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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百三十七話 『第二の試験』

 「――――ショウエイちゃん、次は『自由演舞』じゃ」


 第二の試験。

 一分間、好きなように自分を魅せる、自由演舞。

 そんなもの、やったことないし対策なんてゼロだが、勢いに任せてやるしかない。


 翔英は試験官三人の表情をチラリと見た。

 

 ヴァナベールはいつも通りの好好爺。

 ヒナノは真剣な顔だ。

 バールはやはり無表情。

 

 そして今度は自分の周りに目を通す。

 翔英の周りには、壊す用のブロックが積み上がっている。

 

 翔英は息を整えた。 

 

 ヒナノには何度か見せているが、ヴァナベールとバールには自身の力を見せたことはない。 

 まずは、あれをやろう。


 「いつでもよいぞ。ショウエイちゃんが動いたらスタートじゃ」


 「はい……!!」


 返事と共に翔英が動く。

 いつも通り、首に掛けた宝石を剣へと変形させ、とりあえずかっこつけながら振り回してみる。

 

 そこからサイズ転換。

 ナイフのような短剣から、バスターソード以上のビックサイズへ。

 

 でも重いのですぐに戻す。


 「(よし……!! ここまでは順調……!!!)」


 またチラリと試験官の方を確認する翔英。

 一瞬だったが、ヴァナベールが笑っているように見えた。


 「(次は……!!)」


 盾にしてみた。 

 でも盾は相手がいないと魅せられなかったので、またすぐに剣に戻す。


 こいつでのネタはこれで終了。 

 まだ時間は半分以上残っている。


 だが、考えている時間はない。


 翔英は剣を前に突き刺すと、両手にマナを込め始めた。 

 そしてできるだけ急ぎながら、ブロックへと雷を解き放つ。

 

 「(……へー、やるじゃないショウエイくん。あの時から随分精度が上がってる。あれからも練習してたのね)」


 それを見たヒナノが、先生のような目線で教え子を見つめる。

 その表情は試験官ではなく、保護者のようだ。

 威力も速度も、ついこの間よりも成長しているのが分かる。


 さらに今度はどどん波のように指先からぶっ放してみた。

 威力は激減しているが、それでもブロックにストローが刺せるくらいの穴が空いている。


 「(……どうしよ……)」


 だがここでコンボストップ。

 始まる前にやろうと決めていたことを全て終わらせてしまった。

 

 カルダはやらないと決めていた。

 もし失敗したら、そこで終了してしまう。 

 あまりにリスクがでかすぎる。


 「(……くそっ……!! 一か八かだ……!!)」


 残り時間は十数秒。

 だが、この数秒を無駄にしないために、翔英は動いた。

 やったことのない、賭けに出た。


 まずはチャージ。

 魔法の準備を整える。

 ここまではさっきと一緒だが――――


 「はあっ……!!」

 

 「!? 何をっ……!?」


 突き刺していた剣に雷をぶち当てた。

 

 思い付きの――――奇策。

 

 変化は起こっていない。

 翔英は剣をすぐに剣を拾い、ブロックに向かって振り下ろしてみた。

 

 「(……!! これは……!!)」

 

 すると、ただ斬れただけではなく、斬れ目に少し焦げ跡ができていた。


 「――――そこまでじゃっ!!」


 第二の試験、ここで終了。

 

 剣を戻し、試験官に向かってお辞儀をする翔英。 

 その表情からは、突然の驚きが見て取れる。


 「次で最後。模擬戦闘と行きたいところじゃが、少し休憩をとるかのう。十分休憩じゃ」


 「分かりました……!!」 


 一分間動き続けたことに気を遣ってくれた爺。

 翔英は地べたに座り込み、自身の両手を見つめる。


 「……さっきの……」


 驚きが収まらない。

 やけくそでやったことだが、剣に魔法の力が加わったように見えた。

 

 「――――中々面白いこと考えるわね、ショウエイくん」


 そんな翔英に話し掛けるヒナノ。

 彼女は翔英の新しい技だと思っているようだ。

 

 翔英は苦笑いしながら、ヒナノへと視線を向ける。


 「その剣にあなたの雷の力を合わせるなんて。その宝石の『マナを吸い取る』性能を上手く活用したのね。凄いじゃない」


 「……あ……はい……!!」


 ヒナノが解説してくれた。

 翔英は全く分からなかった。 

 「そういうことだったのか」って言葉は、外には出さない。 


 「ここまで、いい感じだと思うわ。後少し、頑張ってね」


 戻っていくヒナノ。

 やっぱり、審査する立場じゃない気がする。

 

 ……それにしても、この宝石、マナで動いているっていうのは分かっていたけど、吸い取ることができたなんて、知らなかった。

 でも、敵のはそうではなかった。

 じゃあ、入っていくのは自身の物だけか。


 ……というかこれ、本当になんなんだろ。

 こっちの世界の物ってことはもう分かっているけど、それ以外については何も知らない。


 どんな目的で作られたのか。

 何故父が持っていたのか。


 「(……こんなに助けてもらっているんだから、もう少し知りたいな、お前のこと……)」


 赤い宝石に熱い視線を送る翔英。

 そうこうしてる内にすぐに時間は過ぎた。


 「――――よし。じゃ、再開と行こうかのう。まあ、これでラストじゃが」


 「はい……!!」


 第三の試験。 

 試験官との模擬戦。

 間違いなく、ここが鬼門だ。


 「最初に言った通り、お主の対戦相手はこっちで決めさせてもらった」


 「……はい……」 


 翔英は、この三人の戦闘シーンを一度も見たことがない。

 ヴァナベールとバールに至っては、戦術も全く知らない。

 知っているのは、ヒナノが魔法の天才ってことだけだ。


 ……そうなると、一番やりづらいのはヒナノかもしれない。

 搦め手と遠距離攻撃で攻められたら、どうしようもない。

 まあ、試験の場でそんなガチ戦法とるかと言ったら微妙だが。


 他の二人は、「老人」ってことが一番のネックだ。

 戦うイメージが湧かない。

 

 「――――相手は……バールじゃ」


 「!! バールさんか……!!」


 対戦相手決定。

 ヴァナベールでもヒナノでもなく、老婆、バール・バーランドが相手だ。


 「一応理由を言っておくが、わしら三人の中で、戦闘スタイルが一番ショウエイちゃんに近いからじゃ。その方が、お主も実力を発揮しやすいと思ってのう」


 「……分かりました……!! ありがとうございます……!!」


 戦闘スタイルが近い、か……。

 

 ということは、この人は武器を使って戦うってことか?

 全くそんなイメージできないけど。


 「では、こっちに来てちょうだい」

  

 ヴァナベールの案内の元、闘技場の中央で向かい合う翔英とバール。


 バールは武器を持っていない。

 持っているのは、曲がった腰を支えている杖。


 「わしかヒナノちゃんが辞めというまで続けるように。――――では、いつでも始めてよいぞ」


 向かい合う両者。

 年齢差を考えてもあり得ない緊張感が流れている。

 

 「……よろしくお願いします。バールさん……!!」


 「……殺す気でかかってこい」

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