第二百六十三話 『手掛かり』
「――――ショウエイさんっ……!! 先に私が行きますっ!!」
「わかった!!」
横並びの状態から、一気に敵の元へと突っ込むルンベ。
迎え撃つ敵の攻撃を躱し、逆に膝蹴りをお見舞いする。
あの日から階級こそ変わっていないが、その攻撃には更に磨きが掛かっているのが分かる。
それに、数だけは多いミワルナ軍だ。
ルンベ一人でも普通に勝てる敵だが、
「おらっ……!!」
翔英は割り込んだ。
戦闘時間を長引かせると、レウラの時みたいに敵を呼んでしまうと思ってのことだ。
ルンベに手一杯な敵の後ろから、復活の斬撃を喰らわせる。
「ぎえあああっ!!」
その一撃を持って、敵は死亡。
ニ対一とはいえ、あっという間の勝利だ。
「流石ですね、ショウエイさん!!」
初めて会ったあの時からの成長。
元々聞いていたので知ってはいたが、今の動きを見たことで改めて実感するルンベ。
「ありがとう。でも、今の奴は弱かったけど、ここでまた強い奴らが来たら大変だ。さっきも言った通り、他の皆のところに行こう」
「わかりました」
レウラと戦う前に、翔英は本部の人に「一軍二軍は戦っている」と声を掛けられている。
仲間がすぐ近くで戦っているかもしれない。
自分の力では助けにならない?
そう思わないわけでもない。
何せ現在戦っている仲間達は、全員が先輩であり格上。
そんな人たちが助けを求めるような相手に、自分が役に立つとは限らないだろう。
でも、それでも、「行かない」という選択肢は翔英にはない。
戦力として数えられている。
何もしないではいられない。
それに、レウラとの戦いではまた聞きそびれてしまったが、特に上位の魔物には元々接触したいと考えていた。
――――ミネカのことを聞くために。
もしかしたら、何かを知っているかもしれない。
逆に考えてみれば、今のこの戦いはミネカに関する手がかりを掴むことのできる、またとないチャンスだと捉えることもできる。
だから――――行かなくては。
ルンベと肩を並べながら、次の戦場に向かい始める翔英。
……だが、その歩みは、
「あっ、少し待ってくださいショウエイさん……」
いきなりストップした。
「ん? どうした?」
「……何でしょう? これは?」
何か光り物を発見し、それを拾うルンベ。
この場所は、意識を奪われた翔英が最後にレウラと戦った場所だ。
「……ビー玉……? ……みたいだけど、どっかで見たことある気が……」
ルンベが拾った物は、紫に輝く小さな丸い何か。
翔英はこれが頭のどこかに引っ掛かる。
「……何か目立っていたのでつい拾ってしまいましたが、すいません。少し変わってる、ただの石のようですね」
先を急ぐつもりのルンベは、また元の場所に転がそうとする。
が、
「ちょっと待った!! ルンベ!!」
「はい?」
「ちょっとそれ、一回貸して!!」
「……はあ……」
その前に、翔英が止めた。
翔英は玉をまじまじと見つめ、忌まわしき苦い日の記憶を呼び覚ます。
「……こいつは……!!」
やはり同じだ。
ロジェが使用していた物と。
あの日、ミネカと共にロジェと対峙した翔英は、こんな見た目の紫の玉の力で、別の場所へと転送されてしまった。
おそらく、魔物が移動に用いていると思われる道具。
「…………そうか……!!」
更に翔英は考察を進める。
この場所。
これは、レウラが落とした物に違いない。
レウラが移動するために、所持していたのだきっと。
――――間違いない。
これはあれだ。
「……どうしたんですか? ショウエイさん。この石について、何か知っているんですか?」
一人で理解を進める翔英に尋ねるルンベ。
翔英はルンベの目を見ると、玉をかざしながら説明を始める。
「ルンベ……! こいつは多分、魔物が移動に使ってる奴だ……!! これも多分だけど……あいつらはこれを使ってこの町にいきなり現れたんだと思う……!!」
「なんですって!?」
翔英の予想、ほぼ正解。
中央都市には、術の持ち主であるファンドルが直接送っている。
だが、そんなことは些細なことだ。
話を進めるのに何の問題もない。
「……前に、こいつを使って魔物がワープしたのを見たことがある……!! さっきまで俺と戦ってたレウラって奴が落としたんだ……!! あいつらは死んだら消えるから、ポケットからどっかから……!!」
「そうだったんですか!! ……ん? レウラって確か、リュノンさんが言ってた奴ですよね……。倒したんですか!?」
「……まあ……ね……。倒したかって言われたら微妙なとこだけど」
「なるほど!! あの負傷はそれで……!! しかし、あのレウラを倒すとは流石ショウエイさんです……!!」
「いや、今はもうそれはいいよ。それより、もしかしたらこいつで、魔物の本拠地まで飛べるかもしれない……!!」
「……確かに……。確かにそうですね……!! それに、レウラが持っていたということは、各地にいる他の魔物を持っているかもしれません……!!」
「……おお、そういえばそうかも」
「……これは……!! かなり有力な情報ですよ……!! ショウエイさん……!! 皆にも知らせましょう……!!」
ルンベの予想は正しい。
中央都市へと侵入してきた魔凰軍の面々は、帰り用にファンドルから足を渡されている。
侵入時点で所持していたのは、六名。
うち二名は、既に死亡している。
この玉は、ファンドルが死亡するか誰かが使用しない限り消滅することはない。
しかし、ラスドラーゴは敗北して奪われる可能性を考慮していなかった。
そもそも負ける可能性が低いと見ていた。
味方の勝利を前提としていた故の穴だ。
「……確かに、そうだな、ルンベ」
「では行きましょう……!! ショウエイさん……!! …………?」
貴重な情報とアイテムを手にしたルンベ。
先よりもやる気を上昇させ、仲間達の元へ向かおうとするが、翔英は立ち止まっていた。
「どうしたんですか……? ショウエイさん」
「……ごめんルンベ。……ルンベは、皆にこのことを伝えてくれ」
「……『伝えてくれ』って……どういうことですか……? ショウエイさんは……?」
「……俺は、こいつを使ってみる……」
レウラとの戦いでの報酬。
ミネカへの大きな手掛かりになるかもしれない。
一刻も早くあの子の顔が見たい翔英は一人で、閉ざされた扉を開こうとしていた。




