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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百四十九話 『再会』

 向かい合う両者。

 

 翔英の視線の先には、ジャーザンスと扉が見える。


 「……ミネカはどこだ……!?」


 「この扉の奥で眠っているよ。それにしても、よくここまで来られたもんだ。君なんぞがね」


 「……どうやってミネカを攫いやがったんだ……!?」


 「質問が多いね。まあいいや、答えてあげよう。僕の肉体は少し特別でね。邪気を完全にゼロにすることができるんだ。あの女が寝ていた二階にこっそり忍び込んでも、全然気付かれなかったよ。あの部屋にいた奴だけは、そっと殺しちゃったけどね」


 「……こいつ……」


 ジャーザンスは、まさかこうして聖鳳軍と対面するとは思っていなかっただろう。

 

 しかもそれが、『この男』だなんて。


 翔英の方は、ミネカがいることを聞いて少しだけ安心する。

 後はこの男を倒せば、彼女の顔を見ることができると。


 「――――そうだ、自己紹介をしておこう。私はジャーザンス。ショウエイ・キスギ。こうして直接顔を見るのは初めてだね」


 「…………そういや、さっき下の奴が言ってやがってな。俺の戦いを見てたって」


 「ああその通りだよ。先日のロジェとの戦いも見せてもらった」


 「ロジェとのも……!? ……まさか、ミネカを狙ったのは……」


 「そうっ!!!!! あの時の力に興味が湧いたからさあ!!!」


 ――――何てことだ。

 

 またしても。またしてもだ。

 また、自分のせいでミネカが危機に遭ってしまった。


 どれだけ迷惑を掛ければ気が済むんだ。

 俺は。


 あの時からずっと。

 何も返せてない。

 もらったものを。何も。


 ――――だったら、尚更だ。

 

 尚更、俺がここに来たことに意味がある。


 俺が助けるしかない。

 俺が、必ず。


 翔英は赤く輝く剣を構え、戦闘態勢に入った。


 「命に代えても、必ずこいつを倒してみせる」という強い思いと共に。


 しかし、


 「――――ところで、君にちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」


 まだ話し掛けてきた。


 「……なんだよ」


 「こうして間近で見ると、どこかで会ったような気がしてくるんだけど、君、私と会ったことあるかい? 前の私でもいい」


 「…………いや、ない」


 「そっかそっか。じゃあ気のせいかあ。……まあいいや、どうでも」


 「……もういいか? 俺はミネカを助けに行く。できれば、そこをどいて欲しいんだけど」


 「うん。お断りだね。当然ね」


 「――――だろうな!!!」


 飛びかかる翔英。

 全力で剣を振り下ろす。


 対するジャーザンスは。


 ――――なんと、それをモロに食らった。


 「うぎゃああ!!!!!」


 何とも情けない叫び声を上げるジャーザンス。

 若干拍子抜けする翔英だが、それ以上の喜びが彼にはある。


 ――――勝てる。


 今の一撃で分かった。

 

 ヒナノやリュノンをここまで追い詰めた連中のボスと思われるこの男。

 

 どれほどの強敵か不安だったが、攻撃はしっかり効いている。

 勝てない相手じゃない。

 それだけ分かれば戦える。


 畳みかける翔英。

 ジャーザンスはさっきの一撃で腰を抜かしたようで、回避行動を取れずにいる。


 胸に鋭い一撃。

 赤い血をまき散らしながら、痛みに暴れ回るジャーザンス。


 「――――悪いな。さっさと終わらせる!!!」


 「――――やめろおおおお!!!!」


 一閃。

 縦に振り下ろした斬撃は完全にジャーザンスを捉えた。


 「く………くっそお…………」


 あっという間の決着。

 ジャーザンスは立ち上がることすらできず、翔英の前に倒れた。


 「……やったの……? マジで……!!?」


 まさか、こんな簡単に倒すことができるとは。


 「死ぬかもしれない」

 

 そんな風に思ったのがバカみたいな戦いだった。


 全く動かなくなったジャーザンスを他所に、扉へと歩き始める翔英。

 扉の向こうには、あの子がいる。


 「……今行くよ、ミネカ……」


 ミネカに会いたい。

 その思いだけで、ここまで翔英は走って来た。


 やっと会える。

 もしかしたら、話せるかもしれない。


 懐に入れていた薬を確認しながら、翔英は扉を開いた。


 しかし、


 「……なっ…………!!?」


 扉の先には、知らない男がいた。


 しかもその男は、翔英に敵意丸出しで蹴りを食らわせてきた。


 その蹴りで吹っ飛ばされ、扉の前まで戻される翔英。

 その男も一緒に、扉の前とやってくる。


 「……くっそ……まだいやがったのか………!! ……そうか……こいつがボスだったか……通りで弱いわけだよ……」


 後ろで倒れている男を見ながらショックを受ける翔英。

 まだ終わっていなかったのだ。


 「いやー結構強いね、ショウエイ・キスギ。さすがはロジェと打ち合っただけのことはあるね。その私じゃ勝てないか」


 「……は……? 何言って…………」


 「分からないかい? 『そのジャーザンス』じゃ勝てないって言ったのさ。でも『このジャーザンス』ならどうかな?」


 「…………どういうことだよ……」


 「んー、見かけ通りあんまり頭がよくないみたいだね。私を倒した褒美に特別に教えたげる。私には、予備の肉体があるんだよ。どう? 理解できたかな?」


 「…………理解した」


 口ではそう言ったものの、まだ信じることは難しい。

 つまり、こいつには命のストックがあるということか。


 まあ、今更驚くことでもないのかもしれないが。


 「……それにしても、今日は散々な日だねえ。結構気に入ってた肉体も君に殺されちゃったし、あんなにたくさんいた大切な部下たちもワンダフィンだけになってしまって………………いや、ワンダフィンも死んだようだね…………」


 「(……おお、レランカさんたちがやったのか……!! じゃあ、もしかしたらここに……!!)」


 「親切心で言ってあげるけど、下の奴らの助けは見込めないよ。かなり重症だからね」


 「(…………なんだよこいつ…………)」


 「なんてことだよ。明日から僕一人? さみしいよーさみしいよー。また一から軍を作るのもめんどくさいなー。……いや、ちょっと待てよ。あー、一人いたわ。そうそう、一人だけいた。そうだ!!!! 君の相手、彼に任せよう。この肉体、久しぶりに入ったから慣れるのに時間が掛かるからね。ごめんねショウエイ君、ちょっと待ってて、」


 長々とマシンガンのように語った後、扉の向こうへ動き出す二代目ジャーザンス。


 その様子を翔英はただ見ていることしかできない。

 リアクションを挟むことすらできない。


 どうせ今向こうへ行っても邪魔をされてしまう。

 ミネカと接触する時間を許してくれるわけがない。


 そう考えながら待つこと二十秒。

 再び扉が開き、ジャーザンスが姿を現した。


 ジャーザンスの後ろには、銀の長髪をなびかせた長身の男がついてきている。


 「――――紹介するよ。彼が、現在の我が軍唯一の兵士――――」


 ――――彼の姿を見た途端、翔英の心臓は止まりかけた。

 

 同時に、激しい汗が噴き出す。

 吐き気まで出て来る。


 「――――ガロト・クラーニクだよ」


 訪れた、再会。

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