第二百二十一話 『怪物の力』
一方、グランデ盗賊団のアジトでは――――
「――――どうだ……? ルコート。奴らはどうなってる?」
引っ越しの準備を急いで整えているグランデ。
彼の手元には、プティマとキャトロングが選んだ宝物と生活用品。
そして、二人の身体がある。
一刻も早く、脱出したいところだが……
「……分身は消えていない」
「……消えていない……? キャトロングとプティマは、例の分身使いと戦っているのか?」
「……そのはずだ。……いや、消えてはいないが、動きは止めている……」
「……そうか……。我々を警戒して、分身を留めているのだな。だがおそらくその状態では、あの二人に勝つことはできないはずだ」
「……それを見越してか……あの三人のうちの一人が、キャトロングとプティマの元へ向かっている……。相当速い。すぐに着きそうだ」
「なんだと……!? それはまずいな…………。――――よし、ルコート。今すぐ脱出しよう。今の分身使いの守りなら、たやすく突破できるはずだ」
「……了解した……」
出発準備、完了。
タイミングはここしかない。
分身軍団の守りを突破して、新しい世界へ行くために。
グランデとルコートは、それぞれ同胞を背負い、荷物を手に持ち、長らく過ごしたアジトから出た。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
――――その、数分後。
リュノンの元に、ルナレジェンが到着した。
「……助かりました……。ルナさん……」
ルナレジェンが現れたことで、とりあえずリュノンは危機脱出。
再び、意識も各地に飛ばすことができる。
「リュノン、お前は、出口マンマークや。ここはボクに任しとき」
「はい……!! 分かりました……!!!」
ルナレジェンの指示を受け、リュノンは一旦戦場から脱出。
森中に集めていた分身も、一気に捜索に戻っていく。
「……行かせるわけないじゃないィ!!」
主からの命令を遂行しようと、離脱に入るリュノンを追跡するプティマ。
上空へ飛び上がり、ハンマーを彼に向けた。
だが、当然――――
「行かせるわけないやん。ボクがおるんやで」
再び腕を巨大化させたルナがブロック。
そして、プティマを反対方向へ吹っ飛ばす。
「ぎゃあッ!!! ……何なの……その腕ェ……!!」
「……君ら二人、もう終わりやね」
今度は両腕をゴリラのように変化させ、行く手を遮るルナレジェン。
森の中ということもあり、リュノンの後ろ姿は完全に見えなくなった。
「……あーあ。逃げられちゃったわァ。……でも、まあいいわ。時間は稼いだし。『今』のあたしたちの仕事は、あんたの足止めね」
「その通りだな、プティマ。俺たちの命を持って、ボスの歩みを支えるのだ……!!!」
リュノンを追えないと判断するや否や、目的変更。
ハンマーを持ったプティマと、釣り竿を持ったキャトロング。
今度は逆に、二人でルナレジェンの行く手を阻もうとする。
「――――ボス? やっぱり、他でも動いとるんやね。――――まあでも、君らに足止めなんて無理やで」
「何言ってんのよ? いくら聖鳳軍って言ったってさァ。あたしらを舐めすぎじゃないのォ?」
「そうだ。我々とて、そこいらの奴とは――――なにィ!!?」
「えェェ!!? キャトロングゥ!!!!」
御託を並べていた間に、ルナレジェンが仕掛けた。
足を馬に変えて一気に距離を詰め、熊のような爪でキャトロングの胸を突き刺している。
「……ば……馬鹿な…………だが……これは……どうだ…………!!!」
瀕死のダメージを受けたキャトロングだが、何とか指を動かし釣り竿を操作。
リュノンとの対戦でも見せた無限に伸び続ける釣り竿が、ルナの背中に一直線。
しかし、
「……ぐァァ……!!!」
それも彼女には当たらず。
それどころか、回避したルナの軌道にいた自身の胸に突き刺さった。
「キャトロングゥ!!!!」
「お終いや、君」
ルナレジェンがキャトロングの顔面を蹴り飛ばす。
キャトロングは森の奥へと大きく吹っ飛んだ。
「あれ? ちょっとやりすぎたか……。……まあええわ。――――はい、次は君ね」
薄ら笑いを浮かべながらプティマに迫るルナレジェン。
そんな彼女に、プティマは心の底から激しい恐怖を覚える。
身体の一部分が動物のように変化するのも、人間を相手にしていないような怖さを感じさせた。
「…………な……何者なのよ……あんた…………」
「聖鳳軍一軍、ルナレジェン・ペサンテや。よろしく」
「……!! 一軍……!!?」
国が誇る最高戦力。
そんな奴が、なんでこんなところに来るんだよ。
「――――あんま長話してる暇ないねん。可愛い後輩たちが待っとるんでな」
「…………ふっ……ふふふ……ふふふははははッ!! 一軍ねェ……!! そうねェ……!! それじゃあ勝てるわけないわッ!! ――――でも残念ッ!! そんなことを聞いても、あたしが逃げることはないの。あたしは死なないものッ……!! あたしは戦うわッ!!! あの人のためにィ!!!」
三度、上空へと飛び上がるプティマ。
プティマの身体能力も、十分人間離れしている。
普通ハンマー持ちながら、三メートル以上もジャンプできないだろう。
「脳天かち割れなさいよォ!!!」
高く飛べば飛ぶほど、振り下ろした時の大きさが変化するハンマー。
この特殊な武器を持って、ルナレジェンに凶器を振りかざす。
「は……!!!!」
対するルナレジェンは、再び両腕を巨大化。
振り下ろしたハンマーを楽々と受け止めた。
「ちィ……!! 怪物めェ……!!」
そのままハンマーごと木に叩きつけるルナレジェン。
プティマは頭を血を流しながら、地面に倒れ込んだ。
「二人目やね」
「う…………くそッ…………。なんて……奴なのォ……!!」
完全に気絶させようと、ルナレジェンはプティマに手を伸ばす。
だが――――プティマは笑った。
「はァッ……!!!」
胸に力を込めるプティマ。
すると一瞬、彼女の肉体に変化が見える。
「来よったな……!!!」
だが『それ』を予測していたルナレジェンがプティマの手を高速で掴んだ。
これを絶対に見逃すまいと、ルナは常に構えていた。
さっきの『あたしは死なない』というセリフからも、まだこれを取っていることは明らかだった。
「――――なっ……!! 何すんのよあんッ……」
――――消えた。
プティマもルナレジェンも。
一瞬で、この場から消えた。




