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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百四十話 『最後の休息』

 ――――そして、翌日。

 

 「……行くしかない……か……」


 昨日の結果を経て、さらに気持ちが強くなった翔英。

 家の中にいてもしょうがないので、町の外へと出ようとする。


 正直言って、当てはない。

 どこに行けばいいのかは分からない。

 どこに行けばいいのかは、誰も知らない。


 でも、行くしかない。


 翔英はドアを開けた。


 「――――おっ!! どこ行くんだ!? ショウエイ!!!」


 だがドアの向こうに見知った顔。

 聞き慣れた声が飛んで来る。


 「レランカさん……!?」


 そこにいたのは、レランカ・レルンだった。

 左手に袋を下げている。

 手を振りながら、こっちへと向かってくる。


 「どうしたんですか!? レランカさん」


 「いやさ、ヒナノから聞いたんだよ。お前が二軍になったってな。だから祝いに来たんだ」


 「そうだったんですか……!! ありがとうございます!! わざわざ!!」


 「……ショウエイはこれからなんか用だったのか?」


 「……まあ、はい。用という用ではないんですけど……。とりあえず、外を歩こうと思って……」


 「…………なるほどな……。そういうことか……。……じゃ、これ受け取っといてくれ」


 翔英の目的を察したレランカ。

 祝いに持って来ていた大きな果物を渡し、立ち去ろうとする。


 「……じゃ、アタシはこれで……。邪魔したな……」


 「……レランカさん……!! ありがとうございます……!!」


 「ああ……」


 レランカの背中を笑顔で見送る翔英。

 彼女の姿からは、いつも元気が貰える。


 一瞬だけで、ここで会えてよかった。

 礼を言えてよかった。


 翔英は受け取った品を部屋にしまうと、また外へと歩き始めた。


 その、すぐ、


 「おっ!! ショウエイじゃねえか!! また会ったな!!」


 「ええ……!?」


 町を抜ける前に、また同じ顔に遭遇した。

 

 どうやら、あの後も外をフラ付いていたようだ。

 この人は。


 「……そうだショウエイ。ここでまた会ったのも何かの縁だ。すまねえが、ちょっと一緒に来てくれなないか? もちろん……お前の気持ちも分かるが……当てはないんだろ……?」


 「……はい……。……分かりました……」


 レランカの言う通り、当てはない。

 そんな旅へ毎日のように行かなくてはならないのは、苦痛だった。

 

 だが、翔英は自らに課している。

 それしかできることがないのだから、絶対に逃げてはならないと。


 しかし、恩人のレランカに誘われたので、着いて行くことにした。

 

 「――――ここだ。ここに今から用があるんだ。着いてきてくれ」


 「……ここ……ですか……?」


 案内されたのはどこかで見たような気がする飲食店。

 てっきり、仕事の手伝いかと思っていたが、そんなことはなさそうだ。


 そのまま入店。

 レランカは席へと進んでいく。


 そして、


 「よう。待ったか?」


 既に店の中で座っていた三人に声を掛けた。

 

 その光景を見た翔英は「えっ!?」と驚きの声を出す。


 「あら、レランカ。あなたにしては早いわね。――――って、あれ!?」


 「ああ、特別ゲストを連れて来たぜ」


 「ショウエイくん!?」


 「……どうも……。ヒナノさん、ルナさん、ティローナさん……」


 何故だか分からない場所に、連れて来られてしまった。

 聖鳳軍一軍の女性陣三人が、食事をしているところに。


 ――――今すぐ、帰りたい。


 「ショウエイくん!! 会いたかったよ!! ささ、座って!!」


 「……あ、はい……ありがとうございます……」


 ティローナが笑顔で席を開けてくれた。

 翔英は言われるがまま、ティローナが奥にズレて空いたスペースに着席する。


 「……ショウエイくん。別に君なら全然ええけど、なんでここに? ……ああ、レランカに無理やり連れてこられたって感じやな」


 「……はい……」


 前に座っているルナが声を掛ける。

 ルナの左隣には、ヒナノ。

 右隣に、レランカが腰を下ろした。


 「さあショウエイ!! 好きな物なんでも頼んでいいぜ!! こいつらが奢ってくれっから!!」


 「はあ……」


 メニューを手渡すレランカ。

 それに目を通す翔英。


 にしても、なんで俺がここに?

 一対一、いや、二対一くらいまでは全然平気だが、四対一で囲まれるところにいきなり放り込まれては、ちょっと変な汗が出てしまう。


 「そうだショウエイくん!! 二軍になったんだよね!? おめでとう!! 私、推薦したんだよ!! だから嬉しいよ!!」


 「ああ、まだ祝いの言葉を言っとらんかったな、おめでと、ショウエイくん」


 「アタシは当然って感じだけどな。ま、推薦した甲斐があったってもんだぜ」


 「……そういえば、推薦した人集合してるね。私に、ルナに、レランカって」


 「あっホントだな。……ってかヒナノ!! お前も何か言ってやれよショウエイに!!」


 「私は昨日全部言ったわ。私、試験官だったのよ」


 「……そういやそうだったな。でも、合格にしてくれてよかったぜ。もし不合格にしてたら、文句言ってやろうと思ってたからな」


 「ふっ……。別にいくらでも聞いてあげるわ。あなたの意味のない文句くらいね」


 ……口を挟めない。

 いきなり来た自分が入る隙なんてある訳ない。

 それに注文の仕方が分からない。

 

 なんだってレランカはここに連れて来たんだ。


 「――――どう、ショウエイくん? 決まった?」


 天使かと思った。

 隣にいたティローナが声を掛けてくれた。


 「あっはい……!! 決まりました……!!」

 

 「そしたらね。この紙に書いて、あそこの籠に入れて置くんだよ」


 「ありがとうございます……!!」


 ティローナの助け舟のおかげで何とか頼めた。

 でも、ここからもきついぞ。


 ……いや、そんなことはなさそうだ。

 

 「――――あっ、ショウエイ!! それ頼んだのか!? それよりも、アタシのやつの方が美味しいぜ!?」


 「何言ってんのよ。ショウエイくんは見る目があるわ。これの方が美味しいわよね? ショウエイくん」


 「いやいや。ショウエイくん、この店来んのは初めてやろ? だから知らないだけや。一番美味しいのこれってな。ほら、食うてみ」


 「おっ、美味しいですね!! ……でも、ヒナノさんのこれも美味しいですよ!!」


 「ちょっと待ててめえ! アタシのも食ってみろ!! 飛んじまうぜ!!」


 「……いや、あんまり……」


 「んだとコラ!! どうなってんだお前の舌は!?」


 楽しい。

 何か久しぶりに、楽しさを感じる。


 ――――そうだ。


 この人たちの笑顔を見て思い出した。

 俺、使命と責任で、ずっと気を張り巡らされていた。


 肩の力を緩めるのも、忘れていた。

 何かを果たすには、こういう時間も必要ってこと、レランカさんは教えてくれたのか。

 だからここに連れてきてくれたのか。


 ――――ありがとう、レランカさん。皆さん。


 今度はこの中に、ミネカもいるように、俺、戦い抜きます。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そして翌日。

 彼らに――――運命の日が訪れる。

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