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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第八章
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第二百十一話 『追い続けて』

 「――――ここも特に、手掛かり無しか……」


 中央都市からずっと南に行ったある町で、ため息と共にそう呟く翔英。

 

 ミドルハイムからこっちに戻ってきてから四日経つ。

 その間翔英は、ミネカとジャーザンスの情報を調べるべく、聞き込みや探索を続けていた。


 オーやヴァナべールの計らいで今もフリーになっている翔英。

 ミネカを巡る決着が着くまで、自由に動くことが許されている。


 とはいえ、時間が限られているであろうことも事実だ。


 あの二人がどこへ向かってしまうのか。

 それは分からないが、当然一刻も早く助けたいという思いは強い。


 しかし、まだ有力な情報を得ることはできていない。

 依然、お先真っ暗状態だ。


 「(……今日は、もう少し行って見るか……)」


 他の仲間たちだって協力してくれてはいるが、自分が動かないわけにはいかない。


 まだ行ったことのない場所へ。

 翔英はさらに南へと歩を進めて行った。


 ――――一時間近く歩き続けた頃。


 町が見えてきたので、入っていった。


 時刻は昼過ぎ。

 丁度お腹も減っていたので、飲食店に入場。


 そこで軽めの昼食を取った。


 「(――――あれ……? あれって、もしかして…………)」


 食べ終わった翔英。

 向かい側の席に座っていた男に注目する。


 「(やっぱりっ!!)」


 よく知っている男だ。

 まさかこんなところで出会うとは。 


 「リュノン!!」


 リュノン・アーリー。


 初任務の時からの付き合いであるこの男が、テーブルで一人飲み物を飲んでいた。


 「ショウエイ!? なんでショウエイがここに!?」


 「いやめちゃくちゃ偶然!! 何となくここに来てただけなんだ」


 「……マジで!? そりゃあびっくりだな!!」


 翔英とっては数少ない、同世代の同性の友達。

 いきなり会ったら互いにテンションは上がり、会話も弾む。

 

 翔英はリュノンの前に座り、思わぬ出会いに笑顔を見せた。


 「――――ところで、リュノンはここで何してんの? まあ、飲み物飲んでんのは見れば分かるけど、飲み物飲みにここまで来たの?」


 「いや、違う違う。待ち合わせしてるんだ。ちょっと大事な用があってさ」


 「……ああ、そうだったのか。――――あ、じゃあ、俺邪魔かな?」


 「いやいや、そんなことないぜ。全然いてくれて問題ないと思う」


 リュノンはそう言ってくれている。


 でも、大事な用って何だろう?

 待ち合わせしてるってことだし、デートかな?


 だとしたらさすがに「いてくれて問題ない」なんて言ったりしないか。

 いくらリュノンだとしても。


 じゃあ、誰と何の約束してるんだろう?


 「ショウエイこそ、本当は何しに来たんだ? 何となくじゃここまで来ないだろ?」


 先に質問が来た。


 「……ああ。……今俺、ミネカとジャーザンスについて調べて回ってるんだ。だから、何か情報聞けないかなって、この町に来た」


 「……そっか。……ショウエイらしいな……」


 少し笑いながら答えるリュノン。

 『あの時』から、もう十分なほどに立ち上がっていることが分かって嬉しい。 


 あの戦いには、リュノンも参加していた。

 かなりのデバフが掛かっていたとはいえ、ほとんど役立たずに終わってしまったことを嘆いていた。

 

 だからこそ、自分もやらなければならないという思いもある。 


 ――――しかし、その前にリュノンには終わらせなけらばならない因縁がある。

  

 彼は、残っていた飲み物を一気に飲み干すと、先の見えない戦いを行っている翔英をこれまでの自分と重ねた。


 「……ショウエイ、実は俺もさ。今、ある奴らを追っているんだ。もうすぐそいつらの手掛がりが掴めそうなんだけど。……グランデ盗賊団って知ってるか?」


 「……あっ……!!」


 ――――知っている。


 本で読んだこともあるし、話を聞いたこともある。

 

 神出鬼没の人間の悪党だ。

 確か、長年誰も捕まえることができなかったという。


 ……そうだ。

 それに、リュノンがそいつらを追っていることも聞いていた。


 色々ありすぎて聞きそびれてしまっていたが、翔英にとっても、リュノンとそいつらの関係は気になることだった。

 

 「……知ってるみたいだな。ま、あんなに報じられてたら、嫌でも耳に入るか」


 「……まさか……この町がそいつらに襲われたのか……!? 確かそいつら、強盗だろ……?」


 「……いや、違う。襲われたのは、この町から西に行った、ウェルビークって町だ」


 「……そうなのか……」


 そりゃそうか。

 そんな奴らに襲われたなら、平常運転な訳がない。

 

 「……なあリュノン。ちょっと聞いていいか……? …………いや……」


 翔英は、リュノンと盗賊団の関係を尋ねようとするが、すぐに言葉を引っ込めた。


 ロッツ山の時に、リュノンが言っていた言葉と見せた表情。

 それが答えだろう。


 わざわざ深堀りするようなことじゃない。

 おそらく、口にするのも嫌なはずだ。


 「どうした? ショウエイ」


 「あ……いや。……誰と待ち合わせしてんの? その人によっちゃあ、帰ろうと思うんだけど。俺の知り合いかな?」


 質問変更。

 実際にこっちも重要なことだ。

 

 もしかしたら、かなり気まずくなってしまうかもしれない。

 でもさっきのリュノンの言い方だと、面識のある人っぽかったけど。


 「……んー……。知り合いかは分かんないけど……別に知り合いじゃなくても問題ないと思うよ」


 「え……?」


 知り合いじゃなかったら問題なんじゃないか?

 

 そう思いながら、帰ろうと腰を上げる翔英。

 おそらく二人で待ち合わせしているのに、見知らぬ人間が待っていたら普通は嫌な気分になるだろう。


 「いやだって、あの人は……。――――あっ、来た! こっちこっち!!」


 帰る前に来てしまった。 

 心配をしながら、リュノンが呼ぶ方を振り返る翔英。 


 そこには、銀髪の女性の姿があった。


 「お待たせさん、リュノン。――――お? 君……」


 その女性と目を合わせる翔英。

 

 クールな格好にクールな眼光、そしてクールな声色。

 それらに対するフランクな口調と性格。

 

 一回しか会っていないが、一度見たら忘れられない。

 翔英のとっては、とても印象深い人だ。


 「ショウエイくんやないか。なんでここにおるん?」


 「……ルナさん……。ルナレジェンさん……!!」


 聖鳳軍一軍、ルナレジェン・ペサンテ。

 現れたのは、彼女だった。

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