありますね。気絶したようです」
「……ったく。どんだけしぶといんだよ」
そう言うが、俺の右手の震えが止まらない。
「……隊長、深追いは危険です」
「…………わかっている」
何かを感じ取ったのか、鷹宮は俺を制止する。
――そうだ。俺は『あの方』を知っている。
脳の奥で、閉じ込めていた記憶の檻が軋んだ。
全ては、この目的のために――。
どんどん神代の過去が明らかになっていきますね。
後今更なんですが、鷹宮は男です。勘違いしている人いました?一応おぼっちゃまって出てきたはずなんですけど…。
といっても、結構中性的ですけどね。




