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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第十章
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第三百四話 『進化する力』

 「……なんだそれ……」


 披露されたロジェの力。

 武器人間と呼ぶのが正しいのか、ロジェの両腕は翔英の剣となっている。


 「そもそもクレイジーグロウサーは、僕の力を付与した物だ。僕本来の力が『そう』だったとして、何もおかしくないだろう?」


 「……!! んっ……!?」


 後方を振り返る翔英。

 投げ飛ばしたはずの武器はいつの間にか無くなっている。


 やはりロジェは、武器と一体化したらしい。


 「……では、ショウエイ。早速、僕の新しい力を試させて貰うよ」


 両腕が剣と化したロジェ。

 翔英に猛攻を仕掛ける。


 「……くそっ……!!」


 拳の時とは打って変わり押され始める翔英。

 縮まっていた差がもう一度開いた。


 ロジェがやる気を出していることも大きい。


 集中を維持したまま攻撃は途切れない。

 翔英に対して初めて抱いた、「負けたくない」という思いが更なる強さを与えている。


 前回、ロジェは翔英を倒すことは全く考えていなかった。

 そのため、作り出した剣はロジェに応えてくれず、渾身の一撃は不発となり、翔英に反撃されてしまった。


 しかし今度は、敵意十分。


 ロジェの一発一発が有効打となり、翔英にダメージを与えていく。


 「(……このままじゃマズい……!!)」


 真正面からぶつかっては負けることを悟った翔英。 

 ロジェに一閃喰らわせた隙に、一旦距離を置き攻撃に備える。


 「……僕との接近戦を避けるか。……いい判断だね。――――でもね、もう十分すぎる程、君の力を貰ったよ。君の知らないだろう、君の力をね」


 「……!! なんだっ……!?」


 腕を変形させていくロジェ。


 クレイジーグロウサーの能力。

 斬った武器や人の能力を吸い取る力。

 それがロジェ本体に備わっている。


 そしてこの力は、まだ出現していない『未来の力』までも吸い取ることが出来る。


 「……なんだそれ……。……銃……!?」


 「その通りだよ」


 ロジェの腕が次に変化したのは、赤く輝く銃。

 翔英の使うことの出来ない力だ。


 「距離を取ろうとしても無意味ってことだね」


 「!!!」


 発泡。


 音と同時に身体を動かした翔英は、急所へのダメージを回避する。

 だが、


 「うっ……!!」


 肩をカスった。


 「……何を撃ったんだよ……!!」


 「僕の魔力さ。どんどん行くよ!!」


 言葉通り、ドンドンと弾を発射するロジェ。

 対する翔英は、


 「……へえ……。やるね、ショウエイ」


 剣を盾に変形し、弾を受け止める。


 「(……あんなのが使えるなら、距離を置くのはもっとマズい……!! 接近するしか……!!)」


 翔英の飛び道具は限られている。

 遠距離では十分に戦えない。


 リロード無しで撃ってくるロジェに対して、距離を取ったのは悪手だった。


 盾で守りながら距離を詰める翔英。

 銃は盾で抑えることが出来ている。

 人体に当たれば痛いが、盾を破る程の威力はない。


 そのままロジェの元へ戻る翔英。

 

 だが、


 「……いつまでも盾にしてちゃ……僕に攻撃できないだろう……!?」


 盾を解いたら銃が飛んでくる。

 防御で手一杯で、攻撃に移れない。


 と、ロジェは読むが――――


 「(……いや、お前に出来ているんだ……!! ずっとこいつと戦ってきた俺にだって……応えてくれるはずだ……!!!)」


 翔英も変化する。


 「……!! これは……!!」


 ロジェのように、武器を二つに分けた。

 左手で盾を持ちながら、右手に剣を持っている。


 逆境での進化。

 攻防一体の二刀流だ。


 「おらあっ……!!」


 銃弾を盾でガードしつつ、剣で胸を攻撃。

 ロジェからも血が流れる。


 「……なるほど……。君も進化を止めないという訳か……。……やっぱり接近戦の方が、君と僕の対決には相応しいね……!!」


 また両腕を剣に戻すロジェ。


 盾で防がれてしまう銃弾は効かない。

 翔英を倒すには、近付くしかない。


 それは翔英も同じこと。

 利害が一致した両者は、ゆっくりと死線を近付けていく。


 『はあっ……!!』


 ぶつかり合う剣と剣。


 翔英の方は武器の使い方に慣れている。

 剣で受け止められても、貫通ダメージを刻んでいく。


 だが、ロジェの肉体は魔王ザラボラスの血を引いた強固な物。

 魔能を発動する前に受けてきたダメージ、今確実に生まれていくダメージを持ってしても倒れない。


 それだけでなく、傷を貰った後にも確実にお返しをしてくる。

 一撃目を盾で受け止めても、二撃目が肉体に入る。


 クリーンヒットを決めているのは明らかに翔英の方なのに、ステータスの差で勝利に向かえない。


 「……本当に強いね……ショウエイ……」


 だが、余裕がないのはロジェも同じだ。


 元々体力が削られていたとはいえ、やる気を出し、能力を開花させても、翔英を圧倒することが出来ない。

 それどころか、気を抜いたら敗北する。


 この男の強さを侮っていた。

 本気で戦う気になって、やっと対等だ。


 しかし、


 「……ロジェ……。お前は間違いなく俺よりも強いよ……。俺がまだこうして立っているのは……お前がまだ、戦いを本気で望んでないからだ……」


 翔英の方はまだ、戦いを戦いのまま終わらせようと思っていない。


 「……!! 自分の強さを棚にあげて、まだ僕を馬鹿にするのか……!! 僕は本気だ……!! 君が強いんだ……!! 僕は……君との戦いに、本気で勝ちたいと思っている……!!!」


 「……違うよ……ロジェ……。お前が本気で俺を殺そうとしてたら、俺はもう立ってない……。……あの時と変わってないんだよ……。……だから、無駄な血を流すのはやめようよ……」


 「………………」


 ロジェは明らかに悩んでいる。

 何かに縛られ、戦うことを選んでいる。


 それを理解した翔英は、本気でロジェとの和解を果たすべく、言葉で説得しようとする。


 「…………ダメだ……!!!」


 「……!! 何がダメなんだよ……!! 俺はお前と……友達になりたいんだ……!!! 過去なんて知るか……!!!」


 「…………友達……だって……?」


 今度は翔英の会心の口撃が決まった。


 戦闘中において耳にするはずがない単語を向けられ、思わず混乱するロジェ。

 その言葉は、確かに固めたはずのロジェの決意を溶かし、小さな穴を開けた。


 「そうだよ……!! 人間とか魔物とか気にしない……!! 大事なのは中身だ……!!! 俺はお前と話して、中身を知って、友達になりたいって思った……!!! 俺も本気だ……!!!」


 「………………いや、違う……。違う……!!!」


 「……ロジェ……」


 「ダメなんだよ!! 僕たちが友達になっちゃ!! 許さないんだよ!! 世界が!!!」


 ぶつけ合う思い。

 そして、背負うもの。

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