第二百三十二話 『因縁の壊滅』
「――――お、来たか……」
ゆっくりと、森へと戻って来た翔英とリュノン。
翔英が重症のリュノンへと肩を貸しながら歩いている。
そんな二人をルナレジェンが迎える。
「……!! リュノン……!! 大丈夫か……!?」
「すいません……!! リュノンの治療をお願いします……!!」
「……ボクも治療は得意やないけど……。やるしかないか……。――――あ……。そうだ、君。ちょっとリュノンのこと治してやってくれん? さっきそいつにやったみたいにさ」
歩いていた内に気絶していたリュノン。
そんな彼の傷を一刻も早く治すべく、後ろで突っ立っている敵にお願いするルナレジェン。
「……はァ……? なんで……アタシが……!! それよりも……いつんなったらボスのとこに連れてってくれんのよォ……!!」
後ろにいるプティマが反発する。
彼女との隣では、ルコートがぶっ倒れている。
――――翔英がリュノンの元に行った後。
ルナが目を逸らした隙に、プティマはルコートを回復していた。
目を覚ましたルコートは即ボスを助けに向かおうとするが、一瞬でルナにボコられて重症に逆戻り。
プティマが回復能力を持っていることを知らなかったルナは、一応プティマを気絶させようとするが、「もう回復しないから許して」とお願いされたので辞めた。
それから、リュノンと翔英が戻ってくるまで、プティマとルコートを見張りながらこの場で過ごしていた。
まあ、プティマを気絶させてから二人を助けに行ってもよかったが、万が一逃げられる心配があったし、「あの二人ならきっと大丈夫だろう」と思っていたため行かなかった。
「……分かった分かった。じゃあ、リュノンを治したら連れてったるから。はよ治してや」
「…………分かったわよォ……」
渋々リュノンの治療を開始するプティマ。
その隙にルナは翔英に耳打ちする。
「……で、ショウエイくん……。どうなったん……?」
「……はい。俺が着いたときには既に、リュノンはグランデを倒していました。リュノンの方も、重症でしたけど……。……グランデは、森を抜けて東に行ったところで倒れていましたが、多分死んでます……」
「…………そっか。了解。……リュノン、勝ったんやな……」
リュノンとは、試験官を担当した時からの長い付き合いだ。
その時からずっと、リュノンは言っていた。
「どうしても、倒したい奴らがいる」と。
その目的をようやく達成できたのか。
年は一回り近く離れているが、ルナにとって、リュノンは弟のような存在だ。
彼のことを想い、ルナは少しだけ涙を浮かべた。
「――――はい。終わったわよ」
そうこうしているうちにプティマが戻って来た。
まだリュノンは眠っているようだが。
「……結構ひどいケガだったから、目を覚ますのに何分か掛かると思うわ。――――それよりほら、約束守ってよ」
「……んん……? ……んー……分かった。じゃ、行こか。ショウエイくんはここで待っといて。すぐ、戻ってくるから」
「……はい。分かりました」
果たせない約束を守るべく、プティマと共に森を出ていくルナレジェン。
翔英はその背中を見送ると、ゆっくりと地に腰を下ろした。
「(……なんか俺……今回何にもしてない気がするなあ……)」
そう思うのも無理はない。
翔英は毎回、参戦するたびにボロボロになっていた。
彼は、そうなりながらも戦い抜いてきた。
しかし、今回は全く傷を負っていない。
少し走って疲れたくらいだ。
こんなに重症になっているリュノンを見ていると、申し訳なさも出て来る。
まあでも、無事に戦いを終えられたならそれに越したことはない。
それに、傷を負わなくていいぐらい強くなったとも言える。
「……あ……リュノン。目ェ覚めたか」
「……ショウエイ……」
起きたリュノン。
翔英の名前を呟くと身体を起こし、辺りを見渡した。
「……回復してもらったみたいだよ、リュノン」
「……そうみたいだな。…………ルナさんはどこだ?」
「グランデのとこに行ったよ。すぐ戻ってくるってさ」
「……そうか……」
空を見上げながら、気絶する前のことを思い浮かべていくリュノン。
今度は翔英に目を向けると、照れくさそうに口を開いた。
「……ありがとな……ショウエイ……。礼を言うのが遅くなったよ」
「え? 礼? いや、いいよあんなことで。俺はただ、恩を返しただけだからさ」
「ははは、ショウエイらしい反応だな。――――まあ、でも、ありがとう。それだけ受け取っといてくれ」
「……おう……!!」
――――本当によかった。
いつものような微笑みを復活させてくれた。
いつものような明るさを蘇らせてくれた。
詳しいことは知らないし、聞くつもりもない。
けど、リュノンは翔英と同じように、悲しみの道を歩いてきたのだろう。
だからこそ、翔英とリュノンはこうして心を開き合えたのかもしれない。
これからも共に、リュノンと戦っていきたい。
いや、戦って行こう。
あの子の笑顔を取り戻すまで。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
その後、ルナレジェンは二人の元へと戻ってきた。
巨大化した彼女の両腕は、グランデとプティマを抱えていた。
グランデは死亡。
それを見たプティマはショックのあまり気絶したらしい。
ルナは近くの町でルコートとプティマを拘束。
死亡したグランデとキャトロングも同じく移動された。
翔英、リュノン、ルナレジェンの三人は、ルナが戻って来てすぐに都市へと帰還した。
後日、グランデとキャトロングは火葬。
ルコートとプティマは、地下牢へと投獄された。
プティマはずっと喚き散らしていた。
それを見たルナは流石に申し訳ないと思ったのか、毎日のように彼女の元へと話をしに行った。
プティマと話したことで盗賊団の詳細が見えたルナレジェンは、軍や人々に彼らの情報を公開した。
ルコートは投獄されてからもほとんど言葉を離さなかった。
が、数日後、リーダーの後を追いかけるように死亡したらしい。
ともあれ、十年以上に渡り暗躍し続けていた盗賊団は壊滅。
もう、小さな町が強奪の恐怖に怯えることもないし、彼らのことは過去の歴史として片づけることができる。
これも三人、いや、四人の活躍によるものだ。
まだまだ戦いが終わったわけではない。
だがこうして、リュノンとグランデの長年に渡る戦いは終結した。




