第二百十二話 『作戦開始』
ルナレジェン・ペサンテ。
翔英にとっては、一度だけ話したことのある女性。
ほとんど絡みの無かった彼女だが、リュノンが「問題ない」と言った理由がわかる人物だ。
「ショウエイ、ルナさんと知り合いだったの?」
「まあ……ね……」
「それならよかった」
ルナは羽織っていた上着を脱ぐと、翔英の隣へと腰を下ろした。
そして、リュノンと同じ飲み物を注文する。
「……で、なんでショウエイくんがおるん?」
「偶然ですよ。ショウエイもここでご飯食べてて」
「ああ、そうだったんや。そら、ホントに偶然やな」
グランデ盗賊団の手掛かり。
それを持っているのが、ルナレジェンということか。
だったら、俺も……
「……それで、ルナさん。例の話ってどうなりましたか……?」
「ああ、それはもう完璧に…………って、リュノン、ショウエイくんにも話してええの?」
「…………あ……それは……」
リュノンとルナレジェンは同じ心配していた。
この話を聞いたらきっと、翔英は動く。
今になってそれを思い出したリュノン。
ミスってしまったと、視線を下に。
その様子を見た翔英は、話を進めるための答えを出した。
「……リュノン、ルナさん、俺も協力しますよ。大体話は読めています。何かの縁で、俺もこの場にいた。だから、あなたたちに協力したいです」
――――やっぱり、そう言うよな。
分かり切ってたことだ。
リュノンは少し笑みを見せると、翔英の提案を了承した。
ここで断るのは、翔英に対して失礼だとリュノンは考える。
幸い、敵の『強さ』はそこまででもないはずだ。
今の翔英ならば、そこは問題ないだろう。
逆に、翔英はいてくれるのは心強いまである。
「……ありがとう、ショウエイ。よろしく頼むよ」
「おう……!!」
二人の若者の友情をニヤニヤしながら眺めるルナレジェン。
彼女も翔英の評判は聞いている。
翔英の力をこの目で見たいとも思っていたところだ。
当然、受け入れないはずもない。
「リュノンがそう言うなら……ショウエイくんにも協力してもらおか。――――まず、説明から始めるけど、ショウエイくん。どこまで事情知ってんの?」
「……あ、えっと……グランデ盗賊団の手掛かりが見つかった……? って、ところまでは……」
「ああ、大体リュノンと一緒やね。――――じゃあ、二人一遍に説明しちゃうわ」
ルナはそう言うと、カバンからボタンのようなものを取り出した。
そのボタンはチカチカと点滅している。
見つめていると目が痛くなりそうだ。
「おおっ……!! これが例のヤツですか……!?」
「そ。こいつがあれば、奴らの居場所も特定できるわ。後で、マーノさんにお礼いっとき」
「もちろんです……!!」
一年以上前。
リュノンは、マーノに協力を要請していた。
グランデ盗賊団の行方を掴めるようなアイテムが欲しいと。
マーノは数々の道具を開発し、人々の生活を豊かにしている。
ヒナノの魔法と並び、マーノの道具は国の支えになっていた。
戦闘力では劣るマーノが一軍にまで上り詰めているのも、道具による貢献があってこそだ。
表向きでは、マーノの研究による成果だという事になっている。
しかし実際は、魔物を使った実験により開発されていることが多い。
当然、この事実は一部の者以外には伏せられている。
今回も例外ではない。
急に今回の道具を開発できたのは、ついこの間、「触れた物の位置を知ることのできる魔能」を持った魔物を捕獲したことにある。
マーノはそのアイテムを、リュノンに伝えてもらうためにルナレジェンへと渡したのだった。
もちろんその道具が持つ効果は、位置の特定。
これまでの盗賊団の襲撃情報から、彼らは聖鳳軍がいないのはもちろん、近くにすらいない町や村を狙うことは分かっていた。
そのためマーノとルナは、聖鳳軍から遠く離れ、関係も薄い、ウェルビークに罠を張った。
彼らが盗むであろう金目の物に、例の魔核液を使用。
それとリンクさせたこの機械で、奴らの居場所を特定させる至った。
「――――近づくにつれ、点滅が速くなるらしいわ。中央本部からここに向かうにつれて早くなってるから、このまま南に進めば近づくはずや」
「分かりました……!! じゃ、早速行きましょうルナさん……!!」
「ちょっと待てやリュノン。まだボクが頼んだ飲みモン来てない。急ぐ気持ちは分かるけど、それだけ飲ませてくれ」
「……ああ……すいません……」
本来の予定では、ルナレジェンとリュノンの二人で、この作戦を密かに遂行する予定だった。
敵の厄介さは強さにあるわけはないので、そこまで人手を必要としないこと。
どこかから情報が漏れて、奴らの耳に入ってしまうことを懸念してのことだ。
だが、ここに偶然居合わせた翔英が追加された。
リュノンからの信頼も厚く、しかも当日現地集合。
翔英の追加は全く文句ない、むしろ嬉しいものだった。
「――――で、リュノン、ルナさん。そいつらのこと、できるだけ教えてもらってもいいですか?」
注文した飲み物が無事に届き、ストローを吸っているルナ。
緊張している様子で、息を整えているリュノン。
大雑把なことしか知らないし、これから戦いになるのなら、詳細は知っておきたい翔英は二人に聞いてみる。
「……確か、前も言ったけど、突然現れて、パッと消えるらしい。それから、ボクたち聖鳳軍がいるところには、全く現れないのも特徴やね」
「……そうなんですか……。なんでわかるんだろ……そんなこと……」
「……あと、これは最近分かったことやけど、目撃した人が言うには、三人くらいって聞いたことあるなあ」
「三人……!? 意外と少ないんですね……」
「アジトにもっといるっちゅう、可能性も高いと思うけどな」
「……確かに、そうですね……」
情報を交わす、隣同士の翔英とルナレジェン。
リュノンはずっと黙ったままだ。
その様子を見た翔英も、何だか話し掛けづらくなってしまった。
「――――よっしゃ、お待たせ。そろそろ行こか」
ルナが立ち上がり、翔英とリュノンを連れて店を出る。
そして町を出て、機械が反応する方へと足を進めて行った。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
一時間程歩いた頃。
「――――大分強なってきたね。この辺や」
「……この辺って……言ったって……」
翔英、リュノン、ルナレジェンの三人は、深い深い森林へと辿り着いた。




