↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第九章
PR
242/272

第二百四十一話 『決戦の刻』

 中央都市。

 長らく続いていた、平和は置き去りとなる。

 

 「……な……なんだ……!! あいつは……!!」


 明朝。

 町人の一人が、町の異変に声を挙げた。


 穏やかな町には似合わない姿をした生物が侵入してきている。

 

 ……しかも、一人ではない。

 その影には、さらに異形が隠れている。


 「……う……うわあああ!!!」


 そして彼らは、人に敵意を向ける。

 邪な笑みを浮かべながら、通行人へと襲い掛かった。


 「……!! あ……あなたは……」


 「大丈夫ですか!? 大丈夫なら逃げて下さい!!!」


 「……あ、ありがとうございます……!!」


 通行人は助かった。

 駆け付けた青年の手によって。


 青年は町の人の姿を見送ると、目の前の魔物へと剣を向ける。


 「――――どうなってるんだ……。町ん中に入ってくるなんて……!!」


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 町の中心、聖鳳軍本部。


 「――――緊急事態です!! ヴァナベールさん!!」


 「分かっとる!! わしもすぐに出る!! お主は町にいる聖鳳軍に伝えてくれ!! 一軍二軍は侵入してきた魔物を迎え撃つ!! 三軍以下は人々の避難をさせるんじゃ!!」


 「了解しました!!」


 「町にいないのはおるか!?」


 「……任務により、ヒナノ・スエリア、リュノン・アーリー、マーノ・ジャッロ、アルシル・モアノールの四名は町の外に出ています……!!」


 「……ヒナノちゃんがおらんのか……!! ……避難を完了させたら、そやつらにも救援を出しておいてくれ……!!」


 「はい……!!!」


 町中から魔物の気配。

 今や、人間の数よりも多いかもしれない。


 ヴァナベールはそんな状況を打開すべく、窓から飛び出して行った。


 ヴァナベールと話していたのは、三軍のサツヤ・グル。

 彼もまた、自らの使命を果たすべく動き出す。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 「――――では、ショウエイ・キスギさん……!! ……お願いします……!!」


 町の中心すぐ近くで戦っていた翔英にも、すぐに声が掛かった。

 さっきの魔物を倒した後も続々と増援が現れてきていたが、やっと落ち着いたところだ。


 「……分かりました……!!」


 こいつらが町中にいるらしい。

 翔英は課せられた仕事を全うするために、さらに前へと進んでいく。


 あの人は、とうとう魔凰軍が総攻撃を仕掛けてきたと言っていた。

 他の人たちも、町のどこかで戦っているとも言っていた。


 ……自分も人間側の戦力として数えられているのだ。

 できるだけ、やらなくては。


 この町を、あの子が帰ってくるこの場所を護るために。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 魔凰軍本部。


 「――――では、そろそろ我々も行こうか」


 魔王の間に、彼らの主力が集結していた。

 呟いたのは、司令のラスドラーゴ。


 「私たち四人は、中央都市アビテルムにある四つの門からそれぞれ入っていく。他は好きなようにやってくれ。――――では、武運を祈る」


 ワープゲートを作り出し、ミワルナ軍が暴れ回る戦場と化している中央都市へワープするラスドラーゴ。

 ファンドルの案内でそれに続く者もいれば、寝転がったまま動こうとしない者、その場から離れようとする者もいた。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「――――ここか……。随分変わったな。まあ、四十年も経てばどんな馬鹿でも成長するか。さて――――」


 北門。

 現れたのはダクライズ。


 とりあえず目立とうと、町を破壊しようとする。

 ――――が、


 「……!! 何だ……!?」


 破壊しようとした腕が、同じような化物に捕まれている。

 化物、数匹に。


 「……こいつら……どこかで見たことが……。……邪魔だあっ!!」


 化物たちの粘りも虚しく吹き飛ばされてしまう。

 

 しかし、今度は『人間』の手で止められた。


 「ちょっと待った。困るね。町を破壊しちゃ」


 拳を剣で受け止めた彼は、巨大な魔物の手を押し返す。

 そして、二本の剣をダクライズへと向けた。


 オー・ラッセだ。

 彼の姿を見たダクライズは凶悪な笑みを見せる。


 「……お前、あの時のガキだな……!! 一目で分かったぜ……!!」


 「久しぶりだね……ダクライズ……」


 「……そうか!! 思い出したぞ!! あの化物どもは、お前のその妙な剣で作り出した奴か!!」


 地面に寝転んでいる『鬼』を指差すダクライズ。

 オーが町の人々を助けるために、町中にばら撒いていた小鬼たちだ。

 

 「……その通りだよ」


 その小鬼たちを消すオー。

 

 この平和な町では極めて無害な鬼しか出せない。

 今、戦闘で使うことはできない。


 「……それにしても、まさかお前の顔をもう一度見るハメになるとはね……。セイホウさんの手によって封印されていたのに……」


 「時間は掛かったがな。我々の時を四十年も止めるとは、腹だしい男よ。――――だが、それも過ぎたこと。今の俺は気分が良いぞ。聖鳳軍の奴らが来てくれた上に、それが『お前』なんだからな!!」


 町中、向かい合う強者と強者。

 過去から戻って来た巨大な魔物を歴戦の戦士が迎え撃つ。


 「…………ということは……まさか……他の奴らも……?」


 「ああそうだ。魔王様以外は、今この町に来ているぞ……!!」


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 同時刻、南門。

 姿を見せたのは、マビュート。


 「……まだ随分人間がいるわね。向こうから誰か来てくれるまで遊ぼうかしら?」


 飛ばされて早々、南門から逃げ出そうとしている人が見える。

 マビュートは拳を握り締めると、空気の圧を彼らへと飛ばした。


 「やめろお!!」


 しかし、住民たちの避難を先導していた聖鳳軍四軍の男が庇う。

 彼は、静かに崩れ落ちた。


 「…………さあ……皆さん……今のうちに……逃げ……」


 「逃げて下さい!!」


 マビュートと住民の間に、もう一人ついていた四軍の女が立ち塞がる。

 その間に、住民たちは先にある避難所へと走る。

 

 「……どうやらあなたも聖鳳軍のようね。でも全然ダメだわ。――――弱すぎる」


 「かあっ……!!!」


 「ほら、もうお終いじゃない。あなたは何も守れないのよ」


 障害物を破壊したマビュート。

 すぐに逃げる住民に腕から生えた触手を伸ばす。

 

 二人ともまだ生きてはいるが、全く動くことはできない。

 結局こいつの言う通りだと、無力な自分に涙を流した。


 「――――そんなことないよ!!」


 だが、放った触手はキャッチされた。

 道着を来た黒髪の女性に。


 「なにっ……!!?」


 その女性は触手を引き千切り、マビュートへと投げ返す。

 マビュートは憎悪と歓喜を混ぜながら、参上した強者に笑みを見せる。


 「大丈夫!! あなたたち二人は護れてる!! あなたたちが護ったのは、今度は私が護るから安心して!!!」


 ティローナ・カルダ―ト。

 現れたのは、彼女だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。