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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百十七話 『探り合い』

 「――――危なかったァ……!!!」


 帰還早々、焦りの声を挙げるプティマ。

 無事アジトへと戻って来た彼女だが、まだ心臓がバクバク言っている。

 

 あの仕掛けた来た女の目、氷のように冷たい物だった。

 後数秒遅れていたら、この身体がぺしゃんこになっていただろう。


 「なっ……!! プティマ……!! お前何やってんだ……!? まさか見つかっちまったのか……!?」


 すっかり元気になっていたキャトロングが彼女を出迎える。

 彼の後ろには、グランデとルコートの姿。


 「……しょうがないでしょォ!! あいつらの中に、かなりヤバい奴がいたんだからァ!! ――――それよりもボス!! あいつらがどうやってあたしたちを探してるか、多分分かったわよ!!!」


 「ほう。よくやったなプティマ。――――それで、何だったんだ?」


 「奴らの一人が、変な機械を持ってたの。その機械は、チカチカ点滅してたわ!」


 「……なるほど。それで我々を探索しているのか……。問題なのは、それが何に対して反応しているか……だな」


 人か物か。

 どちらかに反応しているのは間違いない。


 「そうだプティマ。お前、奴らに攻撃されそうになったんだろ? もしかして、お前に反応してるんじゃねえのか?」


 「……マジでェ? ……なんであたしだけ!? キャトロングやルコートにだって反応してるかもしれないじゃン!!」


 「……よし、キャトロング、プティマ。それを確かめてこい。奴らの少し近くに飛んで、お前らを追ってくるか確かめるんだ」


 「またあたしィ!? もう疲れたァ!!」

 

 「お前に反応してるかもしれないんだ。お前は行くしかないだろう」


 「……分かったわ。その代わりボス、今度あたしのお願い聞いてね」


 「……いいだろう」


 三度目の旅立ち。

 グランデはキャトロングとプティマに手をかざし、二人をリュノン達の近くに飛ばした。

 

 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「――――かなり近いで……」


 リュノンサイドでは、ルナレジェンが呟いた。

 手元の機械は、今までで一番早く鳴っている。

 もう、すぐ側に迫っているようだ。


 しかし、人っ子一人見つからない。

 やっぱり木しか見えない。

  

 「……やっぱもしかして、この下じゃないですか?」


 地面を踏み付けながら翔英が言う。

 

 だが、固い。

 とても掘ることはできない。


 「……うん、その可能性が高なって来たな。……だとしたら、この森のどっかに出入り口があるはずや。もう、この機械の出番は終了や。この下に繋がる入口を探そう」


 「はい……!!」

 

 目的を変え、動き出す聖鳳軍一行。

 探すは、どこにあるであろう、『門』


 そして、三人から少し離れた木の後ろでは――――


 「…………あいつら、反対方向にいったわよ」


 「ああ……。やっぱ、俺たちに反応しているわけではなさそうだな……」


 キャトロングとプティマがこっそり観察していた。

 先の反省を踏まえ、気付かれない距離を取っている。

 

 「……よし、じゃあ一旦撤収だ。ボスに報告するぞ」


 「分かってるわよ……」


 すぐにアジトへ帰還する二人。

 今度は何事もなく、任務を達成できた。

 

 「――――早かったな」


 戻って来た二人をグランデが迎える。

 その二人の表情から、何か有意義な物を感じ取るグランデ。


 「ボス……!! その機械、俺たちに反応してるわけじゃないようですぜ!!」


 「あたしたちには全く気付かず行っちゃったわ」


 「そうか……。――――ではやはり……」


 グランデは一つの結論を出した。

 

 アジトの奥にある部屋を開く。

 そこには、これまでに奪ってきた宝の数々が閉まってある。


 「奴らが追っているのはこの中のどれかだな」


 金銀財宝。

 間違いなく、この中の何かに反応している。


 「ええェ!? どうすんのよボスゥ!! ってことは、それ全部置いてかなくちゃいけないってこと!? せっかく集めたのにィ!!」


 プティマが不満を爆発させる。

 これまでプティマは、盗みを何度も成功させてきた。

 この部屋のコレクションは、彼女の頑張りの象徴なのだ。


 だが、それが敵をおびき寄せるんじゃ、持っているわけにもいかない。

 

 でも、これらを捨てるのはあんまりだ。


 「――――いや、そんなことをする必要はないぞプティマ。よく考えろ。今日、いきなりあいつらが来たことを考えても、反応しているのは、ウェルビークで盗んだどれかだ。他のは問題ない」


 「そっかァ!! 確かに!! ……でもあたし……どれがどこのか覚えてないわァ!!」


 「俺が覚えている。それも問題ない」


 「おおっ! さすがボスゥ!!!」


 ウェルビークの盗品は、八個。

 大なり小なり、高価な物も安価な物もある。

 

 おそらく、一つだろう。

 複数から反応している可能性もあるが、確率は低い。


 「……もう一仕事、いや、二仕事してもらおうか、プティマ、キャトロング。この八個、森中にバラまいてこい。奴らの意識はそのどれかに集中するはずだ」


 「ええェ!? めんどくさァ!!!」


 「……しょうがないだろ。そうすれば、原因を特定できるんだ。それが分かったら、それ以外のは回収する。俺たちは――――盗賊なんだ。盗んだ物は俺たちの物だ。粗悪品は捨てるが、そうじゃないのは、取り戻さなくっちゃな」


 「なるほどボス!!」


 作戦開始。

 

 キャトロングとプティマは、森林各地に飛ばされ、物を隠したり埋めたりした。

 ルコートの能力を使い、リュノン軍団からできるだけ距離を取った場所へだ。

 

 すぐにその仕事は終わり、二人はアジトで休憩に入る。


 「――――ご苦労、プティマ、キャトロング。これで奴らの狙いがどれか分かる。よく見ておけよ、ルコート、奴らの動きをな」


 「ああ……」


 今度はルコートが働く番。

 予め決めていた各宝の場所と照らし合わせ、リュノンたちがどこへ向かうか観察する。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「……!! 近づいた……!?」


 その頃、ほとんど動いていないにも拘わらず、点滅に変化が起きたことにルナレジェンは眉をひそめていた。

 先よりも、大分速くなっている。


 「どうしたんですかルナさん!?」


 「反応してる物の位置が変わった……。しかも、こんな一瞬でや」


 「え!? ……ってことはもしかして、あいつら、ここから逃げようとしてるってことですか!? その財宝持って、この森から!!」


 「……!! じゃあ早く、そいつのところに行かねえと! 一番近いのは……俺自身だ……!!」


 「待った……。ショウエイくん、リュノン。……まだ、それに近づくのは早いで」


 すぐに動こうとする翔英とリュノン。

 二人の若者をルナレジェンが制止した。

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