第二百二十五話 『共同戦線』
一人では勝てない。
この二人の連携を目の当たりにして、そう考えていた。
だから、彼が来るまで待っていた。
向こうで送り出した彼が、こちらの自分に追いつくのを待っていた。
ようやく――――来てくれた。
彼がこの場にいるのは偶然だが、これは天がよこしてくれた参戦だと、リュノンは捉えた。
そして、彼の存在にまた助けられたことに感謝した。
「……貴様か……」
駆け付けた翔英に攻撃されたルコートが呟く。
彼が接近していることは分かっていたが、リュノンの妨害で反応できなかった。
「……もう来たのか……。随分早かったな……。いや、我々がこの男に手こずりすぎたのか……」
リュノンの顔面パンチを喰らって倒れていたグランデも立ち上がった。
早々にリュノンの防壁を突破するという作戦は失敗に終わった。
思っていたよりも攻略に時間が掛かり、相手の合流を招いてしまったようだ。
「……助かったよ……ショウエイ……」
「気にするな。これで二対二、対等だ」
「ああ、これなら、負ける気がしないぜ!!!」
肩を並べて戦闘態勢に入る翔英とリュノン。
彼ら二人がこうして共同戦線を張るのは、ロッツ山でのステップラー&ルラール戦、そして、レウラ戦以来の三回目だ。
「ルコート……。もう一人の奴はどうなってる……?」
三人目が合流したらいよいよまずい。
しかもプティマ曰く超人とのことだ。
そいつの様子が気になるグランデ。
「ん、ああ……。…………おお、プティマと一緒に地の中にいる」
「なにっ……!? ……やはり移動を読んできたか……。あの二人を埋めておいたのは正解だったな……。――――とすれば、もう一人がここに来る可能性はかなり低い。ルコート、少し予定が変わったが、この二人を突破すれば終わりだ。――――行くぞ」
「……了解だ……」
対峙するグランデとルコートも戦闘態勢へ。
ルコートは、愛用のグローブを手元に。
グランデは空手の達人のように、息を整えながら拳を構えた。
「……ショウエイ……。悪いけどお前は、あのグローブを持ってる方を頼む。……もう一人の方、あのリーダーの野郎は俺がやる……」
「……分かった。気を付けろよリュノン」
耳打ちで行動を合わせる翔英とリュノン。
リュノンの方は再び分身を二体作り出す。
「じゃあ、俺から行く……!!」
先にリュノンが駆けて行った。
ターゲットは作戦通り、リーダーのグランデ。
だがやはり、その前にルコートのグローブが立ちはだかる。
大きな口を開けながら、リュノンを丸ごと包み込もうとする。
――――でも今度は、一人じゃない。
「よし……!!!」
翔英が開いたグローブを代わりに受け、ルコートに一撃。
その横をリュノンが通り過ぎる。
後ろで構えるグランデの元に、三体同時に拳を突き付けた。
「うおっ……!!」
先はルコートとの連携で圧倒していたが、一対一、いや、一対三ではリュノンが圧倒的に優勢だ。
さすがに速攻とはいかないが、上手く攻撃を回避しながら的確に打ち込んでいく。
だがやはりグランデも只者ではなく、急所への攻撃はギリギリやり過ごしている。
「ボス……!!」
「いやいや、お前の相手は俺だよ!!」
防戦一方の主を救うべく、後ろへと飛び出すルコート。
だが、戦闘中に背中を向けるとは愚の骨頂。
その隙に、翔英が重い斬撃を上げる。
「ぐっ……!!」
こちらの方も、力の差は明確だ。
これまで、数々の強敵に打ちのめされ続け、立ち上がり続けたこの男。
今更、いち盗賊団の人間ごときに負けるはずがない。
――――次々と翔英の斬撃が決まっていく。
ルコートはサポートタイプ。
武器はこのグローブだけ。
彼は戦闘に向いていないし、タイマンなんてもっての外だ。
一対一の高速戦闘では、グローブを繰り出す暇なんてない。
「……くそっ……!!」
「そらっ……!!!」
投げてきたグローブを回避し、重い一撃を決める翔英。
ルコートは血を吐きながら、地面に倒れ込んだ。
「――――よしっ……!! 今行くぞリュノン……!! ……いやっ待てよっ……」
リュノンに加勢しようとする翔英。
しかし、この前の戦いのことを思い出し、踏みとどまった。
「ミドルハイムでのジェシスとの戦い」
翔英はジェシスに勝利することができたが、完全に動きを止めずにティローナの元へと行ってしまった。
結局、この行動が仇となり、這いずって来たジェシスに邪魔され、トライフに負けてしまった。
あの時はティローナがいたおかげで何とかなったが、同じ過ちをするわけにはいかない。
翔英は、倒れ込むルコートの元へ行くと、彼の様子を確認した。
「……ちっ……貴様のような奴が……こんなところに来るとは……」
起きている。
まだ、意識はある。
「……ごめん。ちょっと眠っててもらうわ」
翔英は剣を上に上げた。
いくら悪人とはいえ、人を殺したくはない。
剣だから加減が難しいが、腹の辺りを上手く斬れば行動不能にできるはずだ。
「はっ……!! …………えっ!?」
だが、振り下ろす直前、急に辺りが真っ暗になった。
上を見上げると、巨大な掌のような物が覆い被さって来ていた。
「……でかすぎんだろっ……!!」
さっき投げていたグローブ。
それが、巨人のようなサイズとなり、翔英の全身を包み込んだ。
「……残念だったな小僧」
あがきが決まった。
ルコートはボロボロの身体を起こし、近くで戦闘中のグランデとリュノンの元へと歩き出した。
「なっ……!! ショウエイ!? 閉じ込められちまったのか……!?」
「さすがはルコート。仕事ができる奴だ!!」
「がっ……!!」
近くに置いてある巨大なグローブに一瞬気を取られるリュノン。
グランデからの反撃を一発もらってしまった。
「……今、行きます……ボス……」
そこへ向かうルコート。
これじゃあ、前と同じ。
――――と、思われたが、
「ぐあっ……!!!」
ルコートが苦悶の表情を浮かべた。
彼の背中には、焦げたような跡が出来ている。
「……当たったかな……? 当たったよな……?」
グローブに閉じ込められている翔英。
彼が、指の辺りの隙間から、雷魔法を飛ばしたのだった。
出入りできるのは、小動物くらいの小さな隙間だ。
こっからだと薄っすらとしか覗けない。
だが、翔英は一発目で当てて見せた。
真っすぐ先の、敵の背中へと。
ルコートは勢いよく前に倒れ込んだ。




