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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百二十話 『直接対決』

 「――――俺がさっき戦った奴と……ピンク髪の女……ルナさんが言ってた奴か……!!」


 分身が敵を発見。

 リュノン本体は、翔英とルナレジェンに詳細を報告する。


 また向こうからリュノンの所に出てきたわけだが、今度の目的はきっと――――


 「俺……戦います……!! こいつらと……!!」


 「いや!! 待てリュノン!!」


 分身を消して戦闘態勢に入ろうとするリュノン。

 しかし、ルナがストップ。


 「ルナさん……!! なんでですか……!?」


 「落ち着けリュノン。そいつらの目的は、お前の足止めや。他の奴……おそらく、リーダーが脱出するためのな。だから分身を消したらアカン。奴らの思うツボや」


 リュノンは焦っている。

 今度こそ絶対に逃がさないという思いで、変に力が入ってしまっている。

 今の彼に、敵の考えを読み、冷静な判断を下すことは難しい。


 ルナレジェンを今回の任務に同行させたのは大きかった。


 「……なるほど……。……でも、それじゃあ……こいつらには…………ぐっっ……!!」


 リュノンが苦しそうな顔を見せる。

 どうやら敵と対峙している分身が攻撃を受けたようだ。


 他の分身の動きも止まってしまっている。


 敵と戦い、しかも二対一だ。

 当然、意識はそちらに持っていかれてしまう。


 一刻も早く分身を消さなければ、こいつらに負けてしまう。


 「分かっとる。――――だから、ボクが今すぐそこへ行く。場所は?」


 「……西に……二十分ほど歩いたところです…………があっ……!!」


 「了解や。ちょっと我慢しとき」


 リュノンが敗北する前に、動き出すルナレジェン。

 彼女は、足を馬のように変化させ、伝えられた場所へと一気に駆けて行った。


 「大丈夫か!? リュノン!!!」


 「……いや……結構ヤバいぜ……ショウエイ……」


 「……そうか……」


 残された翔英と、苦しむリュノン本体。

 

 ここまで、特に何もしていない翔英。

 体力は有り余っているが、どう動くのが正解なのか。


 ルナレジェンの後を追っていくか?

 でも、この状態のリュノンを一人で置いて言っていいのだろうか。


 緊急だったため、ルナも指示を出す暇がなかった。

 ここは、自分で判断しなければ。


 ……いや、放っておけない。

 リュノンを放っておけない。


 そう決める翔英だったが――――


 「……ショウエイ……。俺のことは大丈夫だから……ショウエイも行ってくれ……」


 「え……!? リュノン……」


 「大丈夫だ、問題ない……。それよりも、奴らを絶対に逃がしたくないんだ……頼む……!!」


 「……リュノン…………。……分かった……」


 胸を握りながら、力強い目をした友の頼み。

 その姿からは、彼がこの日に懸けてきた思いが手に取るように分かった。


 こう頼まれたら――――行くしかない。


 確かに、敵の目的はリュノンではないはずだ。

 きっと、大丈夫だろう。


 翔英は駆けて行った。

 ただし、ルナレジェンとは別の方向。


 目指すは、森の入口。

 

 今リュノンが戦っている敵は、ルナレジェンが必ず何とかしてくれる。

 それよりも、ルナの読みが当たっているのならば、自分が止めなくてはいけないのは、脱出を図ろうとしている奴らの方だ。


 「……ありがとう……ショウエイ……」


 駆けていく友の背中を見送った後、リュノンは静かに倒れ込んだ。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 一方、その戦場となっているリュノン分身サイドでは――――


 二人の犯罪者に、リュノンが追い詰められていた。


 「――――何よこいつ。てんで大したことないじゃない。こんな奴に負けたの? キャトロング」


 「……いや、さっきとは別人みたいにすっとろい。どうしたんだ? こいつ」


 「……ちぃ……くそ…………」


 視界がボヤける。

 身体が重い。

 戦えるような状態じゃない。

 その上、二人ときた。

 しかも別に弱くない。


 両膝を着き、仇敵を見上げるリュノン。

 分身を消さなければ、全くの勝機はない。


 「……まあいいわ。さっさと終わらせよ。殺せるなら殺すに越したことはないでしょ?」


 「そうだな。やってしまおう」


 プティマ&キャトロング。

 動けないリュノンを殺しに掛かる。


 ――――瞬間、リュノンは考えを巡らせる。


 分身を消して戦った方がいいと。

 二対一でも、ここに分身を集中させれば負けることはない。


 でも、それじゃあ――――


 奴らの逃走成功を許してしまうかもしれない。


 それも、絶対に避けなければ。


 ――――リュノンは立ち上がった。


 そして、入口付近以外の計六体を残して、他の分身を消した。


 「(これなら……脱出する奴らを見ながら……こいつらとも戦える……)」


 「え? まだやるの? ――――でも、無駄よォ!!!」


 立ち上がったリュノンにハンマーを振り下ろすプティマ。

 それをギリギリ回避するが、キャトロングの釣り竿が胸をかすめる。


 「くそっ……」


 ――――甘かった。


 六体を出しながらでは、戦うことができない。

 敵が一人なら可能だっただろうが、今は二人だ。


 しかもこの二人。

 確実に敵に攻撃を与えられるような、見事な連携を取って来る。

 

 長年にわたって犯罪手段の実行部隊を務めてきただけはある。

 実によく効くコンビネーションだ。


 ――――しかも、


 出入口付近に配置している分身たちも使い物にならない。

 この状態では、敵が来たとしても突破を許してしまうだろう。


 「キャトロング!! そのまま締め上げちゃってェ!! そしたらあたしが打ち砕くからァ!!!」


 「了解だ!!!」


 無限に伸び続ける竿が、リュノンをグルグル巻きに捕らえた。

 他の分身たちも一緒に、地面に転がされてしまっている。


 身動きの取れないリュノンに、大ジャンプを噛ましたプティマが襲い掛かる。

 空高く飛ぶ程、無限に大きくなっていく、巨大なハンマーで。


 「お終いよォ!!! …………あれ……?」


 押し潰した感覚が無い。

 反対に、止められているような感覚がある。


 「……!! なァ!? 何ィィィ!!!」

 

 押し返す。

 野生動物のような巨大な腕が、プティマのハンマーを押し返す。 


 「お待たせ、リュノン」


 「……待ってました」


 腕を元に戻し、リュノンの前に立ち塞がる。

 ルナレジェン・ペサンテ。


 「なァ!? あッ!! あんたは、さっきのヤバい女ァ!!」


 「神妙に縛に就きや。コソ泥さん」


 バトンタッチ。

 絶不調のリュノンに代わって、聖鳳軍一軍、ルナレジェンが相手をする。

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