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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第十章
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第三百二十八話 『復活』

 ジャーザンスの精神体が、真っ二つに切り裂かれた。

 恐怖と衝撃に怯えている様な表情。


 「……あ……ああ……そんな…………」


 今、ミネカを蝕み続けていた悪意の塊が、彼女の身体から消滅した。


 そのミネカは、事切れた様にうつ伏せに倒れる。

 彼女の身体を動かしていた魔物が消え去ったのだから当然だ。


 「ミネカ……!!!」


 彼女の名前を叫びながら駆け寄る翔英。

 地面に激突する前に、ミネカの身体を優しく受け止める。


 「ミネカ…………」


 眠りについたミネカの顔を見つめる。

 覚悟が変わるほどの時を経て、再び本物の彼女に触れている。


 「……凄い……。凄いよショウエイ……!! 今、彼女の内にいるジャーザンスを斬る事ができた……!!! こんなことが出来るなんて……!!!」


 想像もつかなかった方法での撃破。

 勝利に興奮気味のロジェが翔英の肩を叩く。


 翔英とロジェ。

 同じ特殊な力を持った二人が成し遂げた。


 ……いや、 


 「……ミネカのお陰だよ……」


 三人が成し遂げた結果だ。


 「そうだね……!! 流石はミネカ・ベルギアだ……!! とにかくやったね……!! これで、君の元に、彼女は戻って来れる……!!!」


 最も重要な戦いが終わり、最大の目的を果たす事が出来た。

 そう考えるロジェは喜びを爆発させる。


 翔英と共に歩む第一歩目を、無事に踏み出す事が出来ると。


 しかし、翔英の表情から、曇りは消えない。


 「……どうしたの……? ショウエイ……」


 彼の様子を見たロジェも不満を覚える。

 翔英は、ミネカを抱き締めながら答えた。


 「……ミネカは、まだ目を覚ませないんだ……」


 「……? ……それ、どういうこと?」


 「お前と戦った時にさ、ミネカ、俺を生き返らせる為に、とんでもない力を使っただろ? その代償で…………二度と目を覚まさないって……」


 「!!? ……二度と……!? ……そんな……そんなのって……」


 頭を抱えながら強く動揺するロジェ。

 勝利も束の間、問題は全く解決していなかった。


 あまりにもな事実を信じたくないロジェだが、あの力を目の当たりにしたからこそ納得もできる。

 確かに、それぐらいの代償を伴わなければ発動出来ないであろう力だった。

 

 「いや、俺はそんなの信じてねえ。だからあれから、ミネカの意識を取り戻す為に動いて来たんだ。そんな折に、ジャーザンスの野郎に目を付けられちまったんだけど」


 「……そうだったのか……。……うん……確かにそうだよね……!! 僕も一緒に探すよ!! 彼女の意識を戻す方法を……!!」


 「ありがとう、ロジェ。でも、一つ当てがあるんだ。とりあえず、ミネカを俺ん家に連れて帰りたい。そこに、知り合いから貰った薬が置いてあるから。……確か、強い衝撃を与える薬……だったかな……?」


 「そうなんだ……!! じゃあ早速、君の家に行こう……!!!」


 「うん。……で、どうやって帰ればいいの……?」


 「そうだね……。自力で行くんじゃ何日も掛かっちゃうから……。……ファンドルに頼もう」


 「……ファンドル? 誰だそれ」


 「僕の友達さ。ワープできる能力を持ってる」


 「……あの能力って、そいつのだったのか……。でも、いくらお前の友達だからって、人間の俺に協力なんてしてくれんのか?」


 「うん。だから、君の事は伏せて頼んで来るよ」


 「……そうか……。ありがとう、ロジェ」


 次の目的を共有した二人。

 帰り道を確保すべく、魔物、ファンドルを探しに向かうことにする。


 「君はここで待っていてくれ。ファンドルの居場所には心当たりがある。一時間もすれば、戻って来られると思う」


 「一時間……!? ……いや、それなら俺も行くわ。さすがにここで一時間は……気分が悪くなる……」


 「……でもそれじゃあ、君の事を伏せるのが難しくなるけど。それに、ミネカはどうするの?」


 「……確かに、そうだけど……」


 「……分かった。じゃあ、一旦ここから離れよう。さっき行った、あの子達がいる辺りの部屋で待っていてくれ。そこまでは一緒に行こう」


 翔英が最初に飛ばされた地点。

 非戦闘員の魔物がいた部屋を待機場所とする。

 翔英もそれには納得した。


 まずは移動。

 ミネカを背負う翔英の前方をロジェが歩いていく。


 「……ショウエイ……。大丈夫? よかったら、僕が代わるけど」


 「いや……!! 大丈夫だ……!! これだけは、俺にやらせてくれ……!!!」


 漸く彼女の身柄を取り戻したんだ。

 重かろうが疲れていようが、今はミネカの身体を手放したくない。


 「そうか。それならいいけど。………………?」


 「うおっ! ……どうしたのロジェ!!」


 下を向きながら歩いていた為、急に立ち止まったロジェの背中に頭をぶつける翔英。


 声を掛けてもロジェは動かない。

 その背中からは、底知れぬ不安が感じられる。


 「……どうしたんだよ……!! 早く行こうぜ……!! 忘れ物!?」


 「ああ、忘れ物だよ」


 「!!? 誰だ……!?」


 後ろから響く声。

 翔英はゆっくり後ろを振り返る。


 そこには、誰もいない。


 だが、


 「大事な忘れ物をしてるよ二人とも」


 声だけが、耳に入ってくる。


 「……まだ、スペアを残していたのか……!!」


 ロジェが振り返りながら叫んだ。

 その言葉の意味の理解を翔英の脳は拒む。


 「……考えれば当然だよね。ここは……君の隠れ家だ……。狡猾な君が、近くに保険を残してない訳がない……」


 「……まさか……あいつ…………。くそっ……!!」


 だが、受け入れなければならない。

 乗り越えなければならないことだ。


 あの時も、何回も味合わされたこの時間。


 「どこにいるんだ……!! 出てこい……!! ジャーザンス……!!!」


 翔英は彼の名前を叫んだ。


 「言われなくても、今出てくよ」


 すると、回復装置の更に奥に隠されていた部屋から、五、六メートルはあるかという怪物が現れた。


 「……!! なんだ……!? その姿……!!」


 「なんだもなにも、これが俺だよ。本当の俺さ。――――びっくりしたかな?」


 大きさだけではない。

 禍々しいその姿。


 見たものを恐怖させる醜悪な怪物。

 樹木が帯重なった様な、異様という言葉が具現化したような化物。


 ロジェたち他の魔物と同族とは、決して出来ない姿だ。


 「さあ、ショウエイ・キスギ、そしてロジェ。最後の決着をつけようじゃないか。…………ぶっ殺してやるよ!!!!! ゴミ二人ィ!!!!!」


 復活のジャーザンス。

 彼を前にした翔英とロジェは、再び共に立ち上がる。

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