第三百四話 『進化する力』
「……なんだそれ……」
披露されたロジェの力。
武器人間と呼ぶのが正しいのか、ロジェの両腕は翔英の剣となっている。
「そもそもクレイジーグロウサーは、僕の力を付与した物だ。僕本来の力が『そう』だったとして、何もおかしくないだろう?」
「……!! んっ……!?」
後方を振り返る翔英。
投げ飛ばしたはずの武器はいつの間にか無くなっている。
やはりロジェは、武器と一体化したらしい。
「……では、ショウエイ。早速、僕の新しい力を試させて貰うよ」
両腕が剣と化したロジェ。
翔英に猛攻を仕掛ける。
「……くそっ……!!」
拳の時とは打って変わり押され始める翔英。
縮まっていた差がもう一度開いた。
ロジェがやる気を出していることも大きい。
集中を維持したまま攻撃は途切れない。
翔英に対して初めて抱いた、「負けたくない」という思いが更なる強さを与えている。
前回、ロジェは翔英を倒すことは全く考えていなかった。
そのため、作り出した剣はロジェに応えてくれず、渾身の一撃は不発となり、翔英に反撃されてしまった。
しかし今度は、敵意十分。
ロジェの一発一発が有効打となり、翔英にダメージを与えていく。
「(……このままじゃマズい……!!)」
真正面からぶつかっては負けることを悟った翔英。
ロジェに一閃喰らわせた隙に、一旦距離を置き攻撃に備える。
「……僕との接近戦を避けるか。……いい判断だね。――――でもね、もう十分すぎる程、君の力を貰ったよ。君の知らないだろう、君の力をね」
「……!! なんだっ……!?」
腕を変形させていくロジェ。
クレイジーグロウサーの能力。
斬った武器や人の能力を吸い取る力。
それがロジェ本体に備わっている。
そしてこの力は、まだ出現していない『未来の力』までも吸い取ることが出来る。
「……なんだそれ……。……銃……!?」
「その通りだよ」
ロジェの腕が次に変化したのは、赤く輝く銃。
翔英の使うことの出来ない力だ。
「距離を取ろうとしても無意味ってことだね」
「!!!」
発泡。
音と同時に身体を動かした翔英は、急所へのダメージを回避する。
だが、
「うっ……!!」
肩をカスった。
「……何を撃ったんだよ……!!」
「僕の魔力さ。どんどん行くよ!!」
言葉通り、ドンドンと弾を発射するロジェ。
対する翔英は、
「……へえ……。やるね、ショウエイ」
剣を盾に変形し、弾を受け止める。
「(……あんなのが使えるなら、距離を置くのはもっとマズい……!! 接近するしか……!!)」
翔英の飛び道具は限られている。
遠距離では十分に戦えない。
リロード無しで撃ってくるロジェに対して、距離を取ったのは悪手だった。
盾で守りながら距離を詰める翔英。
銃は盾で抑えることが出来ている。
人体に当たれば痛いが、盾を破る程の威力はない。
そのままロジェの元へ戻る翔英。
だが、
「……いつまでも盾にしてちゃ……僕に攻撃できないだろう……!?」
盾を解いたら銃が飛んでくる。
防御で手一杯で、攻撃に移れない。
と、ロジェは読むが――――
「(……いや、お前に出来ているんだ……!! ずっとこいつと戦ってきた俺にだって……応えてくれるはずだ……!!!)」
翔英も変化する。
「……!! これは……!!」
ロジェのように、武器を二つに分けた。
左手で盾を持ちながら、右手に剣を持っている。
逆境での進化。
攻防一体の二刀流だ。
「おらあっ……!!」
銃弾を盾でガードしつつ、剣で胸を攻撃。
ロジェからも血が流れる。
「……なるほど……。君も進化を止めないという訳か……。……やっぱり接近戦の方が、君と僕の対決には相応しいね……!!」
また両腕を剣に戻すロジェ。
盾で防がれてしまう銃弾は効かない。
翔英を倒すには、近付くしかない。
それは翔英も同じこと。
利害が一致した両者は、ゆっくりと死線を近付けていく。
『はあっ……!!』
ぶつかり合う剣と剣。
翔英の方は武器の使い方に慣れている。
剣で受け止められても、貫通ダメージを刻んでいく。
だが、ロジェの肉体は魔王ザラボラスの血を引いた強固な物。
魔能を発動する前に受けてきたダメージ、今確実に生まれていくダメージを持ってしても倒れない。
それだけでなく、傷を貰った後にも確実にお返しをしてくる。
一撃目を盾で受け止めても、二撃目が肉体に入る。
クリーンヒットを決めているのは明らかに翔英の方なのに、ステータスの差で勝利に向かえない。
「……本当に強いね……ショウエイ……」
だが、余裕がないのはロジェも同じだ。
元々体力が削られていたとはいえ、やる気を出し、能力を開花させても、翔英を圧倒することが出来ない。
それどころか、気を抜いたら敗北する。
この男の強さを侮っていた。
本気で戦う気になって、やっと対等だ。
しかし、
「……ロジェ……。お前は間違いなく俺よりも強いよ……。俺がまだこうして立っているのは……お前がまだ、戦いを本気で望んでないからだ……」
翔英の方はまだ、戦いを戦いのまま終わらせようと思っていない。
「……!! 自分の強さを棚にあげて、まだ僕を馬鹿にするのか……!! 僕は本気だ……!! 君が強いんだ……!! 僕は……君との戦いに、本気で勝ちたいと思っている……!!!」
「……違うよ……ロジェ……。お前が本気で俺を殺そうとしてたら、俺はもう立ってない……。……あの時と変わってないんだよ……。……だから、無駄な血を流すのはやめようよ……」
「………………」
ロジェは明らかに悩んでいる。
何かに縛られ、戦うことを選んでいる。
それを理解した翔英は、本気でロジェとの和解を果たすべく、言葉で説得しようとする。
「…………ダメだ……!!!」
「……!! 何がダメなんだよ……!! 俺はお前と……友達になりたいんだ……!!! 過去なんて知るか……!!!」
「…………友達……だって……?」
今度は翔英の会心の口撃が決まった。
戦闘中において耳にするはずがない単語を向けられ、思わず混乱するロジェ。
その言葉は、確かに固めたはずのロジェの決意を溶かし、小さな穴を開けた。
「そうだよ……!! 人間とか魔物とか気にしない……!! 大事なのは中身だ……!!! 俺はお前と話して、中身を知って、友達になりたいって思った……!!! 俺も本気だ……!!!」
「………………いや、違う……。違う……!!!」
「……ロジェ……」
「ダメなんだよ!! 僕たちが友達になっちゃ!! 許さないんだよ!! 世界が!!!」
ぶつけ合う思い。
そして、背負うもの。




