第二百三十三話 『更に上へ』
――――リュノンの戦いから、三日後。
「…………そろそろ……ヤバいかもな………」
自室で座りながら呟く翔英。
相変わらず、ミネカやジャーザンスについての情報は全く入らない。
まあ、おそらく人間が入れないところに身を隠していているだろうから、それはそうなんだが。
でも、このままじゃ本当にまずい。
ジャーザンスが去り際に放っていた言葉は翔英には聞こえていなかったため、「一生会えないんじゃないか?」
そんな心配もある。
やはり、情報を聞き出すなら、『魔物』だろうか。
「『あの時』聞いておけばよかったな」
そんな風にも思う。
トライフはともかく、ジェシスとは話すタイミングがあったし。
緊急の戦いだったし、勝ち目も薄くて余裕がなかったから、完全に聞きそびれてしまったけど。
「次に会ったら、必ず聞こう」
翔英はそう頭に入れた。
となれば、やはり外を歩くしかない。
エンカウント率を少しでもあげるために。
「――――あれ……? なんだこれ……?」
とスタートしようと思ったが、早くも出鼻をくじかれる。
翔英宛に、手紙が届いていたのだ。
「…………うーん………。なんだろ?」
手紙にはこう書かれていた。
『ご都合のよい時間に本部にまで来てください』
と。
翔英はとりあえず、本部に向かうことにした。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
受付にて。
「――――こんにちは」
「ああ、ショウエイ・キスギさん。こんにちは」
「……えっと、こいつを読んで来たんですけど。……何か、俺に用ですか?」
小さな手紙を見せる翔英。
いつもの人は驚いたように言葉を返す。
「――――ん……? …………ショウエイさんの…………ああ……!! あのことですか……!!」
「ええ……はい……?」
「すいません。正式に決まっていたわけじゃなかったので把握ができておりませんでした。……おそらく、その手紙が届いたのは今さっきのことだと思われます」
「……そう……なんですか……?」
「はい。その手紙が届いたということは、あなたには、昇格試験を受ける資格が与えられたということです」
「……!! 昇格試験……!?」
――――聖鳳軍には、一から五の階級が存在する。
現在、翔英の階級は三。
これまでの戦いや功績が評価され、歴代屈指の早さでここまで上り詰めた。
翔英が体験した通り、三軍までは評価だけで昇格することができる。
だが、二軍からはその限りではない。
これまで以上の功績に加えて、昇格試験を受ける必要があるのだ。
「はい。昨日……いや、一昨日でしたかね。ルナレジェンさんが、あなたの昇格を推薦されたのです」
「え……!? ルナさんが……!? ……なんで……!?」
「……なんでと言われてましても………………」
「……ああ……なんかすいません……」
「…………それでですね。その承認に時間が掛かっていたのですが、今日、終わったのだと思います」
「……なるほど……」
二軍昇格試験の受験資格を得るためには、一軍二軍のうち三人から推薦を得る必要がある。
今回、ルナレジェンが推薦したことによって、合計三人となったのだ。
まず、ジャーザンスとの戦いが終わった頃。
レランカ・レルンが推薦を出していた。
当時、翔英の階級は四軍。
レランカやヒナノの報告により、三軍となった翔英だが、そうなった後もレランカは、「あいつは二軍」だと騒いでいた。
しかし、そんなすぐには承認されず、後回しになっていたが、その少し後。
ミドルハイムでの戦闘があってからすぐだ。
ここに、ティローナ・カルダートも加わった。
レランカもそれに乗っかり、翔英を推す。
素行不良のレランカだけでなく、品行方正なティローナまでが推薦したため、二人の推薦は正式に認められた。
そして先日、そこにルナレジェン・ペサンテも加わったというわけだ。
「……それで、どうされますか? 試験の方は?」
届いていた手紙は、詳細の説明、及び試験の是非を問う、試験についてのものだったのだ。
考えるまでもない。
答えは、
「やりますっ!!!」
翔英の当初の目的。
その一つに、『ミネカと肩を並べて戦う』というものがあった。
それを叶える絶好の機会なのだ。
断る理由は何一つないだろう。
さらにあの時、ミネカに伝えた言葉もある。
このチャンスは絶対にモノにしたいところだ。
「了解いたしました。――――では、準備諸々がありますので、また明日、こちらまでお願いできますか? 今日と同じ時間にお願いします」
「ああ、分かりました。じゃあまた明日、よろしくお願いします」
てっきり、今からやるのかなと思っていたが、冷静に考えればそりゃそうか。
逆に明日なのは早いくらいかもしれない。
翔英は受付の方に挨拶を済ませ、その場を後にした。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「(――――て……このまま帰るのは危険じゃないか……? ちょっと誰かと話しておきたいな……)」
帰り道。
すぐに方向転換し、本部の中へと入っていく翔英。
狙いは、明日の試験についての情報を教えてもらうこと。
こっちの世界には、携帯電話がないのが不便だ。
郵便はあるが、こうして誰かいそうな場所へフラフラ寄るのが、誰かに会うことのできる最も簡単な方法だ。
本部の中を散歩すること、十五分。
「――――あっ……!!!」
遂に、顔馴染みの人を発見した。
ここは広めの休憩テラス。
机や椅子が並んでおり、外で涼みながら多くの人が休んでいる。
その中に、知り合いを見つけた。
「おーい!! ソルっ!!!」
「……え……? あ、ショウエイさんっ!!」
ソル・スエリア。
発見したのは、彼女だった。
「よかった! ソルに会えてっ!!」
「……え……? 私に……?」
「そ! ちょっとソルに聞きたいことあるんだけど! 今、大丈夫?」
「……はい。構いませんよ」
「よし……!! と、ちょっと場所変えていいかな?」
「はい。もちろんです」
ソルと合流できた翔英。
一応、誰かに聞かれることを心配し、テラスから離れた。
もしかしたら、あんまり公にしちゃダメなのかもしれないし。
――――と、いうことで。
空いていた部屋に、移動。
ここには誰も居ない。
「――――昇格試験……!? ……そうだったんですか……」
「そ。なんか知ってることあったら、教えて欲しいんだ」
「…………場所を移動して正解でしたね……ショウエイさん……。それ、私たちには聞いちゃだめなんですよ……」
「え!? そうなの!?」
ヤバい。ミスった。




