表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
157/159

第百五十六話 『過去を超えて』

 「――――『あの人の意思』だと………………そうか……そういうことか……」


 攻撃を度々弾かれイライラを募らせていたジャーザンス。

 

 だが、その正体もようやく見えた。


 確かにこれは、ガロトの力だ。


 あまりに突然だったもので、理解が遅れてしまった。


 「……世界にはまだまだ不思議なことがあるもんだな。『奇跡』ってやつか? それとも、ガロトの私への復讐心によるものか……? まあ、いずれにしても、あの『ガロト・クラーニク』だ。別に驚くことはないな」


 「……復讐心……?」


 ジャーザンスの言葉に翔英、そして内なるガロトまでもが驚きを見せている。

 

 『復讐心』

 

 単純に考えれば、死体をも弄られ、無理やりに翔英と戦わせたことだろう。

 

 しかし、それだけではなさそうな言い草だ。


 「……ふん、貴様には関係の無いことだよ」


 ジャーザンスは答える。


 ガロトはその間も、ジャーザンスの言葉の意味について記憶を辿る。


 「……さて、私はそれの攻略に掛かろう。なんてことはない。少し時間を貰えれば、簡単に突破してみせよう」


 また、ジャーザンスが突っ込んできた。


 先と変わらずステゴロ戦法で挑むジャーザンス。

 だがやはり、ガロトの防御を越えることはできない。


 ジャーザンスの拳は、漏れなくガロトが受け止める。


 その隙を突き、翔英がジャーザンスに攻撃を加えていく。


 依然、翔英が圧倒的に優勢。

 着実にジャーザンスのライフを削っていく。


 だが、ジャーザンスは何を思ったか、延々と突撃を繰り返す。

 当然、一発も翔英に入れることはできない。


 しかし、ジャーザンスも中々倒れない。


 前の奴とは比べ物にならないほどタフだ。


 「……くそっ……早く倒さないと……」


 ジャーザンスの粘りに、翔英も焦る。


 ガロトがいつまでいてくれるか分からない。

 もし、マフラーが消えたら、その時は終わりだ。


 ジャーザンスの狙いはそこにあると、翔英は考えた。


 ――――しかし、その予想は、間違っている。


 「……ぐ……あああ………!! なんだこれ……身体が………」


 突然、翔英が苦しみ出した。

 ジャーザンスの攻撃を受けたわけではない。


 ダメージを受けているのは、『内側』だ。


 「……はあ……はははは……やっと来やがったか……」


 息を切らしながら笑みを見せるジャーザンス。


 やがて片膝を着いた翔英を見降ろしながら、彼に蹴りをお見舞いする。


 しかし、その蹴りもガロトがブロック。

 物理的ダメージのカットには成功。

 

 とはいえ、『何か』の攻撃は翔英を蝕んでしまっている。


 「……ちっ……!! ホントにうっとおしいなそれ!! だが、ショウエイ・キスギ。お前はもう終わりさ。お前に感染した『毒』は、数分あれば対象を死に至らしめる……!!!」


 「……毒……だと…………」


 ジャーザンスの魔能の一つ。

 彼は突撃しながらずっと、毒を生み出していた。

 

 当然、彼自身には無効の毒だ。


 物理的に殴れないのであれば、内側から殺せばいい。

 そう考えたジャーザンスの作戦。


 確実に翔英の命を刺していく。


 そのまま翔英は両膝を着いてしまった。


 「(……この能力………まさか………)」


 それを見ていたガロトが考える。


 こんな様子をガロトは体験したことがある。

 彼にとっては、苦い記憶だが。


 『あの時』も、同じように、敵の毒に苦しんでいた。


 そして、先のジャーザンスの言葉を照らし合わせるガロト。


 『分かった』


 先の奴の言葉の意味が。


 『私とジャーザンスは、一度会っている』


 思い出した。


 いや、あの時とは姿が違うため、一致させることができなかった。


 だが、この男は。

 ジャーザンスという、この魔物は。


 『私が探し求めていた魔物だ』


 奴の言う通り、『復讐心』を持ちながら。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ――――二十年以上前の話だ。


 当時聖鳳軍の二軍だったガロトは、同じく当時の聖鳳軍一軍、ショー・ランペールと共に、ある魔物の討伐任務に赴いていた。


 その魔物こそが、『ジャーザンス』だ。


 やがてショーとガロトは、ジャーザンスと対峙した。


 ショーの強さは、ジャーザンスのそれを圧倒的に凌駕しており、瞬く間に撃破してみせた。


 しかし、肉体の入れ替え、そして、『毒』を用いたジャーザンスの搦め手に苦戦してしまう。


 同じくその場にいたガロトも、ジャーザンスの毒により無力化されてしまった。


 思わぬ攻撃にやがて動けなくなってしまう二人だが、ショーが動く。


 『諦めるのは、怖い』という言葉と共に。


 強靭な精神力で立ち上がり、再びジャーザンスに挑むショーだったが、現実はそう甘くない。


 やがて、ジャーザンスの前に倒れてしまう。


 死を覚悟するガロトだったが、ショーが最後の行動を見せる。


 ショーは、ガロトを逃がすために自爆しようとしたのだ。


 ショーの魔法で吹き飛ばされる形でガロトはその場を離れるが、ジャーザンスに向かって行ったショーの姿は、いつの間にか見えなくなっていた。


 ジャーザンスは何やら辺りを見回しており、ガロトに関心が無かったため、ガロトはそのまま近くにいた聖鳳軍の同僚に助けられる形で、戦いは終結した。


 それ以来、ガロト・クラーニクは、突然いなくなってしまったショー、そして、あの時の仇であるジャーザンスをずっと探していた。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 「(――――こいつが……あの時の魔物か…………)」


 ガロトはようやく辿り着いた。

 探し求めていた邪悪に。


 しかし、『まずい』


 自身の肉体はない。


 今、頼りになるのは、ショウエイ一人だが。


 あの時と同じように、奴の前に平伏すしかないのか。


 ――――『毒』が、彼の身体を破壊していく。


 今、ガロトに出来ることは、奴の攻撃から翔英を護ることだけだ。


 「さあさあ、早く死んでしまった方が楽だよ。こっちから手伝ってあげることはできないからさ」

 

 もがき苦しむ翔英をニコニコで眺めるジャーザンス。

 

 もう、こちらから仕掛けることはない。

 翔英がくたばるのは、時間の問題だからだ。


 ――――だが、


 なんと、翔英は自力で立ち上がった。


 「………………死ぬのは、お前を殺してからだ。それまでは、絶対死なねえ」


 「はああ!!!!?? 何で立ち上がれんだよお前!!! 一回喰らってから立ち直るなんてありえないぞ!!!」


 足元はフラフラ。

 視界はボヤけている。


 だが、翔英は立った。


 「(……ショウエイ……!! ……ありがとう、ショウエイ……!! 死んだ私に、こいつを倒すチャンスを再び与えてくれて……!!)」


 一心同体。


 二人は、敵に剣を向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ