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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百三十二話 『因縁の壊滅』

 「――――お、来たか……」


 ゆっくりと、森へと戻って来た翔英とリュノン。

 翔英が重症のリュノンへと肩を貸しながら歩いている。


 そんな二人をルナレジェンが迎える。


 「……!! リュノン……!! 大丈夫か……!?」


 「すいません……!! リュノンの治療をお願いします……!!」


 「……ボクも治療は得意やないけど……。やるしかないか……。――――あ……。そうだ、君。ちょっとリュノンのこと治してやってくれん? さっきそいつにやったみたいにさ」


 歩いていた内に気絶していたリュノン。

 そんな彼の傷を一刻も早く治すべく、後ろで突っ立っている敵にお願いするルナレジェン。

 

 「……はァ……? なんで……アタシが……!! それよりも……いつんなったらボスのとこに連れてってくれんのよォ……!!」


 後ろにいるプティマが反発する。

 彼女との隣では、ルコートがぶっ倒れている。


 ――――翔英がリュノンの元に行った後。


 ルナが目を逸らした隙に、プティマはルコートを回復していた。

 目を覚ましたルコートは即ボスを助けに向かおうとするが、一瞬でルナにボコられて重症に逆戻り。


 プティマが回復能力を持っていることを知らなかったルナは、一応プティマを気絶させようとするが、「もう回復しないから許して」とお願いされたので辞めた。

 それから、リュノンと翔英が戻ってくるまで、プティマとルコートを見張りながらこの場で過ごしていた。

 

 まあ、プティマを気絶させてから二人を助けに行ってもよかったが、万が一逃げられる心配があったし、「あの二人ならきっと大丈夫だろう」と思っていたため行かなかった。

  

 「……分かった分かった。じゃあ、リュノンを治したら連れてったるから。はよ治してや」  


 「…………分かったわよォ……」


 渋々リュノンの治療を開始するプティマ。

 その隙にルナは翔英に耳打ちする。

 

 「……で、ショウエイくん……。どうなったん……?」


 「……はい。俺が着いたときには既に、リュノンはグランデを倒していました。リュノンの方も、重症でしたけど……。……グランデは、森を抜けて東に行ったところで倒れていましたが、多分死んでます……」


 「…………そっか。了解。……リュノン、勝ったんやな……」


 リュノンとは、試験官を担当した時からの長い付き合いだ。

 その時からずっと、リュノンは言っていた。


 「どうしても、倒したい奴らがいる」と。


 その目的をようやく達成できたのか。

 

 年は一回り近く離れているが、ルナにとって、リュノンは弟のような存在だ。

 彼のことを想い、ルナは少しだけ涙を浮かべた。


 「――――はい。終わったわよ」


 そうこうしているうちにプティマが戻って来た。

 まだリュノンは眠っているようだが。 


 「……結構ひどいケガだったから、目を覚ますのに何分か掛かると思うわ。――――それよりほら、約束守ってよ」


 「……んん……? ……んー……分かった。じゃ、行こか。ショウエイくんはここで待っといて。すぐ、戻ってくるから」


 「……はい。分かりました」


 果たせない約束を守るべく、プティマと共に森を出ていくルナレジェン。

 翔英はその背中を見送ると、ゆっくりと地に腰を下ろした。


 「(……なんか俺……今回何にもしてない気がするなあ……)」


 そう思うのも無理はない。

 

 翔英は毎回、参戦するたびにボロボロになっていた。

 彼は、そうなりながらも戦い抜いてきた。


 しかし、今回は全く傷を負っていない。

 少し走って疲れたくらいだ。


 こんなに重症になっているリュノンを見ていると、申し訳なさも出て来る。


 まあでも、無事に戦いを終えられたならそれに越したことはない。

 それに、傷を負わなくていいぐらい強くなったとも言える。


 「……あ……リュノン。目ェ覚めたか」


 「……ショウエイ……」


 起きたリュノン。

 翔英の名前を呟くと身体を起こし、辺りを見渡した。

 

 「……回復してもらったみたいだよ、リュノン」


 「……そうみたいだな。…………ルナさんはどこだ?」


 「グランデのとこに行ったよ。すぐ戻ってくるってさ」


 「……そうか……」


 空を見上げながら、気絶する前のことを思い浮かべていくリュノン。 

 今度は翔英に目を向けると、照れくさそうに口を開いた。


 「……ありがとな……ショウエイ……。礼を言うのが遅くなったよ」


 「え? 礼? いや、いいよあんなことで。俺はただ、恩を返しただけだからさ」


 「ははは、ショウエイらしい反応だな。――――まあ、でも、ありがとう。それだけ受け取っといてくれ」


 「……おう……!!」

 

 ――――本当によかった。


 いつものような微笑みを復活させてくれた。

 いつものような明るさを蘇らせてくれた。


 詳しいことは知らないし、聞くつもりもない。


 けど、リュノンは翔英と同じように、悲しみの道を歩いてきたのだろう。

 だからこそ、翔英とリュノンはこうして心を開き合えたのかもしれない。


 これからも共に、リュノンと戦っていきたい。

 いや、戦って行こう。

 

 あの子の笑顔を取り戻すまで。

 

 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 その後、ルナレジェンは二人の元へと戻ってきた。

 巨大化した彼女の両腕は、グランデとプティマを抱えていた。


 グランデは死亡。

 それを見たプティマはショックのあまり気絶したらしい。


 ルナは近くの町でルコートとプティマを拘束。

 死亡したグランデとキャトロングも同じく移動された。


 翔英、リュノン、ルナレジェンの三人は、ルナが戻って来てすぐに都市へと帰還した。


 後日、グランデとキャトロングは火葬。

 ルコートとプティマは、地下牢へと投獄された。

 

 プティマはずっと喚き散らしていた。

 それを見たルナは流石に申し訳ないと思ったのか、毎日のように彼女の元へと話をしに行った。


 プティマと話したことで盗賊団の詳細が見えたルナレジェンは、軍や人々に彼らの情報を公開した。

 

 ルコートは投獄されてからもほとんど言葉を離さなかった。

 が、数日後、リーダーの後を追いかけるように死亡したらしい。


 ともあれ、十年以上に渡り暗躍し続けていた盗賊団は壊滅。

 もう、小さな町が強奪の恐怖に怯えることもないし、彼らのことは過去の歴史として片づけることができる。

 これも三人、いや、四人の活躍によるものだ。


 まだまだ戦いが終わったわけではない。

 だがこうして、リュノンとグランデの長年に渡る戦いは終結した。

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