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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百三十九話 『化物対決』

 全身真っ黒。

 

 『生物』とは分かるが、『何なのか』は分からない。

 これを言葉で表すなら、『怪物』『化物』『魔獣』といった言葉が適切だが、正確にこいつが何かはやはり分からない。


 ただ、これだけは言える。


 こいつは、『危険』だ。


 「グァアアアアアアアアアアアッ!!!」


 天井を見上げながら吠える怪物。

 その姿に、立っている一人と七体は釘付けになっている。


 この場にはいない、ジャーザンスもそうだ。

 彼もまた、突如出現した正体不明の怪物に驚きを見せていた。


 「(――――だが、この姿……どこかで………)」


 いや、今はどうでもいい。

 問題は、こいつが『どう動くか』ということだ。


 ギロッ、と、怪物がティローナたちの方に目をやった。


 身構える魔物たち。

 そんな彼らに向かって、黒い怪物は突進した。


 ――――瞬間。

 七体のうち、一体の上半身が消し飛んだ。

 

 驚いている間にもう一体。

 

 「一旦離れろ!!!」


 一体の魔物が声を出した。


 ティローナも含めた全員が、ワンステップで怪物との距離を保つ。

 

 「(……この子……すごく強い……!! あんな一瞬で魔物を二人も……!! でも…………)」


 思わぬ事態に距離を置きながら驚くティローナ。

 しかし、こいつが味方とは思えない。


 じゃあ、何なのだ。


 幸い、ティローナは怪物から最も距離が遠い。

 ティローナの前では、五体の魔物が戦闘態勢を取っている。

 傍から見ると、魔物たちが怪物から彼女を守っているようにも見える。


 「――――こいつを囲むぞ!!!」


 また一体が声を出した。


 そしてペンダゴンの形になり、黒い怪物を取り囲む。

 動物を捕らえようとするハンターのように。


 そして、真後ろに周った一体が攻撃を仕掛けた。

 

 だがやはり、攻撃を受けたのは魔物の方だった。


 その一撃は重く、魔物は肉体を維持できない。


 「――――速過ぎる…………」


 さらに攻撃を受けた一体が呟いた。

 確かに速すぎる。


 あっという間に攻撃を受けており、反撃することすらできない。


 いつの間にか三体。

 半分が消えている。


 「……おい……!! 俺が攻撃を受け止める……その間に、お前ら二人であいつの首を刎ねろ……!! このままでは全滅するぞ……」


 一体が指示を出した。

 指示を受けた二体は頷き、刃物を懐から取り出した。

 そして、迎撃態勢。


 だが、怪物はその場から動かない。

 何やら下を向いている。

 

 しかし、こっちから仕掛けるのは危険と判断。

 怪物が動き出すのを、ひたすら待っている。


 そのまま、一分経過。


 「(……何なの……この時間。……でも、休憩できてちょっとラッキー……)」


 三体目がやられた辺りから、地べたに座って待機していたティローナ。

 疲れていた身体を少しだけ休ませてもらっていた。

 矛先がこっちに向いたら大分危険だが、魔物たちの警戒は怪物に一点集中している。

 多分今の彼らの頭の中からティローナの存在は消えているのだろう。


 そして、さらに一分が経った。


 依然、何も起こらない。


 ティローナの足も大分良くなってきた。


 「(……この人たちよくこんなじっと待てるね……私だったらもう動くけどなあ……)」


 ティローナが一旦立ち上がり伸びをした時。

 一体の魔物が痺れを切らし、自分から怪物の方に突撃した。


 そして、鋭利な武器を怪物の首に振り下ろした。


 ――――だが、


 目が合った。

 怪物が殺気に気付いたのか、二分以上起こさなかった首を上に上げた。

 

 怪物は口を大きく開けていた。


 すると、


 「ドゥウアアアアアアァ!!!!」

 という叫びと共に、口からビームが飛んできた。


 ビームは迫っていた魔物を消し飛ばし、さらに後方にいた二体の魔物にも伸びてきた。


 さすがにこの攻撃方法は想定しておらず、一体の魔物は逃げ遅れた。

 最後に残った一体は、身体を反転させてギリギリ直撃を回避する。


 「ええ!? ちょっと何それ!!?」


 二体の命を奪ってもゲロビームは進行を辞めず、一番後ろに居たティローナにも飛んできた。

 

 ティローナは慌てて全力ジャンプ。

 天井までジャンプしたティローナは、危な気なくビームを見送った。


 着地した場所は、ヒナノのすぐ側。


 さっきまで自分が座っていた方では、怪物と魔物が対峙している。

 

 「ああ……!!」


 だがティローナがびっくりしたのはそんなことではない。

 

 入って来た扉が完全にぶっ壊れており、この塔の壁にもひびが入っている。

 あのビームの影響だろう。


 「当たってたら死んでたかも」


 ティローナは思った。


 それと同時に、「偶然立っててよかったあ」とも思った。


 「――――なるほど……さっきの時間は今の光線の溜め時間か……そんな技があるとはな……お前は何なのだ……」


 怪物と対峙する魔物が解説する。

 それと同時に、今更だが意思疎通ができることの確認も試す。


 だが、怪物は魔物の言葉に全く反応を示さない。

 それどころか、そのまま真っ黒い巨大な手を振り上げ、魔物に振り下ろした。


 一発目は飛んで回避する。


 しかし、飛んだ場所、その上。


 ――――怪物はいた。


 両手で叩きつけられる魔物。

 この高さからあの威力。

 魔物の肉体は消え去った。


 これで、七体いた魔物及び、ジャーザンスの改造兵士全員が敗北した。


 「(……すっごい……一人で全員やっちゃったあ)」


 ティローナは呑気にも感心している。

 自分が倒さなくてはいけなかった奴らの撃破を代わってもらったことへの感謝もあった。


 両足で着地する怪物。

 

 また、吠える。


 そして、ティローナの方に目を向けた。

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