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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百十二話 『作戦開始』

 ルナレジェン・ペサンテ。

 翔英にとっては、一度だけ話したことのある女性。


 ほとんど絡みの無かった彼女だが、リュノンが「問題ない」と言った理由がわかる人物だ。


 「ショウエイ、ルナさんと知り合いだったの?」


 「まあ……ね……」


 「それならよかった」


 ルナは羽織っていた上着を脱ぐと、翔英の隣へと腰を下ろした。

 そして、リュノンと同じ飲み物を注文する。


 「……で、なんでショウエイくんがおるん?」


 「偶然ですよ。ショウエイもここでご飯食べてて」


 「ああ、そうだったんや。そら、ホントに偶然やな」


 グランデ盗賊団の手掛かり。

 それを持っているのが、ルナレジェンということか。


 だったら、俺も……


 「……それで、ルナさん。例の話ってどうなりましたか……?」


 「ああ、それはもう完璧に…………って、リュノン、ショウエイくんにも話してええの?」


 「…………あ……それは……」


 リュノンとルナレジェンは同じ心配していた。

 この話を聞いたらきっと、翔英は動く。


 今になってそれを思い出したリュノン。

 ミスってしまったと、視線を下に。


 その様子を見た翔英は、話を進めるための答えを出した。


 「……リュノン、ルナさん、俺も協力しますよ。大体話は読めています。何かの縁で、俺もこの場にいた。だから、あなたたちに協力したいです」


 ――――やっぱり、そう言うよな。

 分かり切ってたことだ。


 リュノンは少し笑みを見せると、翔英の提案を了承した。


 ここで断るのは、翔英に対して失礼だとリュノンは考える。


 幸い、敵の『強さ』はそこまででもないはずだ。

 今の翔英ならば、そこは問題ないだろう。

 

 逆に、翔英はいてくれるのは心強いまである。


 「……ありがとう、ショウエイ。よろしく頼むよ」


 「おう……!!」


 二人の若者の友情をニヤニヤしながら眺めるルナレジェン。

 彼女も翔英の評判は聞いている。

 翔英の力をこの目で見たいとも思っていたところだ。

 

 当然、受け入れないはずもない。

 

 「リュノンがそう言うなら……ショウエイくんにも協力してもらおか。――――まず、説明から始めるけど、ショウエイくん。どこまで事情知ってんの?」


 「……あ、えっと……グランデ盗賊団の手掛かりが見つかった……? って、ところまでは……」


 「ああ、大体リュノンと一緒やね。――――じゃあ、二人一遍に説明しちゃうわ」


 ルナはそう言うと、カバンからボタンのようなものを取り出した。

 

 そのボタンはチカチカと点滅している。

 見つめていると目が痛くなりそうだ。


 「おおっ……!! これが例のヤツですか……!?」


 「そ。こいつがあれば、奴らの居場所も特定できるわ。後で、マーノさんにお礼いっとき」

 

 「もちろんです……!!」


 一年以上前。

 

 リュノンは、マーノに協力を要請していた。

 グランデ盗賊団の行方を掴めるようなアイテムが欲しいと。


 マーノは数々の道具を開発し、人々の生活を豊かにしている。

 ヒナノの魔法と並び、マーノの道具は国の支えになっていた。


 戦闘力では劣るマーノが一軍にまで上り詰めているのも、道具による貢献があってこそだ。


 表向きでは、マーノの研究による成果だという事になっている。

 しかし実際は、魔物を使った実験により開発されていることが多い。


 当然、この事実は一部の者以外には伏せられている。


 今回も例外ではない。


 急に今回の道具を開発できたのは、ついこの間、「触れた物の位置を知ることのできる魔能」を持った魔物を捕獲したことにある。


 マーノはそのアイテムを、リュノンに伝えてもらうためにルナレジェンへと渡したのだった。


 もちろんその道具が持つ効果は、位置の特定。


 これまでの盗賊団の襲撃情報から、彼らは聖鳳軍がいないのはもちろん、近くにすらいない町や村を狙うことは分かっていた。


 そのためマーノとルナは、聖鳳軍から遠く離れ、関係も薄い、ウェルビークに罠を張った。

 彼らが盗むであろう金目の物に、例の魔核液を使用。

 それとリンクさせたこの機械で、奴らの居場所を特定させる至った。


 「――――近づくにつれ、点滅が速くなるらしいわ。中央本部からここに向かうにつれて早くなってるから、このまま南に進めば近づくはずや」


 「分かりました……!! じゃ、早速行きましょうルナさん……!!」


 「ちょっと待てやリュノン。まだボクが頼んだ飲みモン来てない。急ぐ気持ちは分かるけど、それだけ飲ませてくれ」


 「……ああ……すいません……」


 本来の予定では、ルナレジェンとリュノンの二人で、この作戦を密かに遂行する予定だった。

 敵の厄介さは強さにあるわけはないので、そこまで人手を必要としないこと。

 どこかから情報が漏れて、奴らの耳に入ってしまうことを懸念してのことだ。


 だが、ここに偶然居合わせた翔英が追加された。


 リュノンからの信頼も厚く、しかも当日現地集合。


 翔英の追加は全く文句ない、むしろ嬉しいものだった。


 「――――で、リュノン、ルナさん。そいつらのこと、できるだけ教えてもらってもいいですか?」


 注文した飲み物が無事に届き、ストローを吸っているルナ。

 緊張している様子で、息を整えているリュノン。

 

 大雑把なことしか知らないし、これから戦いになるのなら、詳細は知っておきたい翔英は二人に聞いてみる。


 「……確か、前も言ったけど、突然現れて、パッと消えるらしい。それから、ボクたち聖鳳軍がいるところには、全く現れないのも特徴やね」


 「……そうなんですか……。なんでわかるんだろ……そんなこと……」


 「……あと、これは最近分かったことやけど、目撃した人が言うには、三人くらいって聞いたことあるなあ」


 「三人……!? 意外と少ないんですね……」


 「アジトにもっといるっちゅう、可能性も高いと思うけどな」


 「……確かに、そうですね……」


 情報を交わす、隣同士の翔英とルナレジェン。

 リュノンはずっと黙ったままだ。


 その様子を見た翔英も、何だか話し掛けづらくなってしまった。


 「――――よっしゃ、お待たせ。そろそろ行こか」


 ルナが立ち上がり、翔英とリュノンを連れて店を出る。

 そして町を出て、機械が反応する方へと足を進めて行った。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 一時間程歩いた頃。


 「――――大分強なってきたね。この辺や」


 「……この辺って……言ったって……」


 翔英、リュノン、ルナレジェンの三人は、深い深い森林へと辿り着いた。

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