第二百四十一話 『決戦の刻』
中央都市。
長らく続いていた、平和は置き去りとなる。
「……な……なんだ……!! あいつは……!!」
明朝。
町人の一人が、町の異変に声を挙げた。
穏やかな町には似合わない姿をした生物が侵入してきている。
……しかも、一人ではない。
その影には、さらに異形が隠れている。
「……う……うわあああ!!!」
そして彼らは、人に敵意を向ける。
邪な笑みを浮かべながら、通行人へと襲い掛かった。
「……!! あ……あなたは……」
「大丈夫ですか!? 大丈夫なら逃げて下さい!!!」
「……あ、ありがとうございます……!!」
通行人は助かった。
駆け付けた青年の手によって。
青年は町の人の姿を見送ると、目の前の魔物へと剣を向ける。
「――――どうなってるんだ……。町ん中に入ってくるなんて……!!」
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町の中心、聖鳳軍本部。
「――――緊急事態です!! ヴァナベールさん!!」
「分かっとる!! わしもすぐに出る!! お主は町にいる聖鳳軍に伝えてくれ!! 一軍二軍は侵入してきた魔物を迎え撃つ!! 三軍以下は人々の避難をさせるんじゃ!!」
「了解しました!!」
「町にいないのはおるか!?」
「……任務により、ヒナノ・スエリア、リュノン・アーリー、マーノ・ジャッロ、アルシル・モアノールの四名は町の外に出ています……!!」
「……ヒナノちゃんがおらんのか……!! ……避難を完了させたら、そやつらにも救援を出しておいてくれ……!!」
「はい……!!!」
町中から魔物の気配。
今や、人間の数よりも多いかもしれない。
ヴァナベールはそんな状況を打開すべく、窓から飛び出して行った。
ヴァナベールと話していたのは、三軍のサツヤ・グル。
彼もまた、自らの使命を果たすべく動き出す。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――――では、ショウエイ・キスギさん……!! ……お願いします……!!」
町の中心すぐ近くで戦っていた翔英にも、すぐに声が掛かった。
さっきの魔物を倒した後も続々と増援が現れてきていたが、やっと落ち着いたところだ。
「……分かりました……!!」
こいつらが町中にいるらしい。
翔英は課せられた仕事を全うするために、さらに前へと進んでいく。
あの人は、とうとう魔凰軍が総攻撃を仕掛けてきたと言っていた。
他の人たちも、町のどこかで戦っているとも言っていた。
……自分も人間側の戦力として数えられているのだ。
できるだけ、やらなくては。
この町を、あの子が帰ってくるこの場所を護るために。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
魔凰軍本部。
「――――では、そろそろ我々も行こうか」
魔王の間に、彼らの主力が集結していた。
呟いたのは、司令のラスドラーゴ。
「私たち四人は、中央都市アビテルムにある四つの門からそれぞれ入っていく。他は好きなようにやってくれ。――――では、武運を祈る」
ワープゲートを作り出し、ミワルナ軍が暴れ回る戦場と化している中央都市へワープするラスドラーゴ。
ファンドルの案内でそれに続く者もいれば、寝転がったまま動こうとしない者、その場から離れようとする者もいた。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――――ここか……。随分変わったな。まあ、四十年も経てばどんな馬鹿でも成長するか。さて――――」
北門。
現れたのはダクライズ。
とりあえず目立とうと、町を破壊しようとする。
――――が、
「……!! 何だ……!?」
破壊しようとした腕が、同じような化物に捕まれている。
化物、数匹に。
「……こいつら……どこかで見たことが……。……邪魔だあっ!!」
化物たちの粘りも虚しく吹き飛ばされてしまう。
しかし、今度は『人間』の手で止められた。
「ちょっと待った。困るね。町を破壊しちゃ」
拳を剣で受け止めた彼は、巨大な魔物の手を押し返す。
そして、二本の剣をダクライズへと向けた。
オー・ラッセだ。
彼の姿を見たダクライズは凶悪な笑みを見せる。
「……お前、あの時のガキだな……!! 一目で分かったぜ……!!」
「久しぶりだね……ダクライズ……」
「……そうか!! 思い出したぞ!! あの化物どもは、お前のその妙な剣で作り出した奴か!!」
地面に寝転んでいる『鬼』を指差すダクライズ。
オーが町の人々を助けるために、町中にばら撒いていた小鬼たちだ。
「……その通りだよ」
その小鬼たちを消すオー。
この平和な町では極めて無害な鬼しか出せない。
今、戦闘で使うことはできない。
「……それにしても、まさかお前の顔をもう一度見るハメになるとはね……。セイホウさんの手によって封印されていたのに……」
「時間は掛かったがな。我々の時を四十年も止めるとは、腹だしい男よ。――――だが、それも過ぎたこと。今の俺は気分が良いぞ。聖鳳軍の奴らが来てくれた上に、それが『お前』なんだからな!!」
町中、向かい合う強者と強者。
過去から戻って来た巨大な魔物を歴戦の戦士が迎え撃つ。
「…………ということは……まさか……他の奴らも……?」
「ああそうだ。魔王様以外は、今この町に来ているぞ……!!」
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
同時刻、南門。
姿を見せたのは、マビュート。
「……まだ随分人間がいるわね。向こうから誰か来てくれるまで遊ぼうかしら?」
飛ばされて早々、南門から逃げ出そうとしている人が見える。
マビュートは拳を握り締めると、空気の圧を彼らへと飛ばした。
「やめろお!!」
しかし、住民たちの避難を先導していた聖鳳軍四軍の男が庇う。
彼は、静かに崩れ落ちた。
「…………さあ……皆さん……今のうちに……逃げ……」
「逃げて下さい!!」
マビュートと住民の間に、もう一人ついていた四軍の女が立ち塞がる。
その間に、住民たちは先にある避難所へと走る。
「……どうやらあなたも聖鳳軍のようね。でも全然ダメだわ。――――弱すぎる」
「かあっ……!!!」
「ほら、もうお終いじゃない。あなたは何も守れないのよ」
障害物を破壊したマビュート。
すぐに逃げる住民に腕から生えた触手を伸ばす。
二人ともまだ生きてはいるが、全く動くことはできない。
結局こいつの言う通りだと、無力な自分に涙を流した。
「――――そんなことないよ!!」
だが、放った触手はキャッチされた。
道着を来た黒髪の女性に。
「なにっ……!!?」
その女性は触手を引き千切り、マビュートへと投げ返す。
マビュートは憎悪と歓喜を混ぜながら、参上した強者に笑みを見せる。
「大丈夫!! あなたたち二人は護れてる!! あなたたちが護ったのは、今度は私が護るから安心して!!!」
ティローナ・カルダ―ト。
現れたのは、彼女だ。




