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ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
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第百三十五話 『いつだってともに』

 ――――目が合う。

 突如行く手に現れた、異形の者たちと。


 聖鳳軍一行は動揺しながらも、瞬時に状況を理解した。

 受け入れがたい状況を。


 「……もう……!! 下でさっき「これで終わり」って言ったよ!! 何なの!!!」


 下でさっき聞いたようなセリフ。

 ティローナが上を見ながらそう言った。


 「……本当に申し訳ないと思っているよ。嘘をついてしまったこと」


 ジャーザンスの声が下に響く。

 ティローナたちは、険しい表情で話を聞いている。

 正直、話を聞く意味はあまりないが。


 「……でもさ……しょうがないじゃないか。――――だってさ。さっきの状況で「まだ十体もいる」なんて聞いてたら、みんなのやる気がなくなっちゃうでしょ!!!? 私の親切心さ。まさか、ここまで上がって来れるとは思わなかったけどね。――――それにさあ!! 敵の言う事なんていちいち信じる方がバカじゃない!? しかも初対面だよ僕たち!! ……ああでも、それは悪いことではないよ。信じるって、気持ちがいいもんね」


 とにかく、最悪の状況には変わりない。 

 「残すは後一人」だと思っていたところに、援軍増加。


 突破する方法なんてあるのだろうか。


 ――――でも……

 

 「立ち止まるわけにはいかない」    


 ティローナが先陣を切って、覚悟と共に一歩前に進めた。

 反論する時間がもったいない。

 

 それに、こいつと話していても、ただ不愉快なだけだ。

 

 「――――ほう……この状況でまた折れないとは。さすがは、聖鳳軍のエリート様だな。……でも……こいつらは……さっきの雑兵とは一味違うのよ……」


 これまでジャーザンスが作って来た改造魔物は、全五十一体。

 一応、兵の増援は本当にこれでラストではある。


 だが、彼らはジャーザンス研究の成功体である。


 故に、ジャーザンスは彼らを動かしたくはなかった。


 彼にとっては大事なコマだからだ。 

 これからの戦いのためにも、戦力は取っておきたい。

 

 まあ、ここでこの五人を倒せば済む話だが。


 「――――ティローナ待って……!!」


 一歩進んだティローナを止めるのは、やはりヒナノ。

 リュノンもソルもフェルフラムも、絶望で声を出すことができない。


 ティローナは後ろを振り返り、碧眼の瞳に目をやった。


 「……ティローナ……私たち二人で、あいつらを抑えるわよ。……その隙に、ソルたちは扉の向こうへ行って。もし出口があれば、逃げて」


 「……いや、その役目は私一人でやるよ。ヒナノも、ソルたちと一緒に……」


 ティローナは分かっている。

 ヒナノはもう、十二分には戦えない。

 そんな彼女に、残って欲しくはない。

 

 ヒナノの負ける姿なんて見たくない。


 『ここで散るのは、私一人にして』


 「……何言ってんのよ。……あなたを一人置いて行ったら、明日からの私は、今の私を一生許せなくなるわ。……それに、さっきも言ったでしょ。――――絶対、勝てるって」


 「……ヒナノ……」


 ヒナノは覚悟を決めていた。


 彼女が今、一番守らなくてはならないもの。

 それは、ソルたちの命。


 この状況でそれすらできなかったら、永遠の敗北者となってしまう。

 

 それだけは――――ヒナノ・スエリアにあってはならない。


 ティローナは?


 いや、ティローナは隣に必要だ。


 彼女の存在が戦う力をくれる。

 彼女の前で、情けない姿は見せられない。


 死ぬときだって、一緒だ。


 だから、ヒナノは戦う。

 ティローナと二人で。 

 

 「分かった。二人で戦おう」


 「ええ。よろしくね」


 ヒナノとティローナが同時に前を向いた。

 その先には、扉をガッチリと守っている十人の戦士たち。


 はっきり言って、扉をくぐる隙なんて微塵もない。

 この状況で、彼らの守りを破るのはほぼ不可能だ。


 「ソルたちを進める」という目標はかなり難しい。


 ……でも、


 ティローナが突っ走った。

 できるだけ敵を引き付ける。

 自分が一人でも多く。


 ティローナの元へ来たのは、三体。


 拳を振るティローナだが、軽々と避けられてしまった。


 連戦に次ぐ連戦。

 当然だろう。


 そのまま囲まれてしまい、防戦一方だ。


 魔物たちが動く。


 扉に四体を残し、三体がヒナノたちの方へ。


 ――――ダメだ。

 今、ソルたちを扉側に送っても、まだ四体も。


 ――――じゃあ、どうする。

 今、みんなを護るためには。


 何を、どうすればいい。


 答えは、単純。


 減らすしかない。

 倒すしかない。


 「――――はああああ!!!!」


 今日一番の大声と共に、杖をフルスイングするヒナノ。


 すると、


 渾身の炎雷魔法が、迫りくる魔物の体に炸裂した。


 残りカスを決死の覚悟と共に練り上げた、最後のあがき。

 正真正銘、最後の魔法だ。


 周囲がヒナノの魔法に驚きを見せるこの場において、動きを止めることのなかった者が一人。


 リュノン・アーリーだ。


 リュノンは「おりゃあああ!!」という掛け声とともに突進し、炎雷魔法で怯んでいる魔物三匹の首を短剣で即座に刎ねた。


 無防備になった敵の隙を見逃さず、正確に仕留めるリュノンの芸当、ここに炸裂。


 首を刎ねられた三体の魔物は当然その命を絶やし、この世界から消滅した。


 恐るべき聖鳳軍の底力。

 この劣勢の中、何とか数を減らすことに成功。


 だが、後、七体。

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