第三百一話 『過去からの決闘』
あの邂逅から数ヵ月。
因縁深き両者、相まみえる。
「……君だったのか。ショウエイ……。……久しぶりだね」
レウラが倒され、誰かにワープを奪われた事は予想がついていた。
だが、まさかの人物。
彼が、レウラを倒すほどに強く成長していたとは。
でも、再会できたことに喜びを感じている自分もいる。
翔英とはもう一度会いたいと思っていたから。
「……そりゃ、ここは魔物の家だもんな。お前が出て来るのも当たり前か。……久しぶりだな。ロジェ」
ちゃんと挨拶を返す翔英。
翔英にとっても、ロジェと再会できたのは悪い事ではない。
ロジェとの出会いは、翔英に戦う理由を考えるようにし、大層な目標を与えることになった重要なものだ。
また、彼の顔を見たいと思っていた。
それにロジェならば、ミネカについての情報を知っているかもしれない。
今度こそ、ミネカの元へ近づかなくては。
「……何しに来たのかな、ショウエイ。わざわざこんなところにまで。……聖鳳軍として、僕たちを狩りに来た、ってところ?」
「……いや、違うな。別に戦いを仕掛けに来たってわけじゃねえ」
「……確かに、向こうに君を見た魔物がいたね。彼らは手を出されていなかった。……じゃあ、何のために?」
「……ミネカを、助けるためだ」
「……ミネカ……? ……ミネカ・ベルギアか……? 彼女を助けるためって……どういうこと……?」
ロジェを含めた他の魔物達は、ミネカの現状を把握していない。
「ミネカを助けに来た」って言われても、なんの事だか分からない。
「……そうか、ミネカのことは知らないか……。……邪魔したな、ロジェ。さっきも言った通り、お前と戦う気はないんだ。……色々聞きたいこともあるけど、俺には時間がない。……じゃあ」
ロジェはミネカを知らない。
それが分かった翔英は、次の探索に向かおうとする。
ロジェクラスの魔物でもミネカのことを知らないことに、がっくりと肩を落としながら。
「…………待て、ショウエ……」
「あっ、そうだ……。ロジェ、もう一つ聞かせてくれ」
「え……?」
引き留めようとしたロジェ。
言い終わる前に立ち止まる翔英。
魔物にミネカの情報を尋ねたのは初めてなので、もう一つ聞くのを忘れてしまっていた。
いや、その名前を口にすることすら、脳が拒んでいたのかもしれない。
「……ジャーザンスって野郎を知ってるか?」
「……知ってるけど」
「!!!」
聞いて置いてよかった。
やっと、手掛かりだ。
「そいつは今どこにいる!! 頼むロジェ!! 知ってるなら教えてくれ!!!」
勢いよく食い付く翔英。
何としても、情報を得なければいけない。
「……なぜだ? なぜジャーザンスの居場所なんて聞く? ……まさか、そのミネカ・ベルギアの件と、関係があるのかな……?」
「そうだ……!!」
「……!! そうなの……?」
思えばもう何年もジャーザンスと会っていないロジェ。
ジャーザンスが普段から色々企んでいることや、数ヵ月前にジャーザンスの塔が崩壊していたことは、周りから耳にしていたが、ミネカの件に関しては、特に彼に関心がないので全く知らなかった。
「……今、ミネカは、ジャーザンスに乗っとられちまってる……」
言葉にするだけで吐き気がするような事実。
翔英は頭を痛めながら、ロジェにミネカの現状の説明をする。
「!!! ミネカ・ベルギアが……ジャーザンスに……!?」
目をガン開いて驚いているロジェ。
衝撃的すぎる情報だ。
どういう経緯でそんなことになったのか、逆に質問したいくらいだ。
「……ああ。この間、俺たちとジャーザンスが戦った日にな……」
「……そういえば、聖鳳軍とジャーザンスが戦ったって話を聞いたね……。その時か。……どうせ生きてるだろうって思ってたけど、まさか潜伏先がミネカ・ベルギアとはね」
ジャーザンス軍が壊滅したことも聞いていた。
だが、あのジャーザンスが倒されるなんて事はないと分かっている。
今頃何処かに逃亡していると思っていたが。
「……だから、俺はどうしても、ミネカを助けなきゃいけないんだ……。あいつのことを少しでも知っているなら……!! なんでもいい……!! 教えてくれ、ロジェ……!!!」
頭を下げながら、真剣な眼差しでロジェを揺らす翔英。
ロジェは彼の様子、そして知らなかった衝撃の事実に眉をひそめながら、何と答えるかを考える。
「…………残念だけど、ジャーザンスの今いる場所は知らない」
「……!! そうか……」
ロジェが言ったことは紛れもない事実だ。
ジャーザンスの居場所を知っているのは、もはやジャーザンス本人しかない。
「……分かったよ。じゃあ、今度こそ行くわ。……質問答えてくれて、ありがとな、ロジェ」
結局、ロジェからも殆ど情報は得られなかったが、どうせ立ち止まる訳にはいかない。
大広間を調べ終わった翔英は、次ヘと進もうとする。
――――が、
「……いや、ちょっと待ってくれ。ショウエイ」
「……? なんだよ」
ロジェに呼び止められた。
「……君は、レウラを倒して、ここに来れたんだよね?」
「……そうだ。あいつが持ってた、あの時お前らが使ってた奴を使ってな」
「……レウラを……殺したの……?」
「……結果的にはそうなるな。別に殺したかった訳じゃないが、その事実を否定するつもりはない。こっちも、生きなきゃいけないんでな」
「…………うん、やっぱり、そうだよね」
なぜ人間と魔物は戦っているのか。
生まれてからずっと、ロジェは考えていた。
自身が生まれた時には既に、魔物は人間と相反する存在となっていた。
そういうものだとは分かってはいたが、「何故なのか」は分からなかった。
ただ、互いに憎みあっていた。
あの日翔英と出会い、魔物に憎しみだけを抱いているのではない人間もいるのだと初めて知った。
彼のような人間が増えれば、「戦いを避ける」という選択肢を選べるようになるのではないかとも思った。
だが、やはりそれはくだらない理想だったようだ。
デゼスポやスリーラをはじめ、親しかった魔物達は皆この世から消え去った。
翔英もまた、レウラという友人を殺した。
「……ショウエイ。君と決着をつける時が来たようだね。……急いでるところ申し訳ないけど君は、僕が倒させてもらう」
「!? なんだと……!?」
運命は戦えと言っている。
この人間と。




