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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百二十一話 『怪物の力』

 一方、グランデ盗賊団のアジトでは――――


 「――――どうだ……? ルコート。奴らはどうなってる?」


 引っ越しの準備を急いで整えているグランデ。

 彼の手元には、プティマとキャトロングが選んだ宝物と生活用品。

 

 そして、二人の身体がある。


 一刻も早く、脱出したいところだが……


 「……分身は消えていない」


 「……消えていない……? キャトロングとプティマは、例の分身使いと戦っているのか?」

 

 「……そのはずだ。……いや、消えてはいないが、動きは止めている……」


 「……そうか……。我々を警戒して、分身を留めているのだな。だがおそらくその状態では、あの二人に勝つことはできないはずだ」


 「……それを見越してか……あの三人のうちの一人が、キャトロングとプティマの元へ向かっている……。相当速い。すぐに着きそうだ」


 「なんだと……!? それはまずいな…………。――――よし、ルコート。今すぐ脱出しよう。今の分身使いの守りなら、たやすく突破できるはずだ」


 「……了解した……」


 出発準備、完了。

 タイミングはここしかない。


 分身軍団の守りを突破して、新しい世界へ行くために。


 グランデとルコートは、それぞれ同胞を背負い、荷物を手に持ち、長らく過ごしたアジトから出た。

 

 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 ――――その、数分後。


 リュノンの元に、ルナレジェンが到着した。


 「……助かりました……。ルナさん……」


 ルナレジェンが現れたことで、とりあえずリュノンは危機脱出。

 再び、意識も各地に飛ばすことができる。


 「リュノン、お前は、出口マンマークや。ここはボクに任しとき」


 「はい……!! 分かりました……!!!」


 ルナレジェンの指示を受け、リュノンは一旦戦場から脱出。

 森中に集めていた分身も、一気に捜索に戻っていく。


 「……行かせるわけないじゃないィ!!」


 主からの命令を遂行しようと、離脱に入るリュノンを追跡するプティマ。

 上空へ飛び上がり、ハンマーを彼に向けた。

 

 だが、当然――――


 「行かせるわけないやん。ボクがおるんやで」


 再び腕を巨大化させたルナがブロック。

 そして、プティマを反対方向へ吹っ飛ばす。


 「ぎゃあッ!!! ……何なの……その腕ェ……!!」


 「……君ら二人、もう終わりやね」


 今度は両腕をゴリラのように変化させ、行く手を遮るルナレジェン。

 森の中ということもあり、リュノンの後ろ姿は完全に見えなくなった。


 「……あーあ。逃げられちゃったわァ。……でも、まあいいわ。時間は稼いだし。『今』のあたしたちの仕事は、あんたの足止めね」


 「その通りだな、プティマ。俺たちの命を持って、ボスの歩みを支えるのだ……!!!」


 リュノンを追えないと判断するや否や、目的変更。

 ハンマーを持ったプティマと、釣り竿を持ったキャトロング。 

 今度は逆に、二人でルナレジェンの行く手を阻もうとする。


 「――――ボス? やっぱり、他でも動いとるんやね。――――まあでも、君らに足止めなんて無理やで」


 「何言ってんのよ? いくら聖鳳軍って言ったってさァ。あたしらを舐めすぎじゃないのォ?」


 「そうだ。我々とて、そこいらの奴とは――――なにィ!!?」


 「えェェ!!? キャトロングゥ!!!!」


 御託を並べていた間に、ルナレジェンが仕掛けた。

 足を馬に変えて一気に距離を詰め、熊のような爪でキャトロングの胸を突き刺している。


 「……ば……馬鹿な…………だが……これは……どうだ…………!!!」


 瀕死のダメージを受けたキャトロングだが、何とか指を動かし釣り竿を操作。

 リュノンとの対戦でも見せた無限に伸び続ける釣り竿が、ルナの背中に一直線。


 しかし、


 「……ぐァァ……!!!」


 それも彼女には当たらず。

 それどころか、回避したルナの軌道にいた自身の胸に突き刺さった。


 「キャトロングゥ!!!!」


 「お終いや、君」


 ルナレジェンがキャトロングの顔面を蹴り飛ばす。

 キャトロングは森の奥へと大きく吹っ飛んだ。


 「あれ? ちょっとやりすぎたか……。……まあええわ。――――はい、次は君ね」


 薄ら笑いを浮かべながらプティマに迫るルナレジェン。

 そんな彼女に、プティマは心の底から激しい恐怖を覚える。


 身体の一部分が動物のように変化するのも、人間を相手にしていないような怖さを感じさせた。


 「…………な……何者なのよ……あんた…………」


 「聖鳳軍一軍、ルナレジェン・ペサンテや。よろしく」


 「……!! 一軍……!!?」


 国が誇る最高戦力。

 そんな奴が、なんでこんなところに来るんだよ。


 「――――あんま長話してる暇ないねん。可愛い後輩たちが待っとるんでな」


 「…………ふっ……ふふふ……ふふふははははッ!! 一軍ねェ……!! そうねェ……!! それじゃあ勝てるわけないわッ!! ――――でも残念ッ!! そんなことを聞いても、あたしが逃げることはないの。あたしは死なないものッ……!! あたしは戦うわッ!!! あの人のためにィ!!!」


 三度、上空へと飛び上がるプティマ。

 プティマの身体能力も、十分人間離れしている。

 普通ハンマー持ちながら、三メートル以上もジャンプできないだろう。


 「脳天かち割れなさいよォ!!!」


 高く飛べば飛ぶほど、振り下ろした時の大きさが変化するハンマー。

 この特殊な武器を持って、ルナレジェンに凶器を振りかざす。


 「は……!!!!」


 対するルナレジェンは、再び両腕を巨大化。

 振り下ろしたハンマーを楽々と受け止めた。


 「ちィ……!! 怪物めェ……!!」


 そのままハンマーごと木に叩きつけるルナレジェン。

 プティマは頭を血を流しながら、地面に倒れ込んだ。


 「二人目やね」


 「う…………くそッ…………。なんて……奴なのォ……!!」


 完全に気絶させようと、ルナレジェンはプティマに手を伸ばす。

 

 だが――――プティマは笑った。


 「はァッ……!!!」


 胸に力を込めるプティマ。

 すると一瞬、彼女の肉体に変化が見える。


 「来よったな……!!!」


 だが『それ』を予測していたルナレジェンがプティマの手を高速で掴んだ。

 これを絶対に見逃すまいと、ルナは常に構えていた。


 さっきの『あたしは死なない』というセリフからも、まだこれを取っていることは明らかだった。 


 「――――なっ……!! 何すんのよあんッ……」


 ――――消えた。

 

 プティマもルナレジェンも。

 

 一瞬で、この場から消えた。

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