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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百四十二話 『真打ち登場』

 「素晴らしい素晴らしい!! 本当に素晴らしい!!!」


 ――――その男。

 

 薄めの肌に長髪が特徴的。

 

 一番印象的なのは、『顔』

 笑顔を浮かべているが、その笑顔からは光が感じられない。


 なんだかぶん殴りたくなるような、何とも気味の悪い笑顔だ。


 その奇妙な男は手を叩きながら、ティローナたちの元へ現れた。


 だが、当然この男は人間ではない。

 こんな場所に悠然と現れた時点で言うまでもないことだ。


 じゃあ、こいつは何者か。


 今回の敵将であり、一階からずっと鬱陶しい声で喋っていたあの男。

 

 ――――ではない。


 鬱陶しい声で喋っているところは同じだが、声が違う。


 「――――あなた、誰!!?」


 ティローナが言う。


 そして、ティローナは感じ取っていた。


 この男の秘めた実力を。

 今まで出てきた奴らとは、レベルがまるで違う。


 この場所では、自分が全快だったとしても勝てるか分からない。

 それほどの強さが読み取れる。


 「確かに、自己紹介がまだでしたね。申し遅れました。私の名は『ワンダフィン』。以後お見知り置きを」


 ワンダフィン。

 そう名乗ったその男は、深々と頭を下げる。

 地にめり込みそうなくらいの勢いで、深く、深く。


 「……違う……そうじゃなくて、あなたが何者かって聞いてるの!!」


 確かに、今この状況においては、こいつの名前なんてどうでもよすぎる。

 これから仲良くするような相手ではない。


 「……なるほど。そうですか。――――では、私の紹介をしましょう。私の名は、『ワンダフィン』。我が主、ジャーザンス様の右腕、とでも言っておきましょうか」


 そう、この男は、ジャーザンス軍の中で唯一の改造を施されていない純粋な魔物である。

 また、自分の意思で彼と共にすることを選んでいる稀有な魔物でもある。


 「……あいつの右腕……」


 「そうです。――――それにしてもあなたたち、本当によく頑張りましたね。素晴らしいですよ。全部で五十一いたジャーザンス様の配下が、一日で私一人だけになってしまったのですから。いえいえ、これは本当に素晴らしいことですよ。誇りに思ってください」


 四の五の考えることにもう意味はない。

 ティローナは構えを取った。

 どうやらこいつが正真正銘、最後の壁らしい。

 それだけ分かれば、十分だ。


 「おっと……そんな怖い顔をしないでください、ティローナさん。まだ私の話は終わっていませんよ。できれば私は、あなたと戦いたくないのですから」


 「……話……?」


 「ええ。そうです。あなたに、いやあなた方に提案がございます。先の戦いを見たジャーザンス様は、あなた方のお力に大層な興味を示されました。そのため、ジャーザンス様はあなた方を欲しがっているのです。私と一緒に来て下されば、特別待遇で素晴らしい扱いを受けられますよ。――――さあ、どうです?」


 ティローナは顔を下へ。

 呆れるような提案に、辟易しているようだ。


 「……おっと、言い忘れていいましたが、ジャーザンス様が欲しているのは、ヒナノ・スエリアさん、ソル・スエリアさん、そして、ティローナ・カルダートさん、あなたの三名です。残りの二人は好きにしていいと言われました。……まあ、ティローナさん、あなたが抵抗せずにこちらに来てくれるなら、雑魚二人にも手は出さないであげましょう」


 「……いや、行くわけないでしょ!! 私が!!!」


 当然だ。

 ティローナは再び戦闘態勢に入り、敵意をむき出しにした。


 「私もよ、当然ソルもね。だから帰って」


 ソルを寝かせたヒナノも野次を飛ばす。

 もう自分にできるのは、喋ることくらいだ。


 しかし、普通にやればまず負ける。

 今のティローナ一人では。


 「……ティローナさん……ヒナノさん……あなたたち、素晴らしくない。今のセリフ、そして行動。全て、素晴らしくありません。もう一度、素晴らしくなれるように、私が協力しましょう」

 

 ワンダフィンも戦闘態勢に入った。

 彼の目的はティローナの身柄。

 もう、命ではない。 


 互いに距離を詰めるティローナとワンダフィン。


 ティローナは拳を振るうが、軽々と避けられてしまう。

 そして、逆にカウンターをもらってしまった。


 「……ほらほら……言ったでしょう。今のあなたの行動には、何の意味もないんですよ。さあ、私についてきなさい。それが、素晴らしい判断というものです」


 うずくまるティローナに手を差し伸べるワンダフィン。

 この手を取れば、この戦いはひとまず終わる。


 ――――だけど、


 ティローナは手を払いのけた。


 「……私も言わせてもらうよ。あなたのその言葉には、何の意味もないよ。だって私、死ぬまで戦うもん」


 「……そうですか。では、一旦眠っていてもらいましょう。次に会うときは、ジャーザンス様のお部屋になりますね」


 ワンダフィンは、ティローナを殺す勢いで思い切り拳を叩きつけた。

 ここまで何度も戦い続けてきた代償は重い。

 もう、ティローナの回避は間に合わない。


 ヒナノは手を伸ばした。

 ティローナは目を瞑った。


 二人の頭の中から、勝利が消えた。

 

 「……おや、何ですか……あなたは……」


 しかし、ワンダフィンの攻撃をティローナが貰うことはなかった。


 ワンダフィンの拳の軌道に剣が立ちはだかり、攻撃をブロックしたのだ。


 その剣は、不思議な赤い輝きを放っている。 

 その剣の持ち主は、ワンダフィンを弾き飛ばす。

 そして、後ろを振り返り、倒れている者たちの姿を確認した。


 ヒナノとティローナは彼の姿に驚きを隠せない。

 彼を知っているヒナノの方の驚きは、ティローナの倍以上だ。


 「…………よくもミネカを……みんなを……!! お前……!! 覚悟しろよ……!!」


 ショウエイ・キスギ。

 来るはずもないこの男が今、戦場に姿を現した。

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