第二百十七話 『探り合い』
「――――危なかったァ……!!!」
帰還早々、焦りの声を挙げるプティマ。
無事アジトへと戻って来た彼女だが、まだ心臓がバクバク言っている。
あの仕掛けた来た女の目、氷のように冷たい物だった。
後数秒遅れていたら、この身体がぺしゃんこになっていただろう。
「なっ……!! プティマ……!! お前何やってんだ……!? まさか見つかっちまったのか……!?」
すっかり元気になっていたキャトロングが彼女を出迎える。
彼の後ろには、グランデとルコートの姿。
「……しょうがないでしょォ!! あいつらの中に、かなりヤバい奴がいたんだからァ!! ――――それよりもボス!! あいつらがどうやってあたしたちを探してるか、多分分かったわよ!!!」
「ほう。よくやったなプティマ。――――それで、何だったんだ?」
「奴らの一人が、変な機械を持ってたの。その機械は、チカチカ点滅してたわ!」
「……なるほど。それで我々を探索しているのか……。問題なのは、それが何に対して反応しているか……だな」
人か物か。
どちらかに反応しているのは間違いない。
「そうだプティマ。お前、奴らに攻撃されそうになったんだろ? もしかして、お前に反応してるんじゃねえのか?」
「……マジでェ? ……なんであたしだけ!? キャトロングやルコートにだって反応してるかもしれないじゃン!!」
「……よし、キャトロング、プティマ。それを確かめてこい。奴らの少し近くに飛んで、お前らを追ってくるか確かめるんだ」
「またあたしィ!? もう疲れたァ!!」
「お前に反応してるかもしれないんだ。お前は行くしかないだろう」
「……分かったわ。その代わりボス、今度あたしのお願い聞いてね」
「……いいだろう」
三度目の旅立ち。
グランデはキャトロングとプティマに手をかざし、二人をリュノン達の近くに飛ばした。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「――――かなり近いで……」
リュノンサイドでは、ルナレジェンが呟いた。
手元の機械は、今までで一番早く鳴っている。
もう、すぐ側に迫っているようだ。
しかし、人っ子一人見つからない。
やっぱり木しか見えない。
「……やっぱもしかして、この下じゃないですか?」
地面を踏み付けながら翔英が言う。
だが、固い。
とても掘ることはできない。
「……うん、その可能性が高なって来たな。……だとしたら、この森のどっかに出入り口があるはずや。もう、この機械の出番は終了や。この下に繋がる入口を探そう」
「はい……!!」
目的を変え、動き出す聖鳳軍一行。
探すは、どこにあるであろう、『門』
そして、三人から少し離れた木の後ろでは――――
「…………あいつら、反対方向にいったわよ」
「ああ……。やっぱ、俺たちに反応しているわけではなさそうだな……」
キャトロングとプティマがこっそり観察していた。
先の反省を踏まえ、気付かれない距離を取っている。
「……よし、じゃあ一旦撤収だ。ボスに報告するぞ」
「分かってるわよ……」
すぐにアジトへ帰還する二人。
今度は何事もなく、任務を達成できた。
「――――早かったな」
戻って来た二人をグランデが迎える。
その二人の表情から、何か有意義な物を感じ取るグランデ。
「ボス……!! その機械、俺たちに反応してるわけじゃないようですぜ!!」
「あたしたちには全く気付かず行っちゃったわ」
「そうか……。――――ではやはり……」
グランデは一つの結論を出した。
アジトの奥にある部屋を開く。
そこには、これまでに奪ってきた宝の数々が閉まってある。
「奴らが追っているのはこの中のどれかだな」
金銀財宝。
間違いなく、この中の何かに反応している。
「ええェ!? どうすんのよボスゥ!! ってことは、それ全部置いてかなくちゃいけないってこと!? せっかく集めたのにィ!!」
プティマが不満を爆発させる。
これまでプティマは、盗みを何度も成功させてきた。
この部屋のコレクションは、彼女の頑張りの象徴なのだ。
だが、それが敵をおびき寄せるんじゃ、持っているわけにもいかない。
でも、これらを捨てるのはあんまりだ。
「――――いや、そんなことをする必要はないぞプティマ。よく考えろ。今日、いきなりあいつらが来たことを考えても、反応しているのは、ウェルビークで盗んだどれかだ。他のは問題ない」
「そっかァ!! 確かに!! ……でもあたし……どれがどこのか覚えてないわァ!!」
「俺が覚えている。それも問題ない」
「おおっ! さすがボスゥ!!!」
ウェルビークの盗品は、八個。
大なり小なり、高価な物も安価な物もある。
おそらく、一つだろう。
複数から反応している可能性もあるが、確率は低い。
「……もう一仕事、いや、二仕事してもらおうか、プティマ、キャトロング。この八個、森中にバラまいてこい。奴らの意識はそのどれかに集中するはずだ」
「ええェ!? めんどくさァ!!!」
「……しょうがないだろ。そうすれば、原因を特定できるんだ。それが分かったら、それ以外のは回収する。俺たちは――――盗賊なんだ。盗んだ物は俺たちの物だ。粗悪品は捨てるが、そうじゃないのは、取り戻さなくっちゃな」
「なるほどボス!!」
作戦開始。
キャトロングとプティマは、森林各地に飛ばされ、物を隠したり埋めたりした。
ルコートの能力を使い、リュノン軍団からできるだけ距離を取った場所へだ。
すぐにその仕事は終わり、二人はアジトで休憩に入る。
「――――ご苦労、プティマ、キャトロング。これで奴らの狙いがどれか分かる。よく見ておけよ、ルコート、奴らの動きをな」
「ああ……」
今度はルコートが働く番。
予め決めていた各宝の場所と照らし合わせ、リュノンたちがどこへ向かうか観察する。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……!! 近づいた……!?」
その頃、ほとんど動いていないにも拘わらず、点滅に変化が起きたことにルナレジェンは眉をひそめていた。
先よりも、大分速くなっている。
「どうしたんですかルナさん!?」
「反応してる物の位置が変わった……。しかも、こんな一瞬でや」
「え!? ……ってことはもしかして、あいつら、ここから逃げようとしてるってことですか!? その財宝持って、この森から!!」
「……!! じゃあ早く、そいつのところに行かねえと! 一番近いのは……俺自身だ……!!」
「待った……。ショウエイくん、リュノン。……まだ、それに近づくのは早いで」
すぐに動こうとする翔英とリュノン。
二人の若者をルナレジェンが制止した。




