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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第七章
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第二百七話 『父母との別れ』

 ――――トライフの襲撃から、数日。


 村は、元の姿を取り戻そうとしていた。

 

 ニーファを先導とし、村の復興を進んで行った。

 翔英も数日休んだ後に復活し、ミドルハイムの復活を手伝った。

 

 幾人かの犠牲の上に、ミドルハイムはまた、平和を再生していった。

 二人の勇敢な若者に、人々は感謝を告げた。

 

 襲撃者を村が生み出していた事実は、彼らには伏せれたが。


 ――――そして、七日後。


 村の中心、カルダート家。


 「――――それじゃあ、本当にありがとうございました……!!」


 大声で礼を告げる翔英。


 彼の前には、ニーファとマービアン。

 隣には、ティローナ・カルダートの姿がある。


 そもそも翔英がこの村を訪れていた理由。

 それは、カルダート家の技術を教えてもらうべく、ニーファの回復の力を貸してもらうためだった。


 だが、翔英はここでの修業は一旦終了することにした。

 

 カルダート家側は居てくれて構わないと言ってくれたが、翔英は中央都市に帰ることにした。


 理由はいくつかある。

 

 まず一つは、カルダは実用段階にまで行けていることが分かったからだ。

 

 トライフ戦で、その効果を発揮することができた。

 確かにここでもう少し頑張れば、さらにクオリティを向上させることができるだろう。

 

 しかし、翔英は今のままで十分だと考えた。


 正直、戦闘中に上手くコントロールはできないだろう。

 この前みたいに、玉砕覚悟の一撃として取っておく方が、自分の戦術に向いていると思った。


 それに、これ以上お世話になるのは申し訳ないという思いもある。 

 中央都市の様子も気になるし、ずっとここにいるわけにはいかない。

 あんまりゆっくりもしてられない。


 ヒナノとティローナのおかげで、自分が大分強くなっているのは実感できた。

 

 向こうへ帰ったら、いよいよジャーザンスの捜索を始めるつもりだ。


 ティローナも一緒に戻ると言ってくれている。

 まあそもそも、彼女がいなかったら戻れないけど。 


 「こちらこそ、ありがとうございました、ショウエイくん。少しの間でしたが、あなた一緒に過ごせて楽しかったですよ。またいつでも、顔を出しに来てくださいね」


 ニーファが優し気な笑顔を浮かべながら言葉を返す。

 翔英も頷いて見せる。

 

 この人には本当にお世話になった。

 命も救ってもらったし。


 「……ほらあなた……! ショウエイくんに挨拶してください……!」


 ニーファの隣では、すっかり動けるまでに回復した夫がそっぽを向いている。

 ニーファとティローナは困ったような顔をしているが、翔英はそんな彼に笑顔を向ける。


 「マービアンさんも本当にありがとうございました。あなたから頂いた力で必ず……大切な人を助けてみせます……!!」


 「…………ああ」


 一言返すと、マービアンはまた黙ってしまった。


 父の姿に呆れた様子のティローナ。

 ニーファは少し口角を上げながら隣の夫を見ている。


 「もうお父さん!! ……まあいいや、お父さんにそういう言葉は求めてないしね。――――じゃあ、私も戻るね!! 次はいつ帰るか分からないけど!!」


 ティローナはスライドタイプの扉に手を掛け、両親に別れの挨拶を告げる。

 笑顔で頷くニーファ。

 マービアンは、


 「一年以内には帰ってきてくれ」


 と、返した。


 ティローナもニッコリと笑い、手を振りながら玄関を後にする。

 翔英もそんな彼女の後に続こうとするが、


 「……おい、ショウエイ・キスギ」

 

 「あ、はい……!!」

 

 マービアンに呼び止められた。

 

 振り返った先で彼が真剣な眼差しで見つめている。

 

 出会った当初はこの目が嫌でしょうがなかったが、今はもう、怖くない。

 翔英もその目にしっかりと目で答える。


 「この村を護ってくれたこと、礼を言うのを忘れていた。――――ありがとう、ショウエイ・キスギ」


 「ええ……? なんですか今更!」


 「それから、もう一つ。お前なら必ず、その人を助けられるはずだ。――――頑張ってこい」


 「……あ……ありがとう……ございます……!!! 本当に……!! 頑張ります……!!!」


 まさかこの人からこんな言葉を頂けるとは。

 物凄く、自信と勇気を貰えた。


 翔英は全開の笑顔を見せ、感謝の言葉を告げる。

 マービアンは相変わらず無表情だが、ゆっくりと頷いてみせた。


 「――――では、お世話になりました……!!」


 翔英もカルダート家を出た。

 少し先では、ティローナがこっちを見ているのが見える。

 どうやら、あそこで待っていたようだ。


 「すいません! お待たせしました! ティローナさん!!」


 「ううん、全然大丈夫だよ! それじゃ、帰ろっか! ショウエイくん!!」


 「はい……!!!」


 お世話になったミドルハイムを振り返りながら、ティローナの運転で中央都市へ。


 翔英にとっては、ここで得たものは大きい。

 

 切り札は言わずもがな、どれだけ自分が戦えるか。

 それを知ることができた。

 

 準備期間は終わり。

 ここからは、本来の目的を果たすべく、動かなくては。


 荷台に一人。

 翔英は勝負の目をしながら、来たるべき戦いを見据えた。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「――――行ってしまいましたね」


 「……そうだな」


 二人の家族を見送ったニーファとマービアン。

 

 しばらくそこから動かず、二人で話していた。


 「……ティローナに聞かれたくなかったのですか? ショウエイくんへの言葉」


 「……そんなことはない。ただどう言おうか、考えていただけだ」


 「ふふ、そうですか」


 「……しかし、俺も情けない男だ。……トライフのことも全て、ティローナたちに任せてしまった。本来ならば、俺が解決しなければならなかったのに……」


 「……確かにそうですね。彼のことは、私たち二人が止めなければならなかった。ティローナやショウエイくんに負担を掛けてしまったのは、本当に力不足を嘆くばかりです」


 「……ニーファ……」


 「――――しかし、ティローナが前を向いているのです。誰よりも悲しいはずのあの子が。それなのに私たちがうつむいているわけにはいかないでしょう」


 「……そうだな……」


 魔物を倒さんとする使命を継いで来た一族、カルダート家。


 その中から、魔物が生まれてしまうなんて、思いもよらなかった。


 だが、それを跳ね返す一族最強の戦士と、その魔物の役目を代わった青年の強さが生まれたのも事実だ。

 魔物が生み出した被害の分も、二人は戦う。

 

 この二人の功績はきっと、計り知れないものとなるだろう。

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