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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
158/159

第百五十七話 『継がれる』

 ――――立ち上がった。


 翔英は再び、戦場へ。

 そして、戦闘続行の意思を剣に込める。


 「……ありえねえ。一度悪化したのに、立ち直ることなんて…………抗体でも持ってなきゃおかしいぜ………」


 ジャーザンスが能力で作り上げているこの毒。

 ジャーザンスの力が体内で生産している物だ。

 

 時間が経つに連れて、どんな巨大生物の意識をも奪っていく代物。


 しかしこの毒は、一種類しかない。

 また、割と解毒しやすい。


 そのため、この毒は彼の切り札の一つである。


 相手が詳細を知っていて解毒する手段を持っていたり、もし一度喰らっていて抗体ができていたりすると、あまり効果を発揮できずに終わる。

 

 だが、今は違う。


 このショウエイ・キスギは、明らかに毒について知らなかったようだし、初めて出会う男だ。

 一度この毒から生還しているなんて、ありえない話だ。


 しかし、実際に目の前の男は毒に抗い、進む意思を見せている。


 「…………まさか……お前……………」


 ジャーザンスは、先の自分の発言と自身の能力を照らし合わせ、一つの可能性に辿り着いた。

  

 よく翔英のツラを観察するジャーザンス。

 そして、いつかの記憶と一致させる。


 「……なるほどな。通りで会ったことがあると思ったわけだ」


 ジャーザンスが出した結論。


 それは、ジャーザンスが翔英を初めて見た時に思ったこと。

 そして、彼がこうして立ち上がって来ていることに、納得がいくものだった。


 「――――ショウエイ・キスギ。お前も、父の敵討ちに来たというわけだな。その首に付いている、ガロト・クラーニクと同じで」


 「…………あ? 何言ってんだ…………」


 「とぼけるんじゃねえよこんな時に。お前の父親は、ショー・ランペールだろ? ああ、そう思えば似てるもんな、お前ら二人」


 「……………どういうことだよ……?」


 翔英は戸惑いを隠せない。


 毒に侵されていなかったとしても、ジャーザンスの言葉をすぐに理解することはできなかっただろう。

 

 それほど、すぐに飲み込むのが難しい言葉だ。


 そんな翔英の様子を見たジャーザンスも眉をひそめる。


 「……何? じゃあ、何、ホントに違うの? …………いや、そんなはずはねえ。そうじゃないと、お前が立ち上がれることに納得がいかん。じゃあ、てめえの父親は誰だ? 言って見ろ!!!」


 『こいつ』にこんな質問をされるなんて思ってもみなかった。

 

 自身の過去については、誰にも話していない。

 

 ミネカも含めてだ。


 何と答えていいか、分からないから。


 しかし、翔英は口を開き、彼の問いに答えた。


 自分が知らない真実があるならば、知ってみたいと、知らなればならないと思ったから。


 「…………父の名前は、翔…………来生…………」


 「……ショーキスギ…………間違いねえ。お前の父親は、ショー・ランペールだな。姓を変えていたようだが。……生きていやがったとは驚きだがな。まあ、もうどうでもいいけど」


 「………!! ……そう……なのか…………」


 翔英は考える。

 父との記憶を思い起こしながら。


 ジャーザンスが言っていることが真実であるならば、父は元々『この世界』の住人だった、ということになる。

 普通ならば強い驚きを覚える事実だが、妙な納得感があった。


 そもそも、実際に自身がこっちに来ているのだ。

 父が逆にこっちから向こうに行っていたとしても、何ら違和感はない。


 そして、一番納得感を強める要因となっているのは、この『剣』だ。


 この剣の元となっている宝石。

 

 それは、父から貰った形見なのだ。


 元々父がこっちの世界で持っていた物だったのだろう。

 だから、こんな不思議な力を持っていたのか。


 気になることもまだたくさんあるけど、とりあえず今は――――


 『ありがとう、父さん』


 翔英は剣を顔の前に掲げ、そう呟いた。


 こうして戦うことができているのは、この剣のおかげだ。

 その剣は、世界を越えて父から託された物だった。


 翔英は気づくことはできなかったが、もう一つ。

 

 彼が立ち上がれた理由。

 それは、父親の存在だった。


 父が一度毒を受けていたことで、息子の翔英にもその耐性が受け継がれていた。

 

 完全な抗体とはいかないが、それでも、こうして立ち上がって動けるくらいには。


 ガロトの意思、そして父の意思が、翔英に再び戦う力を与えたのだ。

 

 『敵討ち』という意味が、この戦いには込められていた。


 「(……ショウエイ……やはりそうだったのか…………)」


 二人の問答を聞いていたガロトも理解する。


 翔英と初めて会った時からずっと、そんな気はしていた。

 翔英があの男の意思を継いでいるのは、ひしひしと伝わってきていた。


 『親子』なのだから、当然だった。


 その事実を知ったことで、聞きたいことも山ほどできた。

  

 ――――いや、それは、この男を倒してからだ。


 「(ショウエイ、行くぞ……!! 時間もない……この一撃で終わらせるぞ!!!)」


 「(……分かりました、ガロトさん……!!!)」


 想いをシンクロさせる翔英とガロト。

 そして、この戦いを終結させるべく、ショーの意思を全うするべく、全てを剣に込める。


 「……はっ……!! ちょっと毒が効かねえからって、勝ったつもりになるのはまだ早いぞ。全開で力を込めれば、ガロトの防御を壊せるはずだ……!!!」


 対するジャーザンスも渾身の一撃を溜めていく。 

 ガロトのマフラーごと翔英を貫き、決着を着ける算段だ。


 そして、


 「…………来い、ジャーザンス……!!」

 

 「俺の前で余裕こいたこと、後悔しやがれ!!!」


 勝利を懸けた、全てを掛けた衝突。


 死力を尽くした両者の限界が衝突した。

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