表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴェルソレクト  作者: 高野翌
第六章
134/156

第百三十三話 『体術マスター』

 「――――それっ!!」


 作り出されたホームスタジアムをアスレチックのように駆け回り、華麗に攻撃を続けていくティローナ。

 その動きに誰一人としてついていくことができず、魔物側は防戦一方となっている。


 ティローナは、聖鳳軍一の身体能力を持つ、『体術の天才』だから。


 ヒナノたちが見守る中で、ティローナのスピードはさらに激しさを増していく。


 例えるならばそう、狭所で思いっきり投げられたスーパーボールのようだ。


 しかも、ボールの速度が落ちることはない。

 常に、投げつけられた当初のままだ。


 一体ずつ狙っていく戦法のティローナ。

 そのスピードの状態で、的確にウィークポイントに叩き込んでいく。


 一体につき一発。

 ここまで全く攻撃を寄せ付けないまま、七体の魔物を消し去ることに成功した。


 後、十三体。


 ただ、ティローナが捕まえられないからといって、その間魔物がただボーっとしていたわけではない。


 彼らが取った行動。

 それは、ティローナを頑張って捕らえようとするグループと、壁を壊そうとするグループの二手に分かれることだった。


 しかし、この場所でのティローナを捕まえることは彼らでは難しい。

 たとえオーブの力でパワーアップ済みでもだ。


 だが、もう一方のグループの作戦も全然進んでいかない。


 『硬すぎる』

 カチカチだ。


 まるで、鉄壁の牢獄。

 

 どれだけ攻撃を加えても、全く壊れる気がしない。

 

 「――――無駄よ。あんたたちのパワーじゃ壊せはしないわ」


 ヒナノができるだけ平静を装いながら、壁の向こうの魔物たちに告げる。

 だが、彼らにヒナノとゆっくり話している暇はない。

 同じ空間では、人間離れした人間が暴れまくっている。


 だったら、やはりティローナを倒すしかない。


 再び目的を一致される魔物たち。


 しかし、


 「――――あれ……?」


 もう半分のグループの姿が見当たらない。

 七体いたはずなのに。


 「……まさか……!!」


 そのまさか。

 いつの間にかティローナ迎撃グループが全滅していた。


 残った六体は身を固め、ティローナへの警戒を強めていく。


 そんなティローナは、


 一番高いところにある取っ手に座って休んでいた。


 「――――よし……!! 休憩おしまい……!!」


 再度突撃。

 さらに、一体、二体、三体、四体と、敵の数を着実に減らしていく。

 あっという間に、残りは二体となった。


 何の対抗策も思いつかないまま、目の前の人間を相手に敗北を悟った魔物たち。

 ティローナは一旦スーパーボール状態を辞めて、普通に二体の前に立っている。


 「――――ば……化物め……」


 負け惜しみ。

 だが、彼の言葉はあながち間違っていない。


 「……もう!! 好きでこうなったんじゃないよ!!!」


 化物に化物呼ばわりされ不機嫌そうなティローナ。

 戦意喪失の二体の間に滑り込み、両足で同時に回し蹴りをお見舞いだ。

 そこからさらに連撃を加えて仕事終わり。


 一対二十の戦いは、ティローナの完勝に終わった。


 「――――す、すごい……すごすぎる……!! ティローナさん、本当に一人で全部終わらせた……!!」


 円の中で背中を伸ばしているティローナに目を向けながら、声を弾ませるリュノン。

 ソルもうんうんと頷いている。


 「……ティローナ、やっぱりあなたは……変わらないわね。……あの頃からずっと」


 誰にも聞こえない声量で呟くヒナノ。

 そして、ぐったりと座り込む彼女の元へと歩みを進めた。


 「お疲れ様。さすがね」


 「……うん……でも、少し疲れちゃった……ちょっとだけ座らせて……」


 「ええ、もちろんよ」


 ずっと跳ね回り続けていたティローナだ。

 さすがに体力の消耗は免れない。


 その間に、ヒナノはティローナと自身を挟む壁を消した。


 「……でも……まずいよね……ヒナノも私も、もうどれだけやれるか……まだ、上に行かないといけないのに……」


 「………そうね」


 休憩がてら、こっからの動きについて話し合う二人。


 そんな様子を見ていたジャーザンスは、


 ティローナ・カルダート。

 この女の力の認識を改めていた。


 侵入者の中で、注意すべきはヒナノ・スエリアだけだと思っていたが、やはり一軍。

 想像以上の怪物だった。


 そしてジャーザンスは、ここまでの強さを持っているのに、この女の情報を自分が知らなかったことを疑問視する。

 ヒナノの時のように、噂が自分の耳に入っていないのはなぜだ。


 現在における流れる噂や情報の中で、ジャーザンスや魔凰軍が危険視している聖鳳軍。


 首位はヒナノ・スエリア。

 次点でヴァナベール・ソルシード。

 その次にオー・ラッセで、後はどうでもいいという感じだ。


 聖鳳軍が情報を隠していたのかもしれないが、彼女の厄介さはヒナノと遜色ないように見えた。


 おそらく、純粋な体術で彼女に敵う者は、今の魔凰軍にはいないだろう。

 そんな奴の話を自分が知らなかったなんて。


 「まあ、そんなことはもうどうでもいいか」


 ティローナもヒナノも、ここで死ぬのだから。


 ジャーザンスはゆっくりと後ろを振り返り声を挙げた。


 「おい!! お前たちの出番が来てしまった。さっさと終わらせてきてください!!」


 彼の声を聞き、部屋の奥から人影が出現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ