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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第七章
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第百八十四話 『規格外の女』

 「――――これは……!!!」


 ミドルハイムへと辿り着いた翔英は、その光景に衝撃を受ける。

 

 あいつの言う通り、村は襲撃を受けていた。

 入口からでも、その異常事態が見て取れる。

 

 人が倒れている。

 家が壊れている。


 ここからですら、魔物が何体も見える。


 翔英は急ぎ、村の中へ。

 そして、一番近くにいた魔物を一撃で斬り裂いた。


 「よし、次……!!」


 雑兵と言ったところか。

 幸いにも、敵のレベルは大したことない。


 今の翔英の相手ではない。


 「な……!! なんだお前は!!」


 「うるせえ!!」


 二体目。

 正面からでも、一撃で仕留めていく。


 「……くそっ……!!」


 近くに倒れている人の様子を確認する翔英。

 意識はない。

 死んではいないようだが。


 だが今は、まだ動いている人を助けなければ。

 

 目の前にも、襲われている人が二人見える。


 「……ごめん……!! 後で戻る……!!」


 翔英は駆けだした。


 そして、


 「おらっ……!!」


 三体目。

 今度は不意打ちだが、首を一突きに。

 言葉すら交わすことなく、敵を葬り去っていく。

 

 「大丈夫ですか!!」


 「あ、ありがとうございます……」


 「よかった……!! じゃあ俺、行きます!!!」


 さらに次へ進む翔英。

 

 今度はヤバい。

 今にも踏みつぶされそうな女の子が見える。


 「(……間に合わない……!! ……だったら……!!!)」


 翔英は剣を前方に一旦投げ捨てると、掌に力を込めていく。

 そして、


 「(喰らいやがれ!!)」


 渾身の電撃を一直線に飛ばした。

 まさに光速で光は飛んでいき、敵の身体を貫通した。

 

 「……もう一発……!!」


 敵が怯んだ隙にさらにもう一撃雷魔法。

 またしても見事に命中した。


 四体目。

 

 「大丈夫!!?」


 「……うん……。ありがとう……」


 「ごめんね! 俺、まだ行かなきゃいけないから……!! ……って言っても……」


 子供を一人ここに置いていくことはできない。

 しかし、安全な場所は見当たらない。

 

 どうすれば……

 

 「こっちです!! 避難場所は!!」


 すると、若い男が翔英の近くにやって来た。

 さっき助けた女の人や入口で倒れていた人も一緒だ。


 「この子は僕に任せてあなたは行ってください……!!」


 「……ありがとうございます……!!」


 避難場所。

 そんなものがあったのか。

 ここの人たちも、ただ襲われているだけではなかったようだ。

 

 翔英はさらに、先へ。


 「……またか……!!」


 また襲われている。

 今度はおじさんだ。


 敵に気付かれないように背後から近づき、またまた敵の首を刎ねる。

 五体目だ。


 「立てますか!!」

 

 「おお……ありがとう、助かったよ……」


 おじさんが立ちあがり歩き出したのを確認すると、翔英はその場を後にする。

 後何体いるのか分からないが、この身が持つ限り倒さなくては。

 この目に映せる限り、皆を助けなくては。


 「……この辺りは…………あっ……!!」


 ここは丁度村の真ん中だ。

 さっきまで泊まっていた、カルダート宅が目の前にある。


 しかし、翔英が注目したのはそこではない。

 

 カルダート宅のしばらく西側。

 一人を中心に、魔物が群がっているのが見える。

 そして、次々と魔物たちが消え去っていくのが見える。


 あそこにいるのは――――


 「ティローナさんだ!!」


 間違いない。

 ティローナ・カルダートが、魔物を爆散させまくっている。

 この村に残っていたただ一人の戦士として、孤軍奮闘していたようだ。


 翔英は彼女の元へ走っていく。


 その間にも、目の前で魔物が次々と破裂していく。


 翔英が彼女の元に辿り着くまでに、魔物の補充は終了していた。


 「ティローナさん!!!」


 「……あっ、ショウエイくん!! よかった……戻ってたんだ!! ……お父さんは!?」


 「マービアンさんは敵のボスと戦ってます……!! どうやら敵の狙いはミドルハイムそのもののようです……!! 俺も手伝います……!!」


 「……ありがとう。今、お母さんが村の人を避難させてるの! 私たちは敵を倒さなきゃ! 向こうにはまだ行けてないから!!」


 「よし……!! じゃあ急ぎましょう!!」


 町の入口から反対方向へ掛ける翔英とティローナ。

 入口から真ん中までの救助は終わった。

 後、半分だ。


 「……おいおい、もう来たのかよ。あんなにいて一分も稼げてねえじゃんか ……ん? なんだそいつは……」


 そんな二人の前に、新しい魔物が立ちふさがった。

 彼の後ろには、数体の魔物が確認できる。


 「ショウエイくん!! 先に行って!! 私も後からいくから!!」


 「分かりました!! お願いします……!!」


 翔英はさらに先にいる人を助けに駆けだした。

 敵はそれをスルー。


 左前方に一体の魔物が確認できる。

 とりあえず、左から行こう。


 「(くそっ……!! 急げよ俺!!!)」


 全力ダッシュ。

 一番近い所から、一つずつ確実に解決しなくては。


 「――――何者か知らんが、行っちまったか。馬鹿な奴だ」


 「あなたとお喋りしてる時間ないから、ごめんね」


 ティローナの速攻。

 敵との距離を一瞬で近づけた。


 そして、ティローナが放った拳が、敵の腹を貫通した。


 ジャーザンス戦では披露できなかった、マナ武装込み、カルダ流を存分に使った一撃。

 さっき雑兵を一体につき三秒で葬ったように、この魔物もまたティローナ拳に貫かれた。


 そこからさらに、爆散。


 魔物は血を吹きながら、バラバラになった。


 「…………えっ……!! なにこれ!!」


 しかし、勝利したはずのティローナが焦り出す。

 殴った箇所、拳を当てた箇所のお腹の部分が、ティローナの右拳にくっついている。


 「このっ……!!」


 今度は左手でお腹を剥がそうとする。


 だが、


 「ええ!?」


 左手もお腹から離れなくなった。


 「…………はっはっはっ、これが、俺の……力……もう、お前の手は固定され……そこから離れんぞ……」


 「………………」


 上半身の半身だけになった魔物、フィックスが笑いながら呟く。


 どうやらこれが、彼の魔能のようだ。


 「……だがこれほどとは、ティローナ・カルダート……。ドラウク様が恐れるわけだ。……だが、お前相手に時間を稼ぐのが、俺の仕事だ……ふっふっふっ……これでしばらくは、お前は自由に動けな……………なっ……!!!」


 「はあっ……!!!」


 固定された両手に力を込めるティローナ。

 ひたすらオーラをお腹の中へ。

 フィックスのお腹はその衝撃に耐えきれず、さらに細かく弾け飛んだ。


 「…………馬鹿な……」


 「ごめんね、急いでるの」


 両手の自由を取り戻したティローナ。

 翔英が向かった方向とは反対、右方向へ。


 「…………なんて女だ……」


 かつてないショックを受けながら、フィックスの全身は消え去った。

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