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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第九章
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第二百七十八話 『武器の魔物』

 話を勝手に切り上げ、再び戦闘態勢に入るレランカ。

 対するハビニックも質問を諦め、腰元から武器を取り出そうとする。


 「行くぜっ!!」


 だがその前に、レランカが突撃を仕掛ける。

 持ち主から奪ったこの武器を、ボディの真ん中丁度に振り下ろす。


 しかし、それもこれまでと同じ様に、ペラッと避けられる。


 「くそっ……!!」


 ただでさえ読めない動きで避けてくるハビニック。 

 それに加え、敵はレランカの狙いを知っている。


 この武器を作った張本人だ。

 何処に仕掛けてくるか、分かりきっている。


 狙う位置が割れている。

 これでは、当たるはずがない。


 「……もう、やるか……」


 この戦いが始まってから受け身であり続けたハビニックが漸く動く。


 というのも、レランカが持っていたあれが気になりすぎて攻撃する気になれなかったのだ。

 だが、疑問は解決しなかったが、とりあえず正体も分かったので、ドスベセスを取り返そうと動き出す。


 「……!! 何ィ……!?」


 腰に刺さっていた武器を取り出した。


 とても長い剣だ。


 「……『ラルゴート』……。……俺が製作した武器の中でも、二番目に傑作の物だ……」


 「来いよ」


 回避に力を置いていたこれまでよりも、攻撃に入る今の方が狙いやすい。

 そう考えるレランカ。


 敵の動きを注視しながら、一発逆転のチャンスを狙う。


 しかし、 


 「……ああ……。……行かせて貰う……」


 「……!!!」


 ハビニックはその場から一歩も動くことなく、長剣をレランカに向けた。

 

 その剣はドリルのように猛回転しながら、レランカに向かって一直線に伸びてきた。

 しかもその速度、目に追えない程凄まじい。


 「……ああっ……!!」


 咄嗟に体を横に動かしたレランカ。

 胸に飛んできていた剣は、左肩に突き刺さった。


 「……上手く避けたか……やるな……」


 「……痛えよ……!! 当たってるよ……!!!」


 「……一撃で終わらせるつもりだったのだ……。……それでは、避けられたのと同じだ……」


 またすぐに戻るハビニックの武器。

 回転しながら手元へと縮んでいく。


 「……ふんっ……!!」


 「……ヤバっ……!!」


 リバウンド。

 更にまた伸びてくる。


 慌てて建物の影に身を投げるレランカ。

 肩からは出血が止まらない。


 「……俺の最高傑作を……返してもらうぞ……!!」


 だが、壁を削り、ラルゴートはレランカの元へ。

 ドスベセスで急所をガードするも、あまりに激しい回転に受け止めきれない。


 「ごおあっ……!!!」


 ハビニックの刃は、レランカの胸を削りながら突き刺さった。


 「……勝負……ありだな……」


 確かな手応えを感じるハビニック。

 伸ばした剣を元に戻し、倒れ込むレランカの元へと歩き出す。


 「……ふん……」


 ハビニックの予想通り、レランカは地面に這いつくばっている。

 まだ息は有るようだが、動きを見せようとはしない。


 近くにドスベセスが転がっているのを確認するハビニック。

 先程の一撃で手放していたようだ。


 ハビニックはドスベセスを手に取ると、気持ちだけ笑って見せた。


 「……この輝き……懐かしいものだ……」


 銀色に輝く剣を手に嬉しそうにするハビニック。

 もう返ってこないと諦めていたこいつに再び会えたことに少しばかり感激する。


 「……よし……。……お前へのトドメは、こいつで刺してやろう……」


 そして、ラルゴートを再び仕舞い、手に取ったドスベセスを装備した。


 「……何処を斬ろうか……? ……一撃で仕留めたいな……腹にしよう……」


 ボソボソ呟くハビニックに反応するレランカ。

 彼に目を向け、何とか立ち上がり、大方の状況を把握する。


 「……ドスベセス……。……そいつでアタシを殺ろうってか」


 「……ああ……」


 「……アタシのは当たらなかった。……だが、それはてめえも同じことだろ……?」


 「……それは、『狙いが分かっている』ということを言っているのか……? ……それなら愚かなことだ……。……今のお前に避けられるとは思えない」


 「いや、そうか? アタシはまだまだ動けるぜ?」


 精一杯。

 敵に悟られないように、軽くジャンプして健康をアピールするレランカ。


 それに、あれを上手く当てる難しさはよく知っている。

 ドスベセスを手に入れて以来、使いこなすための鍛練を長年頑張ってきたレランカはよく知っている。


 自分のターンでもそうだったが、能力が割れている相手に食らわせるのはほとんど不可能に近い。


 「……無駄なことだ……」


 ハビニックが狙いを定めた。

 狙うは、レランカのど真ん中。


 「ちぃっ……!!!」


 狙いを一つズラそうとステップを踏むレランカ。

 

 レランカ意地の回避。

 確かに、中心への一撃は避けた。


 ――――だが、


 「ぐあっ……!!!」


 右胸を斬り付けられた。


 あくまでもこれは武器である。

 真ん中とか関係なく、斬られれば普通にダメージとなる。

 巨大な魔物の力で振り下ろされれば尚更だ。


 レランカ自身が火力不足のために、特殊能力を優先して使っていたこともあり、即死攻撃のみに重点を置いてしまった。


 「……終わりだ……」


 斬られた痛みで止まるレランカの足。

 狙い澄ましたハビニックの一撃がレランカを捉えた。


 「ぐおあっ……!!!」


 胸に入った。

 堪らず膝を着くレランカ。


 上半身は――――まだ繋がっている。


 「……少しズレたか……」


 「……痛ぇ……。……くそがよ……」


 四十年ぶりに握ったこともあり、一撃必殺を失敗したハビニック。

 気を取り直し、もう一度中心に狙いを定める。


 「……だが、これで終わりだ……。……今度こそ外さん……!!」


 「……ちぃ……!! ……なっ……!! なんだこれ……!!?」


 一度は死を覚悟したレランカの頭に、妙な映像が流れ込んできた。


 地面に触れている掌から映像が流れて来ている。 

 これは「記憶魔法」による物と同じだが、レランカはそれを発動していない。

 無意識下によるものだ。 

   

 すぐに映像は見えなくなった。 

 だが、レランカは笑って見せた。


 「……どうした……? ……最後は笑顔で死のうと……? ……殊勝なことだ……」


 「……いや、違えよ。……アタシ、まだ死なねえみたいだぜ。……多分な」


 「……遺言はそれで良いようだな……!!」


 振り下ろしたハビニック。

 その背後から、走ってきた男にグーで殴られ吹き飛ばされる。


 「ほらな? 言ったろ?」


 レランカはニヤニヤしながら、また立ち上がった。

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