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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第七章
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第二百十話 『揃い踏み』

 ――――なんじゃこいつは。


 ラスドラーゴかと思った。

 奴のような、圧倒的な負のオーラを感じ取ったから。


 じゃが、こいつ……

 ラスドラーゴよりも、圧が強い。


 目が合っただけで、息の根が止まりそうじゃった。


 まるで、ラスドラーゴと初めて会った時のようじゃ。


 「……何者じゃ……貴様は……。魔物のようじゃが」


 自部屋に突然侵入していた見知らぬ男に戸惑うレウラ。

 できるだけ動揺を悟られぬように、あくまで強者の視点から話し掛ける。


 「俺はダクライズ。俺が何者かは、後でラスドラーゴから話があるだろう。とにかく、本部に来い。お前が来ねえと始まらねえんだ」


 「……嫌だと言ったら……?」


 「力ずくで連れて行く。あんまりオススメはしねえぞ?」


 「……いいじゃろう。行ってやる」


 レウラは反抗することなく、彼と一緒に本部に戻ることにした。

 

 ここでこいつと戦うのは、命に係わると判断したからだ。

 おそらく能力をもってしても、こいつに勝つことはできないだろう。

  

 そうだと分かれば、正直断る理由はない。

 

 それに、ラスドラーゴなら断っても大丈夫だが、こいつに歯向かうのはかなり危険そうだ。


 「意外と素直じゃねえか。もっと反抗してくると思ったぜ」


 「……ここでお主と戦うことに、わらわには何の得もないからの」


 「へっ、そうかよ」


 ダクライズ。

 任務成功。


 二人は、本部へと帰還した。


 ――――その頃、南拠点では。


 二人の魔物が衝突していた。


 「……言うだけあってやるじゃない。お嬢さん」


 魔女のような魔物に、赤髪の若い女の魔物が次々に攻撃を喰らわせていく。


 だが、攻撃を受けている側、マビュートは笑みを崩さない。


 その様子は、仕掛けている側のミワルナにも激しい動揺を与えていく。


 「(……何なのよこのババア……。あたしの魔能を受けてるのに……何故死なないの?)」


 ミワルナの攻撃は遠距離攻撃。

 彼女が狙った軌道のモノを消し飛ばすことができる。

 まともに喰らえば即死の攻撃だ。


 しかし、マビュートはそれを喰らって尚、動きを辞めない。

 消し飛ばした先から、一瞬で再生しているみたいだ。


 「ああああああ!!!!! ムカつくのよババア!!! さっさと死になさいよ!!!!」


 フルパワーで、魔能をぶつけるミワルナ。

 また、標的の腹を抉り取る感覚はあった。


 しかし、


 「――――はい、タッチ」


 「!!!!」


 いつの間にか背後を取られ、首に手を掛けられていた。

 ここで初めて、身の危機を感じ取るミワルナ。

 と、同時に、魔物としての格の違いを嫌でも思い知らされた。


 「さあ、お嬢さん。私と一緒に来てくれば、何もしないわ。本部にワープするだけよ。何がそんなにいやなのかしら?」


 「……分かった。行ってやるわ。ラスドラーゴの所に」


 一連の攻防で実力差を理解したのか、ミワルナは渋々了承する。

 マビュートを笑顔で頷き、ファンドルに持たされていたワープゲートで帰ろうとする。


 しかし、


 「嘘だよババア!!! 死ね!!!」


 背を向けたマビュートに、ミワルナは不意打ちを掛ける。

 この距離なら、確実に殺せると判断したから。


 だが、


 「うがあ!!!!」


 それよりも速く、マビュートの殺人パンチが飛んできた。

 ミワルナは情けない悲鳴を上げながら、壁の向こう側まで殴り飛ばされる。


 「バカねアンタ。殺気がダダ漏れよ。――――ま、元々帰ったらボコボコにしてやろうと思ってたけど。――――あら?」


 白目を向いて気絶している。

 

 マビュートはミワルナは拾うと、本部に戻っていった。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「――――ただいま。じいさん、この子の治療お願いね」


 戻ってすぐさま、マイヤールにミワルナを引き渡す。

 マイヤールは少しも驚くことなく、彼女の治療を始めた。


 「中々いい部下持ってるじゃない、ラスドラーゴ」


 「……やっぱりそうなるか。お前ら二人なら、そうだと思ったが」


 ラスドラーゴ、ロジェ、ファンドル、マイヤール。

 ダクライズ、マビュート、ハビニック。

 そして、レウラとミワルナ。


 これで魔凰軍の上位陣全員が一度に集結した。

  

 「――――はっ……!! ここは……あっお前……!!」


 目を覚ましたミワルナ。

 すぐにマビュートへと敵意を向ける。


 「無理やり来てもらったわよ。お嬢さん」


 「……くそっ、殺してやるわ!!」


 「――――待て、ミワルナ。後にしてくれ」


 「……ふんっ……」


 辺りを見渡すミワルナ。

 良く知ってる顔も居れば、見たことないヤバそうな奴もいる。


 この場で暴れるのは得策ではないと、馬鹿でも分かる。


 ミワルナは出した手を引っ込めた。


 「――――よし、では全員揃ったので、これからの大事な話をする。いや、その前に自己紹介か……」


 「ちょっと待てラスドラーゴ。ドラウクの奴が来ておらぬではないか? わらわに来させておいて、なぜ奴がいないのじゃ?」


 「死んだからだ」


 「……ああ、そうだったのか」


 「ダサッ!! あいつ死んだの!? あんなに大口ばっか叩いといて!!」

 

 「静かにしてくれ、ミワルナ。話を進めたいんだ」


 「あああ!!? 何? せっかく来てやったのに!!」


 「……紹介する。レウラとミワルナだ。そしてこいつらは、ダクライズ、マビュート、ハビニック。四十年前に、私と共に魔鳳軍に所属していた」


 「……!! 四十年前……!? お主たち以外にも生き残りがいたのか……!!」


 「……まあ、大雑把に言うとそういうことだ」


 「……まさか……貴様ら……!! 魔王ザラボラスの元で戦ったという奴らか……!?」


 「あら、意外と勉強してるのね。その通りよ」


 「え? 誰よそいつ?」


 「(こいつらが、ラスドラーゴと並んでいたという三体の魔物……。通りで勝てる気がしなかったわけじゃ……)」


 「――――で、ここからが本題だが……」


 「無視するんじゃないわよ!!!」


 「我々は――――聖鳳軍を倒す」

 

 「……!!! 聖鳳軍を!!?」


 「そうだ。我々の全戦力を持って、今度こそ奴らを叩き潰す」


 「……ま、俺とマビュートだけでも、軽く達成できるだろうが、ラスドラーゴがうるさくてな。お前たちの力も、借りることになった」


 「そういうことだ。レウラ、ミワルナ。お前たちにも協力してもらう。いいな?」


 「……ふん、『はい』しか答えはないのじゃろう? まあ、協力はしてやる。じゃが、戦闘ではわらわの好きにさせてもらうぞ」


 「……ミワルナ。お前にはミワルナ軍全員を率いてもらう。お前の持ち駒も全て使え。奴らに勝つためには、出し惜しみはできん」


 「……聖鳳軍か……。ちょっとそれは面白そうね。――――いいわ。私も行ったげる」


 「……よし……。――――では、今日の話は、こんなもので終わりだ。詳しいことはファンドルに伝言させる。時間を取らせてすまなかったな。みんな、戻っていいぞ」


 それぞれの思いを抱く中、魔鳳軍が、一つの目的のために動こうとしていた。


 近く訪れる、決戦の日。

 全ては、その日に終わる。

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