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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第九章
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第二百七十五話 『お散歩』

 ティローナ、ソル、ラフェルとマビュートの死闘。

 その一部始終を、離れた場所から隠れ見ている者がいた。


 眠そうな目を擦りながら、任務のためにボーッと様子を見ていた少女の魔物。


 名を、メイティー。


 「あの人たち、ホントにマビュートを倒しちゃったー。ダクライズもやられちゃったみたいだしー、やっぱり人間もめちゃくちゃ強いねー」


 五将悪の一人、ミワルナの副官を努める人物だ。


 彼女は戦闘開始直後から、数だけは多い配下たちと共に中央都市へとやって来た。

 道中、集結した聖鳳軍の面々に幾度となく遭遇するも、部下たちを盾にして逃げることで、ここまで何とか生き延びてきた。


 しかし、もう側に部下は一人もいない。

 今誰かに見つかったら、逃げ切れないかもしれない。


 「じゃあそろそろ頃合いだよねー。連絡するとしますかー」


 周囲を警戒しながら、電波を飛ばそうとするメイティー。

 そもそも彼女は、主からある指令を受けてこの町に飛んできていた。

 

 「…………あっ、ミワルナ様ー?」


 「メイティー。そうよ、ミワルナよ。…………って、当たり前でしょ!!? あたしにしか繋がらないんだから!!!」


 メイティーはミワルナといつでもどこでも連絡を取ることができる。

 彼女たち二人だけが使うことのできる能力だ。


 「ミワルナ様-。そろそろ来ても良さそうですよー。ダクライズもマビュートも死にましたし-」


 「ええっ!!? あのババア死んだの!!? ……あいつを倒せる人間がいるなんて……」


 「でもー。聖鳳軍の人たちもほとんど重傷ですー。今行けば、ミワルナ様でも勝てますよー」


 「そう? それならよかったわ。…………はあ!?? 何言ってんのよ!!? あたしが人間如きに負けるわけないじゃない!!!」


 「じゃー。連絡しましたのでー。お待ちしてますねー」


 「ちょっ……!! メイティー!!! …………あのガキ……。……まあ、いいわ」


 メイティーからの連絡を受けたミワルナ。

 ポケットから、予めラスドラーゴに渡されていたスペアを取り出した。


 そして、それを砕き、本来の仕事場である中央都市へと転送する。


 ミワルナがメイティーに指示していたのは、「両軍、いい感じにボロボロになってきたら呼んでくれ」というもの。

 ロジェにも話した通り、気に入らない奴を楽に殺したいからである。


 マビュートのことも、人間に戦って削ってもらってから殺そうと思っていた。

 まさかそのまま敗北するとは思っていなかったが。


 「…………着いた。ここが中央都市か。嫌な感じだわ!!!!」


 ワープされたミワルナ。

 人間の町並みを見渡し、早々に大声でキレ出す。


 近くには、誰もいない。


 「…………あっ、メイティー? こっち着いたわよ。メイティー今どこ?」


 「ミワルナ様ー。ここですよー」


 「…………え? あっ……!! 何してんの!?」


 少し歩いた所にあった民家。

 その犬小屋の中で、副官を発見したミワルナ。


 ミワルナが来てもなお、メイティーはそこから出ようとしない。


 「早く出ろよてめえ!! やる気あんのかよ!?」


 「あるわけないじゃないですかー。でもここにいれば絶対安全ですよー」


 「うっっっさい!!! いいから出ろや!!」


 「はいはーい」


 かなり小柄なメイティー。

 スペース的にも丁度よかった様だ。


 「……じゃ、カスどもを殺しにいくわよ。メイティー」


 「その前にいいですかー? ミワルナ様ー」


 「……何?」


 「私帰ってもいいですかー? 死にたくないんですけどー?」


 「…………いいわよ、帰っても」


 「ええー? 本当ですかー? やったー」


 「その代わり、帰ったら殺すから」


 「ひー」


 張り切って町を歩くミワルナ。

 その後ろをメイティーがトボトボと面倒くさそうに追従する。


 「……聞こえるわね。ダクライズとマビュートが死んだのよね。……ってことは、この音はラスドラーゴとあのキモいのか」


 「そうみたいですねー」


 「ダクライズとマビュートと戦った人間はどこ? そいつら殺しに行きたいんだけど」


 「知りませんー」


 「……ま、まだ町のどっかにいるだろうし、探そっか。ラスドラーゴたちのとこへは、今のが終わったら行こ」


 「了解ですー。…………いてー。どうしましたー? ミワルナ様ー」


 突如散歩を中断し立ち止まるミワルナ。

 上を見ながら歩いていたメイティーは思わずミワルナの背中に顔をぶつける。


 そのミワルナは、目をピキピキさせながら家を見つめていた。


 「……随分といい家ね……。……そう言えば、人間を見ないわね。この家とかに住んでる人間はどこにいるの?」


 「あー。私たちが来てすぐどっかに避難しましたよー。多分もう町には残ってないと思いますー」


 「……そういうことね。……ってことは、この町には戦える奴しか残ってないってわけだ。…………ま、そりゃそうか。探しに行くのも面倒くさいわね」


 「ミワルナ様ー。二人を倒した人を探すんじゃないんですかー?」


 「……それはそうだけど、ちょっとその前にさ。この辺の家、ぶっ壊してからにするわ。帰ってきて家がないって、面白いでしょ?」


 「はー」


 「手始めに、こいつからぁ!!!!」


 ミワルナが描いた軌道。

 空間を削りながら、家を跡形もなく消していく。


 「はっは!!! 楽しいぃ!!!!」


 住宅街。

 並んでいる家を順番に順番に消滅させていくミワルナ。

 その表情は、物事を心から楽しんでいる無邪気な子供のよう。


 メイティーはじっとミワルナの背中を見つめている。

 が、このままでは町の家全てを壊しかねないので、


 「ミワルナ様ー。隠れる場所失くなっちゃいますよー。それにー。こんなことしてたら、向こうから誰か来ちゃいますよー」


 一応注意の言葉を添える。


 「それがなに!!? 隠れる場所なんて必要ないし、別に来たって返り討ちにしてやるわ!! それに例の奴がこの辺で休んでるかもしれないし!! 出で来たら超ラッキー!!!!」


 「そうですかー。…………あー」


 住宅破壊に夢中のミワルナに迫る人影を確認したメイティー。

 ミワルナは全く気付いていない。

 

 教えてあげようと思ったが、「やっぱりいっか」と黙ってることにする。


 「お前!!! やめろ!!!」


 「!!?」


 ミワルナを蹴っ飛ばす現れた男。

 短剣を携え、二体の魔物に敵意を向ける。


 「…………こんなに家をめちゃめちゃにしやがって……。許さねえぞ!!」


 颯爽と駆け付けたのは、リュノン・アーリー。

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