第二百二十話 『直接対決』
「――――俺がさっき戦った奴と……ピンク髪の女……ルナさんが言ってた奴か……!!」
分身が敵を発見。
リュノン本体は、翔英とルナレジェンに詳細を報告する。
また向こうからリュノンの所に出てきたわけだが、今度の目的はきっと――――
「俺……戦います……!! こいつらと……!!」
「いや!! 待てリュノン!!」
分身を消して戦闘態勢に入ろうとするリュノン。
しかし、ルナがストップ。
「ルナさん……!! なんでですか……!?」
「落ち着けリュノン。そいつらの目的は、お前の足止めや。他の奴……おそらく、リーダーが脱出するためのな。だから分身を消したらアカン。奴らの思うツボや」
リュノンは焦っている。
今度こそ絶対に逃がさないという思いで、変に力が入ってしまっている。
今の彼に、敵の考えを読み、冷静な判断を下すことは難しい。
ルナレジェンを今回の任務に同行させたのは大きかった。
「……なるほど……。……でも、それじゃあ……こいつらには…………ぐっっ……!!」
リュノンが苦しそうな顔を見せる。
どうやら敵と対峙している分身が攻撃を受けたようだ。
他の分身の動きも止まってしまっている。
敵と戦い、しかも二対一だ。
当然、意識はそちらに持っていかれてしまう。
一刻も早く分身を消さなければ、こいつらに負けてしまう。
「分かっとる。――――だから、ボクが今すぐそこへ行く。場所は?」
「……西に……二十分ほど歩いたところです…………があっ……!!」
「了解や。ちょっと我慢しとき」
リュノンが敗北する前に、動き出すルナレジェン。
彼女は、足を馬のように変化させ、伝えられた場所へと一気に駆けて行った。
「大丈夫か!? リュノン!!!」
「……いや……結構ヤバいぜ……ショウエイ……」
「……そうか……」
残された翔英と、苦しむリュノン本体。
ここまで、特に何もしていない翔英。
体力は有り余っているが、どう動くのが正解なのか。
ルナレジェンの後を追っていくか?
でも、この状態のリュノンを一人で置いて言っていいのだろうか。
緊急だったため、ルナも指示を出す暇がなかった。
ここは、自分で判断しなければ。
……いや、放っておけない。
リュノンを放っておけない。
そう決める翔英だったが――――
「……ショウエイ……。俺のことは大丈夫だから……ショウエイも行ってくれ……」
「え……!? リュノン……」
「大丈夫だ、問題ない……。それよりも、奴らを絶対に逃がしたくないんだ……頼む……!!」
「……リュノン…………。……分かった……」
胸を握りながら、力強い目をした友の頼み。
その姿からは、彼がこの日に懸けてきた思いが手に取るように分かった。
こう頼まれたら――――行くしかない。
確かに、敵の目的はリュノンではないはずだ。
きっと、大丈夫だろう。
翔英は駆けて行った。
ただし、ルナレジェンとは別の方向。
目指すは、森の入口。
今リュノンが戦っている敵は、ルナレジェンが必ず何とかしてくれる。
それよりも、ルナの読みが当たっているのならば、自分が止めなくてはいけないのは、脱出を図ろうとしている奴らの方だ。
「……ありがとう……ショウエイ……」
駆けていく友の背中を見送った後、リュノンは静かに倒れ込んだ。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一方、その戦場となっているリュノン分身サイドでは――――
二人の犯罪者に、リュノンが追い詰められていた。
「――――何よこいつ。てんで大したことないじゃない。こんな奴に負けたの? キャトロング」
「……いや、さっきとは別人みたいにすっとろい。どうしたんだ? こいつ」
「……ちぃ……くそ…………」
視界がボヤける。
身体が重い。
戦えるような状態じゃない。
その上、二人ときた。
しかも別に弱くない。
両膝を着き、仇敵を見上げるリュノン。
分身を消さなければ、全くの勝機はない。
「……まあいいわ。さっさと終わらせよ。殺せるなら殺すに越したことはないでしょ?」
「そうだな。やってしまおう」
プティマ&キャトロング。
動けないリュノンを殺しに掛かる。
――――瞬間、リュノンは考えを巡らせる。
分身を消して戦った方がいいと。
二対一でも、ここに分身を集中させれば負けることはない。
でも、それじゃあ――――
奴らの逃走成功を許してしまうかもしれない。
それも、絶対に避けなければ。
――――リュノンは立ち上がった。
そして、入口付近以外の計六体を残して、他の分身を消した。
「(これなら……脱出する奴らを見ながら……こいつらとも戦える……)」
「え? まだやるの? ――――でも、無駄よォ!!!」
立ち上がったリュノンにハンマーを振り下ろすプティマ。
それをギリギリ回避するが、キャトロングの釣り竿が胸をかすめる。
「くそっ……」
――――甘かった。
六体を出しながらでは、戦うことができない。
敵が一人なら可能だっただろうが、今は二人だ。
しかもこの二人。
確実に敵に攻撃を与えられるような、見事な連携を取って来る。
長年にわたって犯罪手段の実行部隊を務めてきただけはある。
実によく効くコンビネーションだ。
――――しかも、
出入口付近に配置している分身たちも使い物にならない。
この状態では、敵が来たとしても突破を許してしまうだろう。
「キャトロング!! そのまま締め上げちゃってェ!! そしたらあたしが打ち砕くからァ!!!」
「了解だ!!!」
無限に伸び続ける竿が、リュノンをグルグル巻きに捕らえた。
他の分身たちも一緒に、地面に転がされてしまっている。
身動きの取れないリュノンに、大ジャンプを噛ましたプティマが襲い掛かる。
空高く飛ぶ程、無限に大きくなっていく、巨大なハンマーで。
「お終いよォ!!! …………あれ……?」
押し潰した感覚が無い。
反対に、止められているような感覚がある。
「……!! なァ!? 何ィィィ!!!」
押し返す。
野生動物のような巨大な腕が、プティマのハンマーを押し返す。
「お待たせ、リュノン」
「……待ってました」
腕を元に戻し、リュノンの前に立ち塞がる。
ルナレジェン・ペサンテ。
「なァ!? あッ!! あんたは、さっきのヤバい女ァ!!」
「神妙に縛に就きや。コソ泥さん」
バトンタッチ。
絶不調のリュノンに代わって、聖鳳軍一軍、ルナレジェンが相手をする。




