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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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235/268

第二百三十四話 『私の頑張り』

 「…………なんで……?」


 「はい……それは……昇格試験の試験官は、一軍と二軍の中から三名選ばれるのです。私も、担当になるかもしれないので……試験内容については、私たちからお話することはできないのです……」


 「……なるほど……」


 ――――言ってくれればしなかったのに。


 そんなことを思ってもしょうがない。

 何なら、最初に話し掛けたのがソルでよかったと思うべきだろう。


 「……まあでも、試験内容については話せませんが、基本的事項なら多分説明しても大丈夫だと思いますので、セーフですね」


 「……おお。ありがとうソル」


 ――――やっぱり、ソルでよかった。


 「……試験官は、推薦人以外から選ばれます。ショウエイさんを推薦したのって、どなたか分かりますか?」


 「うん。ルナレジェンさんだって言ってたよ」


 「……他は?」


 「……他? ……いや、ルナさんしか聞いてないけど」


 「…………ショウエイさん。昇格試験に挑むには、最低三名からの推薦が必要なんです。だからきっと、もう二人、いますね」


 「ええ!? そうなの!?」


 ――――だから言っといてくれよ。

 全然何も聞かされていないではないか。


 ……知ってると思われてたのかな?


 「……はい。どなたか、心当たりありませんか? 一軍二軍から、他に二名」


 「……んー……心当たりかあ……そうだな……。……そういえば、レランカさんに初めて会った時、『二軍レベルに見えた』って言ってくれたことがあったけ」


 「……なら、レランカさんは間違いないですね。私の時もレランカさんいましたし。あの方、どんどん推薦するので」


 「ははは。レランカさんらしいな」

 

 「もう一人はどうですか……?」


 「…………多分、ティローナさんかな? ……あっ、ヒナノさんって可能性もあるかも」


 「……姉さまですか……。……でも、姉さまが誰かを推薦してるのって、聞いたことありませんね……。姉さま、いつも試験官側にいるイメージです」


 「そっか……。じゃあ、ティローナさんだと思う。何だかんだ、一緒にいたの長かったし」


 全員、正解。

 ちなみに、一軍への入隊試験を受けるには、一軍三名からの推薦が必要となる。


 「そうですか。では、そのお三方以外から選ばれそうですね」


 「そうみたいだね」


 「…………でも、ショウエイさん。いつの間に、そこまで上ってきていたんですね。……本当に凄いです」


 「ああ、ありがとう。ソル」


 「……試験内容については言えませんけど……ショウエイさんに見てもらいたかったものがあるんです。……ちょっと、いいですか?」


 「……え? ……うん、いいけど」


 試験内容はこれ以上言えないと判断したソル。

 前々から翔英に見せたかった物があったため、話題転換。


 ソルと翔英は、闘技場へと移動していった。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「……よかった……。空いていましたね」


 「……うん。っていうか、勝手に使っていいの? それに、ここで何すんの?」


 「大丈夫です。もしどなたか来ても、事情を話せば問題ありません」


 「……ああそう……」


 ここに来て、ソルがあの人の妹だということを実感する翔英。

 性格は似ていないが、こういうところはそっくりだ。


 「――――何をするのかは、今、分かります。ショウエイさんは、そこで見ていてください」

 

 「……え? うん、分かった」


 ソルは両手をクロスすると、四つん這いになった。

 何が始まるのかドキドキしている翔英は、真剣な眼差しで視線を送る。


 「はあっ……!!!」


 「……!! なんだっ……!?」


 翔英は目をこすった。

 目の前の光景を疑ったから。


 ――――変化している。

 ソルの姿が、人間の物から変化していく。


 これは――――獣だ。


 「な……!? なんだこれ……!!!? ソル……!!? どうしっちゃったんだよ……!!?」


 漆黒に包まれた、小さな魔獣のようなこの姿。

 翔英が目にするのは初めてのことだ。

 

 「……ショウエイさん!」


 「うわっ!! びっくりした!!」


 魔獣が口を開いた。

 この声はソルだ。

 それに心なしか、笑っているようにも見える。


 「ショウエイさんには、見せるの初めてでしたよね。私、これをショウエイさんに見てもらいたかったんです」


 「……これを……俺に……?」


 「はい。……私、前までは、この姿になると意識がなくなってしまって、コントロールできなかったんです。――――それに、どうしようもなく、この姿が嫌いだった……」


 「……ソル……」


 「……でも、私、頑張ってこの姿でも行動できるようになったんです。……みんなの役に立つために……ミネカさんを助けるために……。――――それにショウエイさん、覚えていますか? この前会った時に、私が言ったことを」


 「………ああ、もちろん覚えてるよ……!! そっか……!! それで俺に、これを見せてくれたのか……!!!」


 ソルは先日、翔英に言った。


 『今度会ったら、私の頑張りの成果を見せる』と。


 ソルは、あの時の戦いで自身が下した決断。

 ミネカを助けられなかった結果。

 それらを、毎日のように悔いていた。


 だからソルは、共に悔しさを分け合った仲である翔英に誓いを立てた。

 必ず強く成るという誓いを。


 「……はい……!!」


 翔英のリアクションに嬉しそうに返答しながら、人間の姿へと戻るソル。

 その変化に対して、思わず拍手で応える翔英。


 今のソルの姿を見て、ソルの言葉を聞いたことで、彼女の努力が手に取るように分かった。

 ソルは、翔英を勇気づけようと、約束を果たしてくれたのだ。


 「……ありがとう、ソル……!! 本当に凄いよ……ソル!! そんなかっこいい力を使いこなせるようになったなんて……!!」


 「……あ、ありがとうございます。ショウエイさんにそう言っていただけて、とても嬉しいです。……でも、実はまだまだ完全ではないんです。本当は、もっと大きいんです……。――――だから、一緒に頑張りましょう!! ショウエイさん!! ショウエイさんは明日の試験……!! 私は、この力をもっと使えるように頑張ります……!!」


 「うん……!! 本当にありがとう、ソル……!! たくさん勇気貰えたよ……!! 俺も頑張るね……!!」


 「はい……!!!」


 試験についてあまり聞くことはできなかったが、それでも、偶然ソルに会えてよかった。


 またしてもソルに元気を貰えた翔英は、その勢いのまま、新たな試練に挑戦する。

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