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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百三十話 『百も承知』

 ――――その頃、森の中では。


 「……なんや……これ……」


 休憩していたルナレジェンが出発。

 出入口付近へと到着していた。


 「……!! ルコート……!!」


 彼女に連れられているのはプティマ。

 近くに倒れている仲間を発見し、駆け寄っていく。


 「……こいつも仲間か……。でも、ボスじゃなさそうやな……。ってことは、リュノンはボスを追いかけてるってのが正解か……。――――ところでなんなん……? このバカでかいグローブ…………って答える気、ないか」

 

 プティマは倒れるルコートに集中している。

 ルナの質問は耳に入らない。


 「……ん……?」


 そんなルナ。

 グローブの中から気配を察知。


 「……あれ……!? 誰かいるの!? ねえ!! 誰でもいいから出るの手伝って欲しいんだけど!!」


 「……その声……ショウエイくん!?」


 「ルナさん!! よかった!! ルナさん、ちょっとここ開けてください!!」


 「……なんかようわからんけど……。了解したわ」


 翔英の声を聞いたルナは腕を変化。

 鉄のような重さを持つグローブを持ち上げた。


 「おおっ!! ありがとうございますルナさん!!」


 「何しとんの?」


 「敵の能力に捕まっちゃって。……あっ、それより、リュノンは!? 後、あいつも!!」


 「さあ。多分、リュノンそいつ追いかけてるんやと思う」


 「……!! 分かりました。外ですよね。俺、行きます!!!」


 復活した翔英。

 急ぎ、リュノンを追いかける。


 ルナはすぐに行けない。

 ここに二人、いるから。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ――――終わった……のか……。


 目の前で苦しみを見せる仇敵。

 奴はもう、動けない。


 霊体をさっきみたいに出したとしても、同じように動くことすらできない死に体が出て来るだけだ。


 こいつはもう、終わりだ。


 「……くっ……くそっ……くそおっ……!!」


 ――――そう。

 今のこいつには、こうやって喚くことしかできない。

 普段の余裕はどこにもない。


 「……最後に……お前に……聞いておきたいことがある…………」


 「…………?」


 リュノンが彼に近づきながら言う。

 

 リュノンも重症だが、グランデほどではない。

 今、敵をどうするかの権利を持っているのは、リュノンの方だ。


 ――――リュノンには、グランデに会ったら、聞いておきたいことがあった。


 当然、聞かなければならないことだ。

 だが、聞くのが恐ろしかった。


 もう、望みはほとんどないと分かっていたから。

 敵の答えが怖かったから。 


 あれから、七年以上の月日が経っているのだ。

  

 でも、「もしかしたら」

 どこかでそう思っている自分も、確かに存在する。


 「……俺の……妹は……。……ルージェは今、何をしている……。……答えろ……」


 「…………ああ……? 妹……?」


 リュノンの問いに、グランデは息を切らしながら目を丸くする。

 彼の顔をじろじろと見つめ、質問の意味を考える。


 「……そうだ……。昔、お前たちに連れ去られた、ルージェ・アーリー……。お前には、覚えていないとは言わせないぞ……」


 「………ルージェ……アーリー……。…………はっ……! そうか……あの時の……」


 リュノンの赤髪と顔立ちを見たグランデは、あの時の記憶を呼び起こす。

 随分昔の話なので、思い出すのに時間が掛かってしまった。

 

 話していないリュノンのことは覚えていないが、もちろん、ルージェのことは記憶にある。

 何しろ、自身の経歴で初めて、盗んだ『人』だから。


 「……思い出したか……。だったら答えろ……。あれから、ルージェはどこで何をしていたんだ……。そして今、何をしているんだ……」


 「…………さあな……」


 「……!! なんだと……!!? ふざけるな……!! 知らないはずがないだろ!!!」


 「本当だ……。嘘はつかない……。この状況で嘘をついて……俺に何の得があるんだ……」


 「……じゃあ……!! 知らないってどういうことか説明しろ!!!」


 「…………あの女は、売ったんだ……。あの日から数日経った後、人手を欲しがっていた奴らにな……。かなり高値で売れたよ……。よく覚えてる」


 「……!! 売った……!?」


 独断だった。


 他のメンバー、もちろん、ルージェにも相談せず、グランデはルージェの未来を決めた。


 綺麗な赤髪に加えて、あの美貌。

 まだ幼いこともあり、ルージェを高額で買いたい者が絶対にいると考えたから。


 当然、人身売買は禁止されている。

 密売だ。


 「……そうだ。……だから本当に、あの女が今何をしているか……俺は知らない……。……だがまあ、間違いなく死んでるだろうな……」


 「…………ああ………」


 やはり、そうだったか。

 分かっていたよ。


 端から「復讐」のために動いていたんだ。

 期待などしていない。


 ……それが、分かっただけで、いい。


 「(……そうだ……。こいつを動揺させて…………)」


 グランデ、最後のあがきを試みる。

 

 「あの女がこいつの妹」だという情報。

 それを活かさない手はない。


 「……おい……思い出して来たぜ……。あの女……ルージェだっけか……? 確か死んだって、買った奴が言ってたな……。七年くらい前だったか……? 環境に耐えられずに自殺したってよ……」


 「………………………」


 「それに、こんなことも聞いたな……。ルージェは……毎晩言ってたんだってよ……。『私がこんな目に遭ってるのは、お兄ちゃんのせいだ』『絶対に許さない』ってな……。……可哀想だな……ルージェ……。お前のせいでよ……」


 「………………………」


 「(ははは……ショックを受けろ……!! 動揺しろ……!! そのまま倒れろ……!!)」


 グランデが最後に繰り出したのは精神攻撃。 

 

 適当に考えながら言っているが、きっとかなりのダメージを負うはずだ。


 これで倒れてくれたら、狙い通り。

 その隙に、何とか逃げ延びてやる。


 そう考えるグランデだが――――リュノンは一歩踏み出した。


 「……な……!!」


 「……ああ、その通りだよ」


 今更、何かを聞いて動揺することなどない。

 彼はもう、全てのショックを受けて来たのだ。


 「……それから……お前は殺すよ。……ルージェの仇を討たせてもらう」


 リュノンは剣を構えた。

 

 もう、盗賊団は終わりだ。

 こいつから引き出せることはない。


 それよりも、こいつを裁く権利は、自分にある。

 

 「……!! 待て……!! 頼む……!!! 辞めてくれえ……!!!!」


 「無理だ」


 「ひ……!! ひああああ!!! …………がっ……!!」


 リュノンの剣が、グランデに突き刺さった。

 恐怖に引きつった顔を浮かべながら、うつ伏せに倒れ込む。


 「…………ち……くしょう………」


 そして絶命。

 

 リュノンの戦いは、終わった。

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