第二百四十三話 『久しぶり』
各地で魔物と人間が交戦する中、魔凰軍の本部では――――
ラスドラーゴたちが旅立った後、彼に続かない者たちもいた。
ファンドルは戦闘タイプではないし、貴重な移動係なので安全な場所で待機。
ロジェもまた、実家で待機している。
「あまり気が乗らない」とラスドラーゴに進言したところ、待機の許可を頂いたのだ。
コネということもあるが、ロジェの強さはメンタルによるムラが大きいため、わざわざ聖鳳軍の本拠地に連れていくのは危険だと判断したからだ。
だからロジェは本部に居残り。
そしてもう一人、上位陣の中で本部から出ていない者がいた。
ミワルナだ。
彼女に至っては、強制出動の命令が下っていた。
ラスドラーゴたちが飛んだ後、その後を追って中央都市へと赴くはずだった。
少し前までは、完全に行く素振りも見せていた。
だが、ここにいる。
当然ラスドラーゴは、ミワルナが前線に出ていないことを知らない。
「……ねえミワルナ。なんで向こうに行かなかったの?」
魔王の間に残っているロジェと去ろうとするミワルナ。
その前に、ロジェが彼女に声を掛ける。
「行くわよ。後でね。今はまだ行かないわ」
「……今は?」
「そ。もっと時間が経ってから行くのよ。今すぐ行っても、こっちも向こうも元気でしょ? お互い疲れたり死んだりしてから、私は向かうの。……だって!!! 楽に殺したいからねえ!!!! あのクソ女も、聖鳳軍のクソどもも!!!!」
「……なるほどね……」
「頃合いになったら、メイティーが呼んでくれるわ」
「メイティーか……。大丈夫? その前にあの娘やられちゃうんじゃない? あまり強くなさそうだし」
「そうねえ。確かにあいつはそんなに強くはないわ。でも、『やられる』ってことはないはずよ。メイティー、痛い目に遭うのが一番嫌いだからねえ!!!!」
ミワルナ軍。
魔鳳軍の中で最も数だけは多いミワルナの私兵団。
その指揮官及び、ミワルナの副官を務めているのが、『メイティー』だ。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「(――――どっちへ行くか……!? ……こっちだ…!!)」
そして、中央都市の中央。
ショウエイ・キスギ。
何体か敵を倒しながら進んできた彼。
敵の声がする方へ、止まることなく前進していく。
仲間には合流できていない。
きっと他のみんなも、どこかで戦っているのだろう。
「(……いた……っ!!)」
また町に潜む魔物を発見した。
二人だ。
でっかいワニの魔物と、眠そうな目をした小さな子供のような魔物。
二人は話し込んでいる様で、特に動きを見せていない。
対話をする暇はない。
今、この町に侵入している時点で人々に危害をもたらそうとしているのは明白だ。
翔英は背後から斬り掛かった。
だが、
「なに!!?」
ノールックで避けられた。
バレていたのか。
「ちょっとー。話してる途中なんだけどー。勘弁してよー」
少女の方の魔物が極めてダルそうに口を開く。
感情がこもっていない。まさに棒読みだ。
「(二体一か……!! 今ので一人倒したかったけど……!!)」
辺りには人も魔物も見えない。
二体相手は分が悪い。
「メイティー様。どうしますか? この男」
ワニの方が喋った。
そのメイティーは少し首を傾げながら返答する。
「んー。向かってきたってことはー、上位の人の可能性が高いねー。でもそうじゃないかもしれないー。ワニックスー。ちょっと戦ってみてー」
「了解しました!!」
「もし強かったらー、私は逃げるからー。よろしくー。そうでもなかったらー、一緒に倒そうー」
「はいです!!」
ワニが前に出た。
メイティーは彼に後ろに立ちっぱなし。
「(先にあいつが出るのか……!? だったら……!! 好都合……!!)
会話は聞こえなかったが、ワニを見た翔英は笑った。
前衛後衛で別れている。
警戒しながら速攻で仕留めれば、なんとかなる。
剣を構える翔英に、ワニが勢いよく向かってきた。
だが――――遅い。
攻撃を避けながらの一撃。
ワニの首元に決まり、その勢いのまま地面に倒れる。
さらにもう一撃、ワニの腹に剣を突き刺した。
「(よしっ……!! あいつは……!! …………なに……!?))
メイティーに意識を向けるが、彼女の姿はそこにはない。
ワニに目を向けた数秒で、いなくなっている。
「(しまった……!! こいつは囮か……!! あいつはどこに……!?)」
慌てて辺りに警戒を敷く翔英。
だが、時間が経っても彼女は出てこない。
「(……!? どういうことだ……!? 隠れてんのか……!? あいつは……!!)」
まさか一瞬で逃亡したなんて思わないだろう。
翔英はあらゆる方向からの攻撃を疑い、警戒を怠らない。
だが、その前に、
「ふぅん……!!」
「な……!! こっちが来たか……!!」
起き上がってきたワニの方が殴り掛かってきた。
だが、不意打ちでも翔英には当たらない。
もう一発、完璧にカウンターを喰らわせた。
「ぐわあああ!!」
もう、同じ過ちはできない。
今こいつを逃がすことで、後々みんなに迷惑が掛かるかもしれない。
話し合いの余地も、全くない。
翔英は敵の命を奪った。
ワニの肉体はすぐに消え去っていく。
「(こいつは倒した……けど……!! もう一人の方は……!! 一体何を考えてる……!!)」
だがまだ戦いは終わっていない。
そう思っている翔英は、剣を構えながらフラフラと歩き回る。
もちろん、全方向へ意識を張り巡らせながら。
「(来ない……。逃げたのか……? あいつ……)」
数分間集中した後、ようやく正解に辿り着く翔英。
一旦剣を下ろし、張り巡らせていた集中を解いた。
「(幸いまだ強敵には出くわしてない……。とりあえず十分な戦果を上げるまでは、敵を探さないと……)」
でもできれば、早く誰かと合流したい。
一呼吸整え、直ぐ様次に向かう翔英。
と思いきや、
「!!? やっぱり来たか!!」
突如民家の死角から刺客が飛び掛かってきた。
「やっぱりあいつは逃げていたんじゃなくこれを狙っていたのか。でも、避けてやったぞ」と自分を褒める翔英。
だが、
「……!? お前は……!!?」
あいつじゃなかった。
仕掛けた来たのは、あいつじゃなかった。
ピンク色のツインテールに小柄な体格。
そして、腕が四本。
だが、翔英にとっては、忘れられない顔だった。
「――――とうとう会えたな。この時を待っておったぞ。……ショウエイ・キスギィ!!!!」
「……レウラ……!!!」




