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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百四十八話 『託される想い』

 「――――な……なんですか……これは……」


 そう呟くのは、綺麗に縦に真っ二つになったワンダフィン。

 この状態でまだ生きているのは不気味だが、もう立ち上がることもできない。


 ワンダフィンの後ろでは、レランカが彼を見降ろしている。


 右手からは出血が止まらない。

 ズボンの裾を斬り、右手があった箇所へ巻いていくレランカ。


 「……なぜ……こんなことに……?」


 結果の理由が全く分からないワンダフィン。


 あの圧倒的に有利な状況からほんの一瞬だった。

 信じられない。飲み込めない。


 とりあえず応急処置を終えたレランカはワンダフィンに近づいていく。

 そして、彼の疑問に答え始めた。


 「……まあいいぜ。冥途の土産に簡単に教えてやる。……この剣にはよう、特別な力があんだ」


 『ドスベセス』のもう一つの力。

 

 それは、『個体』を斬った際には必ず対象を真っ二つにする力である。

 

 レランカが一瞬で腕を切断できたのも、ワンダフィンを一撃で真っ二つにできたのも、この力によるものだ。


 ただしもちろん、それを使うには条件がある。


 それは、「対象を『完全に均等』に斬らなければならない」ということだ。


 つまり、縦に斬るのであれば丁度真ん中を一閃に、綺麗に抑えなければならない。

 一ミリのズレでも無効となる。

 完全に対称にしなければいけないのだ。


 しかし、長年の経験と練習を経たレランカは、その箇所を瞬時に見極めることができる。

 相手に動かれなければ、ほぼ確実に勝負を決めることができる。

 

 レランカは、条件付きの即死攻撃持ちなのだ。


 一回目はワンダフィンが動いたため狙いがズレてしまった。

 

 だが今度は、余裕をぶっこきながら動きを止めていた。

 完全に油断していた。


 ワンダフィンには大きな誤算があった。


 腕を瞬時に捨て去るレランカの覚悟と、ドスベセスのぶっ壊れ能力という誤算が。


 「……なるほど、そういうことでしたか。しかしレランカさん、一つ聞いてもよろしいですか? この肉体が消滅する前に」


 「い……!? まだそんな喋んのかよ。……なんだ?」


 「あなた……そのような剣をどこで貰ったのですか……? そんな力を持つ剣、私が知らないとは思えないのですが」


 「……んー……そうだな。アタシがまだガキだった時に、魔物から盗んだ。……これ、ないしょな?」

 

 「……なんと……!! ハハハハっ……やはりあなたは面白い……あなたに会えて本当によかったですよ、ええ、ええ」


 「アタシはいやだったけどな」


 ワンダフィンの片割れが消滅した。

 もう半分も、だんだんと足の方から消滅していくのが見える。


 「――――おっと、もうこんな時間ですか。もっと話していたかったのですが。……じゃあレランカさん、最後に一言言わせてください。――――ありがとう、大好きです」


 「…………死ね」


 ワンダフィンの肉体は完全に消滅。

 これで、レランカの勝利が確定した。


 ――――ワンダフィンという魔物。

 

 彼の目的は、『素晴らしい物』『面白い物』を見ることである。

 それこそが、彼の生きる意味である。


 だから彼は、ジャーザンスの元に付くことを選んだ。

 魔凰軍に入るよりも、ジャーザンスといた方が、珍しい物が見られると思ったからだ。


 そして、その素晴らしい物が壊れるところを見るのも好きだった。

 

 『壊す』ということは、『心に残る』ことだと、ワンダフィンは捉えていたからだ。


 しかし、彼の一番の目的は他にあった。


 それは――――『素晴らしいと思った者に殺されること』である。


 もし自分が死ぬならば、そういう風に最期を迎えたい。

 ワンダフィンはずっとそう思っていた。


 その願いは、レランカ・レルンの手によって叶えられてしまった。

 彼の最期の言葉には、その意味も込められていた。


 図らずも、満足気に逝ったようだ。


 「――――いっっってえ……!! チクショウ!!! 最悪だぜマジで!!!」


 ワンダフィンの完全敗北を確認した瞬間に騒ぎ出すレランカ。


 実は滅茶苦茶我慢していた。

 ワンダフィンには見せたくなかったので、ずっと我慢していたのだ。


 「あーあ。アタシの大事な腕がよ。あんな野郎にくれてやるなんて、もったいなすぎるぜ。……と、いっけね」


 すぐさま辺りを確認しだすレランカ。


 視線の先には倒れている二軍三人。

 女の子座りで驚きの表情を浮かべるヒナノ。

 何とか身体を起こしているティローナの姿が見える。

 

 「……よかったぜ。何とか生きてるみてえだな」


 「…………ありがとう、レランカ。助かったよ」


 「…………ああ、だけど、まだアタシはゆっくりしてるわけにはいかねえ。ショウエイのとこに……ミネカんとこに行かなくちゃあな……」


 歩みを止めない強い意志で立ち上がろうとするレランカ。

 上では必ず自分の力を必要としていると、そんな意思で。


 しかし、


 「…………くそっ………やべえな……」


 思うように身体が動かない。


 出血多量。受けたダメージ。

 それらが足を引っ張りやがる。


 ヒナノもティローナも同じだ。

 生きていることが幸運なくらいに。


 「…………悪いな……ショウエイ、ミネカ……必ず行くから……少し待っててくれ……」


 レランカはその場に倒れてしまった。

 活動限界が来てしまったようだ。


 ヒナノとティローナも今この状態で上に上がったとしても、足手まといにしかならない。


 やむを得ない。彼一人に託すには、少々荷が重いが。


 ――――六人の意思は、翔英に託された。


※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 そして上階では――――


 「――――お前か………ミネカに手を出しやがったのは……」


 「……こんにちは、よく来たね」


 二人が、顔を合わせていた。

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