↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第九章
PR
278/285

第二百七十七話 『ドスベセス』

 中央都市、西門。


 「……こいつ……」


 ハビニックと対峙するレランカ。

 敵の動きへのイライラを募らせている。


 その理由は――――当たらないから。


 レランカ武器、『ドスベセス』


 物体、あるいは生物の丁度真ん中を斬りつけることで、その力を発揮する。


 物体の場合は、『分裂』

 

 翔英もその力に驚いていたが、斬ることが可能な物に限り、永遠に物を増やすことができる。

 もちろん、液体や一撃での切断が不可能な物はできないが。


 生物の場合は、『二分』


 手、足、体などを問わず、一寸の狂いもなく真ん中を斬ることで、真っ二つにすることが可能である。

 ジャーザンスの塔においてのワンダフィンとの戦闘では、この特異な能力を用いて一発逆転に成功した。

 

 今も狙い続けている。


 レランカはさっさとケリをつけるべく、ハビニックのど真ん中を切り着けようとしているのだが。

 一発も、カスリもしない。


 「(……義手になったからか……? いや違え……。こいつの妙な動きが、アタシの狙いを狂わせているんだ……)」


 ワンダフィンとの戦闘において、レランカは片腕を失い義手となっている。

 だが、今はもう十二分に自由に動かせる。

 そこが原因ではない。


 原因は、こいつの魔物とも人間とも言えない、奇妙な動き。

 

 「ちい……!!」


 斬り掛かるレランカ。

 それを風に吹かれる紙切れのような動きで回避するハビニック。

 

 何度斬り付けても空振り。

 気味が悪い程に避けられる。


 「くそっ……!! 何なんだよてめえのその動き……!! 気持ち悪ィな……!!!」


 堪らずスピリチュアルアタックに出るレランカ。

 

 だがハビニックは全く動じない。

 ダクライズやマビュートに毎日のようにいびられているので、こんなのは慣れっこだ。

 

 「……女……。その剣……どこで手に入れた……?」


 急に質問。

 話し掛けてくるとは思わなかったので、キョトンとしているレランカ。


 「…………ちょっと昔な。貰ったんだ」


 「……貰った……? 誰にだ……?」


 「んだよ急に。誰でもいいだろ」


 「……その剣の名は何という……?」


 「質問が多いなてめえ。お前なんかと話してる場合じゃねえんだよ」


 「……『ドスベセス』……というのではないか……?」


 「…………へえ……」


 心底不思議そうに呟くレランカ。

 圧倒的に興味ゼロだったこの怪獣に、多少の興味が湧いてくる。


 「……その顔……どうやらそうらしいな……」


 それはハビニックも同様だった。

 予想が確証に代わったことで、この人間の女性から聞き出すことが多々できる。


 「……なんでこいつの名を知ってんだ?」


 「……それこそこちらの質問だ……と、言いたいところだが……。……埒が明かないので、先に答えてやろう……」


 一旦戦闘中断。

 互いに持った疑問を解消すべく、質問タイムに入っていく。


 「――――その剣、ドスベセスを制作したのは、この俺だからだ」


 「な……!! ……なるほどな……。そりゃ、知ってて当然って訳だ。……つーかこれ、作られたモンだったのか……。そりゃ、武器なんだから当たりめェだけどよ……」


 右手に持った愛剣を見ながら答えるレランカ。

 

 武器なのは分かっているが、あまりにも人知を超えた能力を備えているこの剣。

 この魔物の鍛冶技術に、不本意ながらも感服する。


 そして、この剣に何度も助けられていることもあり、少し複雑な気持ちをこいつに抱いた。


 「――――では、次は俺の質問に答えてもらおう……。……何故、お前がそれを持っている……? ……いや、質問を変えよう……。……答えは既に分かっている……」


 「あ? 何? 分かってるって?」


 「……貰ったなどと言っているが……盗んだのだろう……? ……二十年ほど前に……」


 「……何だよ、知ってんじゃん」


 「……俺が知りたいのは、何故お前が『あの場所』を知り、『それ』を盗んだのか……ということだ。……そいつの価値を人間が知っているのは不可解だ……」


 「……なるほどな。ま、製作者様となっちゃあ、教えねえわけにはいかねえか」


 レランカは昔の事を思い出す。

 ハビニックは集中して、彼女の言葉に耳を傾ける。


 「――――ありゃ、まだアタシがこんなガキだった時だ。昔っからアタシは冒険が好きでよ。毎日みてえに遠くまで出かけてたんだ。その度に、親父や兄貴に怒られてよ。喧嘩もしたなあ」


 「……そんなことを聞いているのではない……」


 「分あってるよ。少し待て。今言うから。――――でだ。一時期、地下を探検するのにハマっててな。 そん時に見つけたのよ……!! 魔物の武器庫みたいなとこを……!!」


 「……ちょっと待て……。……お前……俺の質問の意味を……」


 「――――でさ、そこに見張りみてえな魔物が二体いたんだけどよ、そいつらが何とも弱え奴で、ボコボコにしてやったのよ。で、そん中で一番面白そうだったこいつを頂いたって訳だ。他にも持って帰ろうと思ったけど、アタシ一人だったからさ。次に行った時には、もぬけの殻になっちまってたし」


 「……いや……だから『何故』かと……」


 「まあでも、あん時こいつを頂いて本当に良かったぜ。おかげで、全然仕事しなくても大丈夫だし」


 「……仕事はしなきゃダメだろ……」


 「こんなもんでいいか? じゃ、続きを始めようぜ」


 「……いや……何にも分かってないぞ……。……全く話が進んでいない……」


 ハビニックのボソボソが、気持ちよくお喋りするレランカの耳に入らない。

 結局ハビニックは理由を分からぬままだった。


 レランカが地下に封印していたハビニックの武器庫を発見できたのは、彼女が持っている固有魔法、『記憶魔法』によるものである。


 見張りが通った跡を見つけ、それを追ってきたのだ。

 レランカは出かける際、常にこの魔法を使いながら旅していた。


 ドスベセスに目を付けたのもそう。

 一応置いてあった武器に宿る記憶は覗いたが、一番面白いと思ったこれを盗っていった。

 斬った物が分裂したり二分したり、少女レランカの心はワクワクにときめいた。


 ハビニックは魔物屈指の鍛冶職人。

 数々の特殊な武器を作ってきた。


 ドスベセスは、長年の月日を犠牲にして作った、彼の最高傑作だ。

 元は、増えていく部下への食物をどうにかしたいという思いで作った物だが。


 「――――ま、今お前に少し感謝してるが、それとこれとは話が別だ。こいつは、アタシが良いように使ってやるから。町の奴らを殺そうとするてめえみたいな奴に使われるよりは、よっぽどいいだろ」


 「……くそ……話を聞かないやつめ……」


 おしゃべりタイム、終了。

 再び両者、向かい合う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。