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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第七章
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第二百八話 『待ち受ける』

 ――――ミドルハイムを出発してから、五時間近く経った頃。


 「――――着いたよ!! ショウエイくん!!!」


 翔英とティローナは、中央都市へと帰還した。

 

 「おっ! 本当にありがとうございました!! ティローナさん!!!」


 ティローナに送り迎えまでしてもらった翔英。

 心からの感謝を告げ、二人で町中へと入っていく。


 ミドルハイムで色々なことがあったこともあり、ここに帰って来るのは物凄い久しぶりな気がする。

 

 もはや第二の故郷となっているこの場所。

 何だか懐かしい匂いもしてくる。


 「ショウエイくんは確か……スエリア荘に住んでるんだよね」


 「はい、そうですよ」


 少し町を進んだ頃、ティローナが立ち止まり声を掛ける。

 二人の先には、左右二つの道。


 「じゃあ、ここでお別れだね。私が住んでるのはあっちだから」


 「分かりました。……あの、本当にお世話になりました!! ティローナさんとたくさん話せて楽しかったです……!!」


 「……!! ありがとう……ショウエイくん……!! 私も、あなたに会えてよかったよ!!!」


 笑顔を交える二人。

 一緒に住んでいたのは約二週間だが……っていうか、二週間も一緒に暮らしていたのは、ティローナが初めてだ。

 他の仲間よりも距離が縮んでいるのも、当然だったのかもしれない。


 「――――また何かあったら、その時はよろしくお願いします!! それじゃあ!!」


 翔英は自宅へ帰還。

 

 ティローナはそんな彼の後ろ姿が見えなくなるまで、手を振りながら見守っていた。

 翔英も何度か後ろを向き、笑顔で手を振り返した。


 「――――ありがとう……ショウエイくん……」


 翔英が見えなくなった。

 ティローナは一言呟き、彼とは別の道を歩き始めた。


 「……あれ……なんで……?」


 少し歩いたところで、目を擦り立ち止まるティローナ。

 ちょっと濡れている。


 「……あ……そうか……」


 ティローナはさっきの出来事を思い出す。


 ――――重なっていた。


 翔英の後ろ姿と、九年前に見送った後ろ姿が。

 

 「(――――私、ショウエイくんとトライフを重ねてたんだ……)」


 ティローナは走り出した。

 思いっきり走りたい気分になったから。


 凄まじい突風を巻き起こしながら、超高速で自宅にダッシュ。


 ――――その途中。


 「――――おかえり、ティローナ」


 「……あっ、ただいま、ヒナノ。戻って来てたんだ」


 ヒナノ・スエリアに会った。

 

 偶然ではない。

 ヒナノがティローナの気配を察知していたため、彼女の通り道で待っていた。

 まあそうでなくても、ティローナが走ったことでちょっとした豪風が生まれていたので、誰でも気づくが。


 でも、


 「……何かあった? ティローナ」


 ティローナの心の異変にこんなに早く気付けるのは、ヒナノくらいのものだろう。


 「……どうして……?」


 「……うーん、なんか、大変なことがあったって、顔してるから」


 「…………ヒナノおお……!!」


 ティローナはヒナノに抱き着いた。

 少し驚きはしたが、ヒナノもティローナの背中に優しく手を掛ける。


 「……私……失恋しちゃったあ……!!」


 「……そう。それは大変だったわね……」


 ヒナノはそれだけ言うと、ティローナを強く抱きしめた。

 何も聞くことはなく、強く抱きしめた。

 

 ティローナが流す涙をヒナノが受け止める。


 二人の抱擁は、しばらく続いた。


 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「――――ただいま……」


 一方の翔英は、スエリア壮に戻るやいなや、ぶっ倒れるように寝っ転がった。


 しんどい修行と戦いがあった。

 でも、大きな成長があったことも間違いない。

 ミドルハイムでの出会いに感謝しなければ。


 ――――そして、


 「……待ってろよ……」


 準備は整った。


 もう強さはいらないと言ったら嘘になるが、そろそろ目的を達成する段階に入らなくては。


 時間は限られている。

 今からでも、行動を起こしたいところだが……


 「――――今日は……休むか……」


 とりあえず今日は就寝。

 また明日からの戦いに向けて、休息を取ることも戦いの一つだ。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


 ――――そして、こちらは、翔英とティローナがミドルハイムに向かっていた頃の話。

 

 「――――なんてことだ……」


 聖鳳軍二軍、アルシル・モアノール。


 彼が何をしていたのかというと、ヴァナベールから与えられた任務をこなしていた。


 アルシル、そしてオーは、鍛練場を襲撃された事実から、魔物側と繋がっている可能性を潰すために行動していた。


 そして今アルシルは、中央都市の各地に仕掛けていた匂いを記録する装置を確認している。

 言うならば、匂いを留めておく装置だ。


 アルシルは常人よりも五感が優れている。

 そのため、僅かな匂いからでも状況を読み取ることができる。


 しかし、


 彼が見た答えは、間違って欲しいものだった。


 聖鳳軍本部から少し離れた、西にある建物の近く。


 そこから、魔物の匂いと人間の匂いを感じ取ってしまった。

  

 戦闘の後は全くない。

 ここは建物の外だが、建物の中でゆっくりと話していたような感じだ。


 と、いうことは――――


 「いるな……!! ふざけた奴が……!!」


 ほぼ確定してしまったと言っていいだろう。


 信じたくはなかったが、聖鳳軍の誰かが魔物と接触している。

 

 「……どうするか……」


 他の仲間に知らせるべきか。

 いや、まだ誰も白だと確定できていない以上、この情報を共有するのはまずい。


 ヴァナベールやオーは大丈夫と言っていいだろう。

 そう信じたい。

 しかし、もしもそうだとしたら最悪だ。

 

 アルシルからしたら、完全に白だと言える仲間はいない。


 「……私がやるしかない……」


 アルシルは一人、見えない敵と戦うことを決めた。


 調べる場所は当然、目の前にあるこの建物。


 特になんの特徴もない建物だが、ここにまた魔物が現れる可能性は高い。


 「よし……」


 アルシルはその後、建物の中に忍び込み、先と同様の装置を設置。

 そして、毎日のように張り込むようにした。


  だが、何か手掛かりを掴むことはできなかった。


 「(いや……!! 必ずここから何かが見えるはずだ……!!  私が必ず追い詰めてやる……!!)」


 だが、アルシルは諦めることなく、その場所の見張りを続けていった。

 

 その成果が目に見える日は、 すぐ側に迫っている。

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