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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百十三話 『グランデ盗賊団』

 辺り一面、緑。

 機会が無ければ知ることもなかったような場所だ。


 ルナレジェンが持っている機械は、音を立てるくらい速く点滅している。

 どうやらこの森の中に、奴らがいることは間違いなさそうだ。


 ――――しかし、


 「……ねえ、リュノン。それにルナさんも……。どうやって探すんですか……?」


 こっちのメンバーは三人しかいない。

 どこまで続いているかも分からない森林を探索するのはかなり骨が折れそうだ。


 「……ま、この森の中におるのは確定しとるんや。そんなに焦る必要ない。それに、リュノンがいるんや」


 笑顔で答えるルナレジェン。

 リュノンと顔を合わせ、リュノンは頷く。

 

 そして、分身魔法を発動した。


 「ああそっか! 確かにリュノンがいるなら、意外と早く終わるかも……!!」


 しばらくリュノンと一緒に行動していなかったこともあり、すっかり忘れていた翔英。

 リュノンは分身を出すことができる。

 探索にはもってこいの人材だ。


 「ショウエイ!! 前とは少し違うぜ!!」


 「……え? おお……!!」


 前に見た時よりも、大幅に数が増えている。

 その数は二十は超えている。

 

 「……ショウエイが戦っている間、俺も何もしてこなかったわけじゃないぜ……!!」


 リュノンは盗賊団の捜索がてら、自身の能力の強化を試み続けていた。

 

 特に挑んだのは、分身能力の向上。


 この間までは数を増やすと、その分の疲労で動けなくなってしまっていた。

 しかし常に二十を超える数で日常生活を過ごす事で、走ったりする程度ならできるようになっていた。


 「……じゃ……俺たちは行ってくるよ」


 一人を残し、一斉に駆け出していくリュノン軍団。

 翔英にとっては見たことのある光景だが、前とは数が段違いだ。


 「……よし、じゃあボクたちはボクたちで行こうか。リュノン、ショウエイくん」


 「……はい……!!」


 ルナレジェン、翔英、そしてリュノンの三人も、森の中へと足を踏み入れて行った。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 ――――そして、森林の中、ある場所では。

 四人の人間が、カードゲームで遊んでいた。


 「――――どうした? ルコート」


 その内の一人。

 ソファーにドカッと座っている長髪の男が、ゲームの途中で動きを止めた隣の大柄な男に尋ねる。

 残りの二人は、カードを引かないルコートに苛立ちを寄せている。 


 「……この森の中に……何者かが侵入したようだ」


 ルコートの答えに、やや驚きを見せる三人。

 その内の刈り上げ男性が、声を挙げる。 


 「何!? どんな奴だ!?」


 「……どんな奴かは分からないが……数は二十人以上だ……」


 「……なんだと!?」


 今度はさらに大きい驚き。

 

 ときたま森の中に誰かが入ってくることはある。

 子供が探検にしに来たり、近くの町の人間が調査に来たこともあった。


 だが、いずれも全く問題なく、焦ることすらなかった。


 しかし――――二十だと?


 こんな森にそんな人数で用があるって何の団体だよそれは……。


 「……万が一、ということもあるな。……プティマ、キャトロング。お前たちに様子を見に行ってもらおうか」


 集団のリーダー、グランデ。

 彼が、メンバー二人に指示を出す。


 命令を受けた二人の反応は対照的。

 

 「分かりましたぜボス!!」


 と、男の方は意欲的。


 「……なによいいところだったのに……。ボス、負けそうだからって、ずるいわ」


 女の方は消極的だ。

 

 「そう言うなよプティマ。このままにしといてやるから」


 紅一点の彼女をなだめるボス。

 プティマは渋々受けて入れ、持っていた四枚のカードを机に置いた。


 「……ルコート、分かる状況を教えてくれ」


 「……侵入者の数は二十三。最後尾に三人。それ以外の二十人は各地に散らばっている」


 「……妙な動きだな……。……よし、二人はその散らばっている奴らを見に行って来い」


 立ち上がるキャトロングとプティマ。

 その二人に、リーダーのグランデが手をかざす。


 「……最悪殺しても構わん。万が一の場合はすぐに戻ってこい。もちろん、こちらも気にしておくがな」


 「了解……!!!」


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「……それにしても、ここにいるとして、やっぱり建物の中にいるのかな? まさか、この森の中、外で暮らしてること、ないよね……?」


 森を歩きながら、ルナとリュノンに声を掛ける翔英。

 

 確か宝石がなんかが位置を示している。

 だったら、普通に考えたら建物にいるはずだ。


 でも、こんな森の中に人が住めるような建物があったら、滅茶苦茶目立つはずだ。


 「その可能性が高いと思うで。――――けど、ほぼ間違いなく、何らかの対策をしているはずや。もしそのまま外にアジトがあるんなら、奴らはこんな長いこと罪を重ね続けられるはずない。とっくに見つかってるはずやからな」


 「……俺も、あらゆる可能性を見て回ってるよ。……今日、確実に終わらせるためにも……」


 二十倍の感覚を持ちながらも、平然と会話するリュノン。

 ルナと翔英も辺りを見渡しながら、着々と森の奥へと進んでいく。

  

 そんな中――――


 「……あれ……? どうしたリュノン……!」


 急に足を止めたリュノンに反応する翔英。

 

 目を見開き、長年追い続けた仇敵を発見した様な表情を浮かべている。


 「……俺の一人が……見つけた……!!」


 「……何……!?」


 「いや、向こうから出てきたって感じだ……!! 間違いない……!! こいつらは……グランデ盗賊団だ……!!!」


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 森の中の奥。

 一番先頭にいたリュノンが、突如現れた男の前に止まっていた。


 「……お前か…………。一応聞いておくが、ここに何しに来たんだ?」


 「……お前たちを倒しに来た……!!」


 「……そうか……。理由はよく分からねえが、俺たちのアジトがバレちまったらしいな……。――――ま、ちとめんどくせえが、なんてことはねえ。お前たちを消せばいいだけのこと……!!」

 

 まだ正確な場所は特定できていない。

 侵入者してきた奴らを全員片づけて、また移動すれば問題はない。 


 ここまで侵入されたのはあの時以来のことだが、幸い、こいつは大したことなさそうだ。 

 もう息が少し上がっている。

 残りの奴らも同じだろう。


 と、キャトロングは考える。


 キャトロングからすれば、何てことのない取るにたらない小僧だ。

 

 しかし、リュノンからすれば――――記憶の奥に宿っている、憎くてたまらない男だった。

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