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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第七章
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第二百九話 『集結せよ』

 その頃、魔凰軍本部では――――


 「ラスドラーゴ様!! 大変です!!」


 「……どうした……?」


 「北の地、ミドルハイムにて、ドラウク様及びジェシス様、そして、ドラウク軍が全滅した模様です……!!!」


 「……ええ……。……死んだのか? ドラウクが……。……んん、確かにあいつの力が感じられんな……」


 駆け込んできた伝令係に苦い顔を見せる魔凰軍司令。

 今後の活動のためにも、ドラウクの力は必要だった。

 

 「何勝手に死んでんだ」とキレたいところだが、できるだけ平静を装うラスドラーゴ。


 しかし、なんでよりによって今日なんだ。

 今日は集合の命令を出していたのに。

 しかも『軍ごと』って。


 ドラウク軍も戦力の一つに数えていたのに。

 ジェシスの魔法も惜しいし。


 何より、あんなに強さを求めて接触してきたドラウクなのに、急にやられてどうすんだ。


 ラスドラーゴはため息を一つ吐くと、伝令係を下がらせた。


 口うるさい奴らにいびられるのを、部下に見せたくないから。


 「――――おいラスドラーゴ!! また死んじまったのかよ!! ほんっとに役立たずばっかだな! お前の部下は!!」


 ――――ほら来た。

 魔王の間の裏側から、トゲトゲの突起が体中に着いている大男が煽りながら顔を出す。

 

 その大男はゆっくりとラスドラーゴの方へ歩いてきた。


 「……うるさい。どいつもこいつも私の言う事を聞いてくれんのだ。実行の日まで死ぬなと言っているのに」


 「それはお前の人望不足だぜ。もし俺がトップだったら、間違いなく忠実に働いてくれるぞ」


 「……つまらん冗談はやめろ」


 「おお、言うようになったじゃねえかラスドラーゴ。今はお前と戦う気はねえが、あんまり生意気なこと言わねえ方がいいぞ」


 空間に穴を開けるような異質な空気がぶつかる。

 もし一般兵がここにいたら、体調不良で死んでしまうかもしれない。


 「相変わらずつまんない会話ね。ダクライズ、ラスドラーゴ」

 

 それが、二人の魔物により起こされているのに、さらにもう一体部屋に現れた。


 ロングへアを携えた魔女のような風貌をした、美しい中年女性の魔物。


 彼女もまた、ダクライズやラスドラーゴに劣らない殺気を宿している。


 「マビュート。お前も完全に動けるようになったようだな」


 「ええ、やっとだわ。今すぐあのクソ人間を殺しに行きたいけど、もうこの世にいないんでしょ? 残念だわ」


 「ダクライズ、マビュート。ハビニックはどうした?」


 「ああ、あいつならまだ固まってるわよ。情けないわホント。ま、例の日には間に合うと思うけど」


 自身が出て来た方を振り返りながら答えるマビュート。

 ダクライズは呆れたように首を振っている。


 ラスドラーゴは頷き、かつての同僚二人を纏めようと動く。


 「……分かった。これから、今後の話をお前たちを含めた全体にしようと思っていたが。ハビニックは後でにしよう」


 「…………待ってくれ………ラスドラーゴ…………俺も、何とか動ける……」


 二人が出てきたのと同じ部屋から、三体目の魔物が登場した。

 細身の怪獣のような姿をした、何とも弱そうな魔物だ。

 

 彼は、ロボットのような動きで、身体中を引きずりながらラスドラーゴの元へ。


 「ハビニック。きつそうだな」


 「……いや、大丈夫だ……」


 割と心配そうにハビニックを見つめるラスドラーゴ。

 ダクライズとマビュートの二人は、嘲笑するように彼を見降ろしている。


 「――――よし、じゃあ、お前たちはここで待っててくれ。今日、あいつらもここに来るように言ってある。そろそろ来るはずだ」


 「あいつら?」


 「決まってるだろ。今の私の部下たちだ。――――おっ、丁度来たみたいだな」


 魔王の間の扉が開き、魔物たちが入って来た。

 

 彼らは空間に空いているゲートを通り、ここまでワープしてきたようだ。


 「――――こんにちは、ラスドラーゴ」


 その先頭、若い男性の姿をした魔物が入場。

 爽やかな笑顔を浮かべ、上官にキチンと挨拶を交わす。


 その後ろにはボロボロの服を着た老人。

 最後尾では、ダウナーな雰囲気の魔物が歩いている。


 彼は、自分たちが通って来たゲートを消した。


 「……ああ、動けるようになったんだね三人とも。こうしてちゃんと立っているのを見るのは初めてだよ。ダクライズ、マビュート、ハビニック」


 「……ご無沙汰ですね。ロジェさん。おかげ様で運動できるようになりましたよ」


 先頭のロジェに言葉を返すダクライズ。

 その口調に敬意の類のものは全くない。


 上司の息子とはいえ、繋がりはほとんどないのだ。

 ロジェは、三人が倒されてから生まれた子供だから。


 本当は敬語を使うのも嫌だが、仕方なく。


 「……どうなってんのよラスドラーゴ。ロジェさんにじいさんにファンドル。私たちがよく知ってる奴らしかいないじゃない」


 「久しぶりじゃなマビュート。少し老けたな」


 「じいさん? 今すぐ死にたいの?」


 「……おい、マビュートもマイヤールも今は後にしてくれ。……それよりファンドル、マビュートの言う通り、なぜお前たちしかいないのだ。レウラとミワルナはどうした?」


 二人を仲裁しつつ、最後尾にいるファンドルに問いかけるラスドラーゴ。


 ラスドラーゴは幹部全員に召集命令を出していた。

 

 死亡したスリーラとドラウクはともかく、あの二人が来ないのはおかしい。

 

 ファンドルは少し面倒くさそうにすると、やはり面倒くさそうな口調で答える。

 

 「命令拒否ですよ。二人とも行きたくないそうです。あいつらとあんまり話したくないので、説得は諦めました」


 「……!! なんだと……!! いや……そりゃそうか……忘れてた……」


 ほとんど自由にしていたので忘れていた。

 あいつら、特に来てない二人は、全然命令聞いてくれないんだった。

 

 いや、たまに出すくらいだし、久しぶりだし、もしかしたらって思ってたけど、やっぱダメだったか。


 「……分かった。だがこれは、魔王様直々の命令だ。今回ばかりはそうはいかん。ファンドル、私を連れて行け。私が直接二人を説得する」


 「……了解しました……」


 レウラとミワルナの元へ、ファンドルの力でワープしようとするラスドラーゴ。


 しかし、


 「待て、ラスドラーゴ。――――そいつのとこへは俺が行く。礼儀を知らんガキに、立てるべき先輩ってのを教えてやる」


 「私も行くわ。どんな子か見に行って見たい。安心して、力づくで連れてきてあげるから」


 「…………分かった。任せよう」


 二人の元へ向かうのは、ダクライズとマビュートに変更。

 

 ファンドルは頷き、二人をそれぞれ東拠点と南拠点へと飛ばした。


 ――――東拠点。


 「……ラスドラーゴ……。貴様自らが来るとはな……。じゃがいやじゃぞ、わらわは今一人でいたいのじゃ」


 「……いや、そうはいかねえな。先輩の言う事は聞くもんだぜ」


 「……!! ラスドラーゴじゃない……!! 誰じゃ貴様は……!!」


 ――――南拠点。


 「――――あなたがミワルナね。あなたのボスから連絡よ。今すぐ本部に来なさいって」


 「……ああ? 誰……? ……誰よお前!!!!!! 勝手に入って来て何言ってんのこのババア!!! 殺すわよ!!!!」


 「…………どうやら、一回身体で分からせた方がよさそうね……。お嬢さん」

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