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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百三十九話 『結果発表』

 ――――待機時間。


 翔英は今、別の部屋で結果が訪れるのを待っている。

 

 あの後、昼休憩の時間が取られた。

 その間に、結果は決められるという。


 翔英は高速で食事を済まし、待機部屋で待っているというわけだ。


 ヒナノのおかげで、体力は満タン。

 もう、身体はどこも痛くない。


 ――――自信は普通だ。


 一つ目と二つ目は好印象だったように思える。

 笑顔も見えた気がするし。


 肝心の三つ目は完敗だった。

 が、何にもできなかったわけではない。

 ……はずだ。


 「――――おっ……!!」


 扉が開いた。


 今回の試験官を担当した、ヴァナベールとヒナノが中へと入ってくる。

 もう一人、先程剣を交えたバール・バーランドの姿はない。


 「お待たせ、ショウエイくん。少し待ったかしら?」


 「いいえ!! 全然!!」


 「そう。それはよかったわ」


 いつも通りの会話を交わしながら、翔英の前に座るヒナノ。

 手に書類のような物を持ちながら、ヒナノの隣へと腰を下ろすヴァナベール。


 それを見た翔英は、少し緊張を緩めた。


 ――――あれはきっと、合格フラグだ。

 入隊試験の時も、ガロト・クラーニクにいくつかの書類を渡された。

 きっとあれも、今から手元に。


 「……では、合格発表といくかのう」


 ヴァナベールが呟いた。

 さっき緩んだ緊張が一気に戻ってくる。


 「…………ショウエイ・キスギ。先の試験の結果、その能力、人格、そして心構えに、申し分ないと結論した。――――よって、お主を聖鳳軍二軍へと昇格するものとする」


 「…………おおっ……!!! やったあ!!! ありがとうございます!!!」


 ――――期待通りでよかった。

 試験官がこの人たちでよかった。

 これまでの全てが、認めて貰えてよかった。


 「ふっ。ショウエイちゃん。これから昇格に当たっての説明をいくつかするが、その前にわしらの講評を聞いてもらうぞい」


 「はいっ……!!」


 不合格の講評はしんどいが、合格の講評なんていくらでも聞いてられる。

 翔英は満面の笑みを二人に見せた。


 「まずは、わしから。わしの目から見ても、お主を推薦した者たちの気持ちがよくわかるものじゃったぞ。お主が動いているのを見るのは初めてじゃったが、間違いなく、二軍相当の実力があるように思えたわい」


 「……!! あ……ありがとうございます……!!!」


 「それから、ショウエイちゃんが語った理想。実に興味深いものじゃった。不思議な納得感も見えた。さっきも言ったが、上に進むべき者の心構えだと感じたわ」


 「……おおっ!! 滅茶苦茶嬉しいです……!! ありがとうございます……!!!」


 三度目の礼。

 それもしょうがないくらいのべた褒めじゃないか。

 おそらく何人も見て来たであろうこの人からそんな言葉を頂けるなんて。

 

 本当に嬉しい。

 嬉しいって言葉じゃ表せないくらいに。


 「……でもの、バールとの戦いを見て思ったが、あの作戦……あえて打たれてから反撃する作戦に入るのは、もう少し後でもいいと思ったぞ。……自分を捨てるのが早いとな……」


 「あ……はい……」


 講評ですから。

 当然、耳が痛い言葉を入ってくる。


 だが、翔英自身も納得するような、的を得ている指摘だ。

 

 戦いを経ていくに連れ、その傾向は特に強くなっている。

 まだ、自分が傷つかないような道があるかもしれなくても、「どこかで大丈夫だろう」と思いながら、すぐに捨て身の作戦に出ようとするところは自覚している。


 今回は、試験という場だったが、実戦においてはその判断が致命的なミスになる可能性も否めない。


 「……ありがとうございます……。気を付けます……」


 「その判断が間違っていると言っているわけではないぞ。ただ、最後まで他の可能性も見んとな。……わしからは以上じゃ。お主の活躍、これからも期待しておるぞ」


 「……はい……!!」


 「――――じゃ、次は私ね」


 今度はヒナノが立ち上がった。 

 試験中にメモを取っていたのか、カンぺを見ながら講評を始める。


 「ま、色々言いたいことあるけど、簡潔に纏めるわね。――――うん、凄かったわ。あなたの努力が伝わって来た。……頑張ってね」


 「…………え……? それだけ!?」


 「ええ」


 メモの意味、ないじゃん。

 

 ……いや、それだけで十分だ。


 ヒナノは分かってくれている。

 これまでの自分の成果や苦悩を。

 それが分かれば、十分だ。


 「ヒナノさん……ありがとうございます……!! 頑張りますよ、俺……!!」


 笑顔で応えるヒナノ。

 

 彼女もまた、努力家である。

 それにずっと前から、彼の事を見ている。


 シンプルだが、本心から出た言葉だ。

 

 「……後、バールからのコメントも伝えておくぞい」


 「……あ。バールさんどうしたんですか?」


 「戦い足りないと、外に行ったぞい」


 「ええ!!?」


 あのなりでバトルジャンキーなの?

 あのお婆さん。


 「……ええ……、動きは今一つだが、戦い方が上手い。年と経験を重ねて行けば、さらなる強さも見込めるだろう。生きていればな。……以上じゃ」


 「はあ……どうもありがとうございます……」


 一言余計な気がするが。

 直接戦ったあの人に、そう思ってもらえたことは嬉しいことだ。

 

 「……では、腕章や書類を渡すぞい。ほれ、受け取ってくれ……」


 その後、無事に昇格の手続きは行われ、翔英は晴れて二軍へと昇格した。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「――――やったよ、ミネカ……」


 少し部屋に残っていた翔英は、拳を握り締めながら彼女に想いを寄せる。

 

 彼女の時間は止まってしまっているとはいえ、まだまだ実力差は明確とはいえ、ようやく肩を並べることができた。

 入隊当初から抱いていた目標を、達成することができた。

 

 これで少しは、ミネカの隣が似合う人間になれたかな。


 ――――早く、あの子に報告したい。

 

 ……そのためには、会わないと。

 

 ミネカ・ベルギアに、会わないと。


 またさらに意志が強くなった。

 これ以上はないと思っていたが、さらに上に強くなった。


 「……また…………必ず……」


 誓い。

 嘘にはできない。


 翔英はまた前を向き、部屋を後にした。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ――――その夜。

 帰宅後、家で休んでいると、ヒナノから報告を受けていたクーレ・スエリアに昇格を祝って貰った。

 

 こうして、誰かが祝いに来てくれることって幸せなことだと、翔英は涙ながらに実感した。

 やっぱり、彼女の手料理は美味しかった。

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