第二百十八話 『小さな采配』
「――――え……? どうしてですか……? ルナさん」
突如近づいてきたターゲット。
その元に急ごうとする翔英とリュノンだが、ルナレジェンが待ったを掛ける。
「変や」
「……変? 何がですか?」
「いきなり近くに出てくんのもそうやが、そっから動いてる様子もない。……その物だけ置いてってるって感じやわ」
今度はこちら側、ルナレジェン・ペサンテが敵の動きを考える。
点滅速度に変化がないことを見ても、物は出てきただけで動いていない。
奴らはまだ――――逃げてはいない。
この森のどこかに残っている。
おそらくこんなことをした意味は、こちら側をおびき寄せるためだ。
「……多分、ボクらが何を頼りに追跡してるか、バレたみたいやね。だから、その宝石か何かだけを別の場所に置いたんや。例の、一瞬で消える能力を使ってな」
「え……!? それじゃあ……もう手掛かりないってことですか……!?」
「……そうかもしれん。……けどまだ、投げんのは全然早い。リュノン、分身に宝探しさせといてや」
「宝探し……!?」
「うん。奴らがウェルビークで盗ったのが一個とは、これまでの被害から見ても考えにくい。それに、どれが反応してるか、ピタリと当てられるとも思えない。……おそらく奴らは、ウェルビークで盗んだ物全てを散り散りにしてるはずや。奴らの狙いは、『どれ』かを特定すること。今一直線に反応する方へ向かうのは、奴らの思うつぼや」
「……なるほど……。分かりましたルナさん!!」
ここまでの説明で、翔英とリュノンは理解した。
リュノンは言われた通りに、他の場所へ探索に向かう。
木の影や岩の下、地面の中など、宝探しゲームのように探し出した。
三人はこう考えた。
奴らは、『盗賊団』だ。
宝を手放して、そのままにするとは考えにくい。
どれか地雷かを確認したら、回収に来るはずだ。
「――――おっ……!! これは……!!」
その予想は完全に的中している。
リュノンの分身は木の影に、大きなダイヤのような宝を発見した。
この大きさは隠しにくいし、泥で汚したくないほど美しい。
野外に隠すには、気が引ける代物だ。
「ルナさん……!! 俺の一人が一個、お宝見つけました!!」
「マジで!? デカしたでリュノン!! でもまだ、そいつには触らんといて。その近くで一旦待機や」
すかさず次の指示を出すルナレジェン。
だが、内心かなりホッとしていた。
これが見つからなかったら、完全に物を特定されたことになる。
そうなれば、あの能力の前にもう追う術はなくなってしまっただろう。
しかし――――あった。
「リュノン、誰かがそれを取りに来る可能性が高いから、見といて。まだこの森に残ってる、または、戻ってくる確率も高い。あの出入口にも、人員配置や」
「了解……!!」
入口付近にいた分身を森の出口に張るリュノン。
計三体で歩き回りながらマーク。
誰かが通れば、音や気配で分かる位置だ。
あの瞬間移動をされたら意味がないが、そうするに越したことはない。
「それから、一個とは限らないから、何人かは宝探し続行。ボクとショウエイくんは、遠回りしながら、反応してるやつに近づいて行こ」
「分かりました……!!」
リュノンの分身は各地を探索&ゴールをマーク。
翔英、ルナ、リュノン本体は、ぐるりと回りながら反応する方へと向かって行く。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――――ルコート、どうだ? 奴らはどれに反応している?」
「…………していない。どれにも強い反応は見せていない……」
「……なんだと……?」
ルナレジェンの采配。
これは、グランデにとっても予想外だった。
「分身たちは依然、グルグルと森中を回っている。他の三人は、何も置いていない方向へ向かって行っている……」
「はァ!? 何それどういうことよォ!!」
「ボス!! どういうことですか!?」
焦りが爆発する実行者のキャトロングとプティマ。
ルコートも声を荒げてはないものの、内心ではかなり動揺している。
それは――――グランデも同じだった。
「(……馬鹿な……。物に反応してるのはないのか……? では、何に反応しているんだ……)」
推理が振り出し。
決めつけていたことが仇となる。
聖鳳軍は物に反応していない。
「…………ルコート。三人はどんな動きをしている?」
「ゴールが見えていない動きだ。あちこちフラフラしながら、不規則に歩いている。……一体が止まった。あそこは……プティマがダイヤを置いた場所に近い」
「おォ!! ボス! じゃあそれが反応してんじゃない!?」
「……いや、そこに一目散に行ったというわけではない。偶然見つけた可能性の方が高い」
「……確かに、あれは隠したとは言えないけど……」
プティマとルコートが話している間にも、グランデは敵の動きについて考える。
『物ではない』
それはやはり信じられない。
ウェルビークを襲撃してからすぐに追ってが来た。
敵は何かの反応を見ながら追ってきている。
それらから考えても、物か人なのは明らかだ。
というか、そうであってくれ。
……まさか……こっちの考えを読んだのか……?
本当は反応しているけど、そうじゃないフリをしているのか?
こちらの動きを掴むために……。
敵は、聖鳳軍だ。
考えすぎなんてことはない。
だとすれば――――
「みんな……。俺の考えが甘かった……。すまない……」
「え……!?」
三人、目をかっ開きながらグランデの方を見た。
――――謝罪。
この状況で、トップが謝っている。
それは、どうしようもない不安を与える、上に立つ者がするには早すぎる行動だった。
「奴らはもしかしたら、俺の考えを読んだのかもしれない。……いや、きっとそうだろう。だから、原因を特定することはできなかった……。むしろ、状況を悪くしてしまった……。――――本当に済まない」
「な……何言ってるのよボスゥ!! 謝んないでよそんなことで! まだそうと決まったわけじゃないじゃない!!」
「そうですよボス……!! あんたがいなかったら、俺たちはとっくに野垂れ死んでいるんだ……!! 大丈夫ですよ……!! きっと今回も、何とかなりますって……!!」
「……ありがとう、キャトロング、プティマ。……では、お前たちに、無事に生きるための仕事を与える。頼まれてくれるな」
部下の想いを再確認。
ルナの作戦をギリギリ見切ったグランデが、最後の勝負に出る。




