第二百九十八話 『決戦の地ヘ』
「……では、誰が行く。おそらく使えるのは一人一つずつじゃろう」
手元にあるのは、ラスドラーゴ、ダクライズ、ハビニック、ミワルナの四つ。
レウラとマビュートが持っていた物は、翔英とヒナノが既に使用済みだ。
雑兵達が持っていなかったのは、単純に量産が難しいということ。
そして、彼らが独断で逃亡することを避けるためだ。
「……ちょっと待ち。マーノさんは何処におんの?」
「……マーノさん? こっちに戻ってるんですか?」
「うん。ボクとバー婆は、マーノさんに助けてもらっからな」
この場にマーノはいない。
メイティーの能力が原因で遥か遠くに飛ばされていることは、誰も知らない。
「町の中にはいませんでしたよ。マーノさん」
「…………そうか……」
「マーノのことは、後で考えるとしよう。先に、こいつについての話をせねば」
「…………了解」
彼の行方が気になる様子のルナを静めるヴァナベール。
敵も全滅しているこの状況。
ヴァナベールや他の皆は、マーノは無事だと判断する。
「――――では、四人。行きたい者は、手を挙げてくれ。…………お?」
手を挙げたのは、バール・バーランドと、リュノン・アーリーだ。
参戦が遅れたこともあり、メンバーの中では比較的ダメージが少ないバール。
死に場所は戦場と決めている。
誰が相手だろうが、彼女が留まることはない。
そして、リュノン。
疲労は溜まっているものの、彼もまた、殆ど攻撃を受けていない。
ルージェの意思を行動として見せたいという意味もある。
何より、翔英が先に行っているのだ。
自分が行かないわけにはいかない。
「……二人とも。受けとってくれ」
鍵となる玉を二人に渡すヴァナベール。
リュノンは輪を乱さぬように、今すぐにでも壊したい気持ちを抑える。
「一つは、わしが使う。……後一つ、どうする?」
勿論、ヴァナベールも向かうことを決めている。
ルンベのおかげで大分身体も良くなっているし、最古参の自分は行くべきだ。
命を張るのには若者よりも、老兵の方がふさわしいとも考えている。
残り一つ。
候補は、ラフェル、ティローナ、ルナレジェン、そして、ルンベの四人だが――――
「じゃあ、私が……!!」
すぐに手を挙げたのは、ティローナだった。
「!! ティローナさん……!! 貴女は無理ですよ……!!」
集合した中で最も重傷なティローナ。
決戦の地に行くには早すぎることくらい、誰の目にも明らかだ。
この場にいる全員が、彼女の出撃に異を唱える。
「……分かってるよ……。でも私、ヒナノの所に行きたいの……」
「じゃが……その傷では……。……かといって、ルナちゃんとラフェルちゃんも満足に戦える状態ではないが……」
「……なら、俺が行くよ……!! ティローナさんに無理はさせられないし……ソルの分も、俺が戦う……!!!」
四人目はすんなり決まらず。
ティローナの代わりに、ラフェルが出撃を主張する。
「…………いや、ボクが出るわ。ラフェルくんみたいな若い子に背負わせるのは気が引ける」
今度はルナが立候補し始めた。
だが、ルナも含め、三人とも負傷中。
……となれば、
「……私が……私が行きます……!!!」
まだ殆ど戦闘を行っていない。
ピンピンしている唯一の男。
「どうぞどうぞ」みたいな雰囲気になってしまったこの状況。
ルンベ・ランが勢い良く手を挙げた。
「……ルンベちゃん……」
しかし、すぐには承認されない。
そもそも、今回の戦いで戦力として数えていたのは一軍二軍のみ。
結果的にルンベの働きに助けられてはいるが、本来ならば彼は中央都市にはいないはずだ。
残す、最後となる可能性の高いラスボス戦。
彼を連れていくと即答することができない。
「私では力不足なのは重々理解しています……。……ですが、お三方は普通ではない怪我を負っている。ならば、私が行くべきです……!!! こうしてここに居合わせたのも、天が私に命を懸けろと言っているのです……!!!」
勇気を振り絞り訴えるルンベ。
自分一人が行っても意味がない。
そう考えていたが、ヴァナベール達のサポートならばできる。
何より、出発を見届けた彼を、自分も助けに行きたい。
「……うぬ。分かった。最後の一人はルンベちゃんじゃ。皆もそれでいいな」
ルンベがずっと真面目に鍛練を続けていたこと、そして、彼の実直さを知っている一同。
彼の宣言は否定できない。
四人目は、ルンベに決まった。
「……では、行くぞ。ティローナちゃん達は待っておれ。勝利の報告をな」
「……はい…………」
ヴァナベール、リュノン、バール、ルンベの四人。
一斉にワープを解き放ち、中央都市から姿を消した。
「……ティローナさん、大丈夫だよ。行けないのは悔しいけど、今は任せようよ。みんなに」
最年少のラフェル。
暗い表情のティローナを慰める。
人数制限があったのだからしょうがない。
動けるメンバーに任せるべきだ。
「……そうだよね……」
「…………ティローナ、お前は寝ていた方がええ。ヒナノ達が心配な気持ちは分かるが、今のお前は、生きているのも奇跡なレベルや」
「……うん、分かってる」
ルナレジェンの言う通り、歩くのも辛いレベル。
これで良く、手を挙げられたものだ。
「分かった。じゃあ、ごめん。戻ってるね」
病室へ再び帰るティローナ。
ラフェルは「もう少し外にいたい」と答え、ティローナ一人で室内へと姿を消した。
「……じゃ、ボクも行こうかな」
そう言いながら歩き出すルナレジェン。
「何処に?」と、きょとんとした顔でラフェルはルナに聞き返す。
「……マーノさんを探しにや。ボクはあの人に助けられた。町にいないってのはおかしい。ちょっと探してくる。ルンベが代わってくれたのはラッキーだったわ」
「ああ、そうなんだ。気を付けてね、ルナさん」
「ん」
集合していない唯一の男。
マーノ・ジャッロを探しに向かうルナ。
彼女の特殊な力を使えば、時間は掛かれど町の外にいたとしても発見することはできる。
「…………俺、あんまり役に立てなかったな……」
一人になったラフェル。
自分の耳にも届かない程度の声量で、悲しそうにポツリと呟く。
「……頑張って……みんな……!! 絶対、死なないで……!!!」
今度は力強く願いを口にする少年。
最後の戦いに挑む、彼らの無事を祈りながら。




