第二百十六話 『暗中模索』
リュノン達が捜索を再開した頃、グランデ盗賊団のアジトでは――――
「……ご苦労だったな、キャトロング」
リュノンに敗北した盗賊団の一人、キャトロング・ビーパー。
彼が、アジトへと帰還していた。
いや、されていた。
アジトにあるベッドの横たわるキャトロング。
彼の周りには、他の三人が立っている。
「……プティマ。とりあえずキャトロングを治療してやれ」
「はいはーい」
リーダーのグランデの命令を受けたプティマが特技である治癒を彼に施す。
殴られまくって痣だらけだったキャトロングの顔面は、元通りの色を取り戻していく。
すると、
「――――はっ……!!」
キャトロングが目を覚ました。
彼は辺りを見渡すと、あの一瞬に起こった出来事を思い出し、頭を抱える。
「おはようキャトロング。起きたばかりで悪いが、奴らについて教えてくれるか? お前がやられたところを見ても、ただの一般人ではないことは明らかだが」
「……ボス……!! 聖鳳軍でした……!! ……くそっ……俺は負けちまったのか……」
「……聖鳳軍……。奴らがついにここまで来たか……。となると、他の二人もおそらく聖鳳軍か……。ルコート、奴らの様子は?」
「また二十人増えて森中を駆け回っている。キャトロングが戦った場所に三人。他の二人と分身野郎本体は一緒にいるようだ」
「……そうか……。どうやら奴らは、何らかの方法で我々のおおよその位置を特定しているようだな」
「ちょっとボス!! どうすんのよ!! それじゃあ、ここが見つかるのも時間の問題じゃない!!」
「……うむ…………」
逃亡歴十年以上のグランデは考える。
なぜ聖鳳軍の奴らは、ここまで迫ってきているのか。
誰かが情報を漏らした?
それは考えられない。
この場所を知っているのはこいつらだけだ。
それに、こいつらがそんなことをするはずがない。
誰かに見られることもありえない。
ここに帰ってくる姿は、存在しないからだ。
――――だとすると、
発信機か何かを着けられている可能性が高い。
……でも、これまで襲ってきた村の奴らが?
『そうならない』ような村ばかり狙っているんだ。
村人と接触しているこいつらに着けられている可能性は低いだろう。
……試してみるか?
いや、まだ発信機と決まったわけじゃない。
だったら、
「……プティマ。今度こそ、お前が奴らの様子を見に行ってこい。だがいいか? 戦う必要はない。奴らが何を頼りに我々を探しているか、それを探ってくるんだ」
「ええェ!? 私一人ィ!? 聖鳳軍なんてヤバい奴らのとこにィ!!? ……まあいいわ。様子を見るだけなら」
「頼んだぞ」
出撃を承認したプティマに手をかざすグランデ。
これで何かが分かるはずだ。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一方、リュノンサイドでは――――
「……くそっ!! 見つからない……!! あいつら……どこから現れてどこに帰ってんだ……!!」
二十人の分身に捜索させているが、奴らの気配は一向に見つからない。
だが、この近くなことは間違いないのだ。
根気よく探さなくては。
「……!! ……何体か行き止まりまで来ちまった……。……どうなってるんだ……!!」
苛立ちと焦りを隠せなくなってくるリュノン。
やはり、完全に倒したにも拘わらず逃げられてしまったのは、精神的なダメージがかなり大きいようだ。
「……じゃ、地面の中とか、木の中とか、あるいは魔法か何かで透明にしているとか。そんなところやな。リュノン、そういう可能性も頭に入れとき」
だが今は隣に仲間がいる。
二人が付いていることが、唯一の救いだ。
「はい……。分かりました……」
「入口にいた時よりも、点滅は速くなっとる。近づいていることは間違いない」
「……リュノン、多分そいつら、テレポートが使えるんじゃないか? ……でも、まだ近くにいるみたいだし、多分そんな遠くへは行けないんだと思う」
「……ああ、助かるよ、ショウエイ……」
「気絶してる奴が使えるのも変な話やけどな。……ん?」
三人一緒にどんどん森の奥へ。
そんな彼らの様子を木の影から見ていた、人影が一つ。
「(――――分かったわ……!! あれで確かめてるのね……!!)」
プティマ・サンマシュマ。
リーダーの命令を受けて出ていた彼女が、ルナが持っている道具を確認した。
「(よし……!! 早くボスのとこに戻らないと……!! ……え……!?)」
「何者や君」
脱出を図るプティマ。
そんな彼女の目の前に飛び出したのは、ルナレジェン・ペサンテ。
「やばッ!!」
「盗賊団やな。堪忍しや」
焦りまくるプティマに、攻撃を仕掛けるルナレジェン。
綺麗な右腕をゴリラのようないかつい腕に変化させ、怯えるプティマに叩きつける。
しかし、
「!!! なんやと……!!」
また消えた。
攻撃が当たる直前に、プティマの姿は消え去っていた。
地面を砕いた腕を元に戻し、辺りを見渡すルナレジェン。
しかし、彼女の姿はやはりどこにもない。
「ルナさん!! どうしたんですか!? 急に飛び出して!!」
「……今、ここに奴らの一人がおった」
「なんですって!? ……それで、そいつは……?」
「消えよった。ピンク髪の頭悪そうな女やった」
「女……。俺と戦った奴とは別の奴だ……。もしかして……あいつか……?」
「リュノン、お前が言ってたことが分かったわ。あいつら、自由自在に消えよる」
「……それにしても、そいつ何しに来たんでしょう……?」
「ボクらの様子を見にきたと見てよさそうや」
「……でも、そんなに自由に消えるんじゃ、捕まえようがなくないですか……」
「そんな顔すなリュノン。何の制限も無しに消えるいうのは、さすがに考えにくい。ショウエイくんが言ったように、もしそうならとっくにこっから脱出してるやろうしな。――――あいつらも焦っとる。確実に潰したるわ」
気合いを入れ直すルナレジェンと翔英。
特にルナレジェンは逃げられたことに対して、不満を覚えているようだ。
リュノンは不安が大きくなっていた。
本当に、終わらせることができるのか、と。
絶対に今日戦いを終わらせると意気込んでいたこともあり、奴らのこのスキルを知ったのはきつい。
「(いや……そんな気持ちじゃだめだ……。……見ててくれよルージェ……。必ず、俺が……)」
だが、リュノンが折れるにはまだ早すぎる。
何年追ってきたと思っているんだ。
それだけのために――――生きてきたんだ。




